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今この画面を眺めている君に質問。「正義」についてどう思うかい?
正しいもの?くだらないもの?間違っているもの?え、そもそもそんなもの存在しない?
……正解は一番最後が近いんだ。
「人として正しい」の捉え方は、人によって違うだろう。人には皆、それぞれの「正しさ」がある。正義はなんだと言われても、答えは違ってくる。それと同じように、「正義」も違ってくる。
えっ、お前はどうなんだって。そんな言い方はないだろう、もうちょっと物腰柔らかくお願いする。
じゃあ答えてあげよう、結論から言うと正義などこの世にはない。正義正義乱用してる奴は自己への称賛に対する快楽を覚えていてそう言う行動を起こすのだ。もしくは自己への称賛狙い。
ちゃんと正義感がある人もいる、そんな事を目的にしていない筈だ?
優しさと正義は全くもって別の代物だぞ、優しさは温かい心を持つ人、正義は人として正しい道の違い。
私はそんな低俗な事で悦楽を得たりはしない。人間の正しさなど、私には塵程度にしか思えないのだから。
では、私は何を望み何で愉楽を得るのか?
それは、人間同士の争いの傍観者になる事だ!!傍観者なら誰にも邪魔されず、ただその争いを見ていられる。いい事言って調子こいてた人間だって、元々悪者扱いされていた人間だって、みーーーんな己の利益もとい名誉もとい正しさの為になんだってし出す。
そんな、欲望が渦巻き罵声と暴力が響き渡る場面を見て、私はただただ嗤っていられる。あぁ、想像するだけで体が熱ってきた!
私が上手く傍観者になれば、そんな快楽が待ち受けている。
私は人間の醜さを嘲笑うのが最高に幸せなのだ。狂ってる?いくらでも言うが良い。さっきも言った通り、正しさなど塵程度にしか思っていない人間は、君の主観で全てを決められたくないのだよ。
あっそれと、予想外の事が起こった際に、へらへら笑っていた人間の顔が一瞬で絶望と化すのを傍観するのもまた好きだぞ。
さぁ、私はもうすぐ新しい学園の高等部に編入する。前の学校はすぐ潰せたから、つまらなかった。
どうやら「問題児クラス」に入れられるらしい。やったぞ、早速面白くなりそうだ。
ここからは楽しんでくれよ、画面を眺める事しかできない諸君。さらばだ。
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「はい、転校生くるのでー。」
適当に伝えられた転校生の話。誰だろう、と思っても期待はできなかった。逆に、ここのクラスに入れられるのは可哀想だ。何故なら…
「んなの聞いてねぇーよ、どうせクソ陰キャだろ?」
「またパシリに使われるんじゃね?男女どちらにせよw」
「地味子じゃないと良いなぁ〜、田崎みたいにぃ。」
「………」
「なんか言えよ地味子。そんな勇気もないんだ〜w」
このクラスは、いじめっ子集団の「陽キャ組」と地味でよくいじめられる「陰キャ組」、そしてうちと二人の友達、男子一名だけの「まと優組」に分けられているからだ。
ここは、クラス替えが中高等部ごとにある。だから卒業するまでずっとこのクラスなのだ。
うちは「まと優組」にいれるだけで十分だ。「まと優組」とは、「このクラスでまとも及び優秀な人間組」の略である。この組の人は前まではコロコロ変わっていたが、今は四人で固定されている。
そして何より、「陽キャ組」よりも勉強ができるので、多少の悪口は言ってくるもののいじめられはしなかった。なので、いつも四人で固まっている。
うち自身、一年生の間は「陰キャ組」で、ずっと辛い思いをしていた。いじめの内容を今思い出すと本当に鬼畜な内容だった。
パシリにされるのは勿論、私物は破壊されるわトイレに行くと水を掛けられるわ、通り過ぎると「気持ち悪いんだよ学校来んなカス」とか囁かれるわ、放課後呼び出されて殴られる蹴られるわ、秘密を言うのを脅迫されて言ったらみんなにバラされるわ……
その中でも、勉強を一生懸命した。そうしたら中の下だった成績がぐんと伸びて、今は学年でも二、三位の成績になった。そうして「まと優組」に入る事ができ、今の友達に出会えた。
こんな酷い現状で、なぜ世の中にバレないか。学園側が隠蔽しているからである。だからこの惨状に世間は気づいていない。尤も、この学園は優秀な学園として名が知れ渡っているから、悪いレッテルを貼られたくないのだ。
でもこれは、もう止める事ができないのだ。
「じゃ、入って良いですー」
先生の声によりざわつきが逆に増す。ところが、なかなか入ってこない。
「早く入れよ転校生!!」
「うっさいな。」
声を張り上げたのは、「陽キャ組」のトップの華霧胡桃。華霧に何か反抗しようものなら、途端にいじめのターゲットにされるが…大丈夫なのかこの転校生。
「えー、私は伊吹稀です。よろしくお願いします。」
「他に言うことはないんすかぁー?伊吹くん。」
すぐに反応し、うざったい語尾で話すのは呉内真斗。「陽キャ組」の唯一のまともで、いじめられっ子を裏で助けたりしている。前に見かけた事があった。
「あ、女です。」
「じゃなんで男っぽいんだよ、まぎらわしーっす。」
「うるさい人の自由だろうが黙れ。」
「はは、さーせーん!」
にかっと笑う呉内。華霧は睨み、見逃さないようにしていた。
「まぁ、ここは『問題児クラス』らしいですけどそんなことは気にしていません!よろしくお願いします」
「仲良くする気はないよぉ〜?」
「仲良くするとは一言も言ってないんですけど、話聞いてました?」
「あは、うっざぁ〜。」
明らかに喋り方がぶりっ子なのは、華霧の友達・杷恋音。パーマのかかった長い茶髪、短いスカート、うるうるの瞳。全てにおいてぶりっ子である。でも意外にも腹黒くねちっこいので警戒している。
「三回目ですが、よろしくお願いします。」
そして、転校生は用意された席に座った。うちの近くだった。
だんだんと心配になってきた。華霧といい杷といい、そういう態度をとっているならいじめの対象になりかねない。というか、確実にターゲットにされていると思う。
転校生が来た事で、更にこのクラスが崩壊しそうになったが…どうなってしまうんだろう?
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「さあ、混沌を私に見せてくれよ。」
次回 第一章【夜想曲は進み続ける】第一話
天宮からのコメント
閲覧ありがとうございます。次の話も頑張って書きますのでよろしくお願いいたします。