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二三年生は、新学期一ヵ月目。
一年生は、入学してから一か月目。
この時期になると、生徒会から、生徒たちにのみ、知らされるものがある。
それは、部活動対抗武術大会だ。
ガチャ。
後ろからドアの開く音が聞こえて、歩美は後ろを振り返った。そこには、生徒会の彼方倫が立っていた。
「おはようございます‼ちょっとお願いしたいことがあって……」
紗季が倫の近くに行く。
「どうしたの?」
倫は胸元に大量のチラシを抱えていた。
「このチラシ、此処のドアのところと、中に二枚、貼ってほしいの」
「ナニコレ?『部活動対抗武術大会』?なんなのよこれ」
「毎年やってるの。去年もやったでしょ?部長から聞かなかった?」
「……聞いてない」
「部活動それぞれ、校庭で試合をしてもらうの。参加は自由。一部活動を1チームとしてカウントするからね。皆で話し合って決めてね」
「……」
紗季はそのままソファに座って頭を抱えた。
「部活動対抗武術大会って何?」
「今日のお昼の放送でするでしょう?その時まで待とうか」
その日の休み時間。
後ろの黒板には、部活動対抗武術大会の張り紙があった。
後ろの黒板には人が多く集まり、知っているようなそぶりをする者や、何も知らないというような顔をしている者がいた。
知っているような素振りをする者の中には、雪が眉間に皺を寄せていた。
「雪ちゃん!雪ちゃんはこの大会知ってるの?」
「ああ。うちの塾の先生が話してたんだ。毎年あるって。しかし、毎年参加するのは、空手、柔道、剣道、野球部だけだ。他は皆億劫で、部長が部員に知らせずに穏便にすましてるんだよ」
「だから、去年は聞かなかったんだ」
「あたしも、今年に入ってから聞いたからな。驚いたよ」
雪は変に感心したような声で言った。
「ふ―ん。雪は知ってたんだー」
「お、絵菜。お前は参加するか?」
「パス。どうせ負けるから」
絵菜はいつにも増してクールに返答した。
「そんな事ねえよ」
その日の昼の放送にて。
「生徒会からのお知らせです。部活動武術大会について詳細を説明します。一つ目。ルールについてですが――」
――参加する部活動の数によって、大会スタイルは変化する。
部活動の協力も可能。ただ、事前に互いに話をつけること。
参加する部活動の部員は、それぞれの定められた部活動の指定の色のゼッケンの上から、白い紙を胸元に張り付ける。
さらに軍服に着替える。
一人につき、それぞれのチームの色の色水の入った水鉄砲を支給する。そして、擦れると絵具の出るナイフ。
ナイフで、顔を切った場合、切ったチームは、違反行為として失格とする。
水鉄砲の水が無くなった場合は、美術室にて、生徒会が支給する。
次に、大会スタイルについて、参加する部活動が、2~6の場合はトーナメントスタイル。優勝するのは1チームのみ。
制限時間は十分。
7~10の場合、団体戦スタイル。
団体戦スタイルの場合は、運動部チーム、文化部チームで分かれる。制限時間は同じく十分。
11~17の場合、バトルロワイヤルスタイル。
人数が少なく、不利な部活動は、他の部活動と協力しても良いが、1部活動につき、協力できるのは1部活動のみ。
バトルロワイヤルの場合は、点数制になる。制限時間は二十分。
最後に、優勝賞品。優勝賞品は、メダル、トロフィーそして、優勝した部活の部員それぞれに希望の物を贈呈する。
「――希望の物を贈呈します。これで詳細は以上です」
この放送が流れた瞬間、クラス全員がざわつき始めた。
「俺は音楽プレイヤーが欲しいなー」
「私はヘアマスカラが良い‼」
「おいおい、これ皆参加するんじゃ?」
雪が独り言のようにつぶやいた。
雪の隣に座っている今藤が、それに答えるように言った。
「あほらしいな、俺たちの許可を取ってると聞いたが、まさか本気でやるとはな」
「でも、面白そうだな。あたしは最新のパソコンとスマホが欲しい」
「私は新しいスマホケースかな」
絵菜がそう言った時、絵菜の隣の海が口を開いた。
「俺は、シャーペンとボールペンだな」
「尚もきっとそう言うよ」
雪は少し笑って言った。
かくして、今年の部活動対抗武術大会は全員が参加することになった。
全ての部活が参加するため、バトルロワイヤルスタイルになった。採点方法は、胸元、背中に張った白い紙についている色と軍服についている、絵具の量で判断する。
それぞれのチームの色は順番に、
陸上部…赤
野球部…黄色
サッカー部…青
バレー…青緑
バスケ…紺色
卓球…オレンジ
ソフトテニス…ピンク
水泳…水色
柔道…黒
空手…灰色
剣道…茶色
吹奏楽…白
コーラス…赤紫
筝曲…緑
茶道…黄緑
美術…紫
家庭科…緋色
猶予は一週間、それぞれの部活動は優勝を目指して奮起する――。