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──玄関の前。

息を切らしたすかーと夢魔は、荒々しくインターホンを連打していた。

「絶対ここだ……間違いねぇ……」

「この辺りまで逃げたに決まってんだろ……ッ」


その時、中から静かに扉が開く。


現れたのは、黒髪で落ち着いた雰囲気の男──レイ。

だが、すかーと夢魔はこの男のことを知らない。


「……えっと、どうしたんですか?」

レイは少し驚いた表情を浮かべつつも、柔らかい声でそう問いかけた。


すかーは荒い息のまま、口を開く。

「……ここに……ネグってガキが、来てないか?」

夢魔も同じく、低い声で続ける。

「緑髪の、小さくて、マジで性格悪い奴。襖とかで隠れて、服盗んで煽ってくるような奴なんだけど……」


レイは一瞬、目を伏せてから小さく笑った。


「……うわぁ、すごいな……パルクールじゃん、それ。」


すかーと夢魔は顔を見合わせる。

「知ってんのか……?」

「何者なんだ、お前……」


レイは両手をポケットに入れたまま、少し肩をすくめた。


「まぁ……ベランダでたまに見て会話したりするだけなんですけどね。」

「……っ」すかーが舌打ちしたその時、レイはさらりと続ける。


「あっ、そういえば知ってます? その子、最近好きな人ができたんだって。」


「……は?」

二人の声は同時だった。低く、怒りの混じったその響きに、レイは首をかしげながら続けた。


「その子に聞いたら、『最近ずっと優しくしてくれて、いい人なんだ!』って言ってたんですよ。」

「は……?」すかーの目が鋭くなり、夢魔の拳が小さく震え始める。


「その時、すごく可愛く笑ってて──」


その言葉を聞いた瞬間、二人は完全に無言になった。

表情は冷たく、静かにブチ切れている。

その気配を察したのか、レイは少し笑ってから頭を下げた。


「まぁ、大変だろうけど……ごめんね? 今日、その子見てないんだ。」


そう言って、レイは静かに玄関の扉を閉めた。


──カチャ。


閉じたドアの前で、すかーと夢魔はしばらく無言のままだった。


「……はぁ……」

「クソ……」


二人は何も言わず、ただゆっくりと家へ向かって歩き出した。


その間も、お互い一言も発さない。ただ、静かにブチ切れたまま、淡々と歩くだけだった。



その頃、家の中では──


ネグはレイの部屋で、ふわふわしたバスタオルに包まれたまま、のんびりとお風呂から上がっていた。


「……ふぅ。」


テーブルの上には温かいご飯と味噌汁、レイが用意した簡単な食事が並べられている。


「ゆっくり食べてええからな。」レイはキッチンに立ちながら、優しい声で言った。

ネグは、声は出さずに、ただ小さく頷いた。


すかーと夢魔が今どんな顔をしているのか──そんなことを思い出しながらも、ネグは声を出さずにクスクスと笑った。


「……相変わらずやなぁ、お前。」


レイはそう呟きながら、ネグの背中を一度だけ軽く撫でる。


その後、ネグは布団に入ってスマホを枕元に置き、何も考えずにそのまま静かに目を閉じた。


──外ではすかーと夢魔がまだ家に向かって歩いている。

その冷たい夜風の中で、二人の怒りはまだ消えていなかった。


「……あいつ、本気でムカつく。」

「次見つけたら……もう絶対逃がさねぇ。」


そして──夜は静かに、更けていった。


逃げたり、やらかしたり

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