TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

──翌朝──

すかーと夢魔が離れて、夜が明けた。

ネグは早朝、誰よりも先に目を覚ました。


まだ少しふらつきながら、洗面所に立ち、鏡を見た。


ネグ(……わぁ……ボロボロ……)


頬にうっすら残る青い跡。包帯で隠されていた腕。

小さく息を吐き、包帯を巻き直そうとリビングに向かう。


救急箱を手に取って、包帯を外し、新しいものに変えていく──。

その指先さえ、どこか震えているのが自分でもわかった。


そしてリビングを出ようとした瞬間──


「……!」


目の前に、すかーが立っていた。


ネグはビクッと大きく肩を震わせ、すぐに一歩、二歩と後ずさった。


「……っ……!」


息すら詰まるような顔で、すかーの目を見ることもできず──


ネグは逃げるように走り出した。


すかーは何も言えず、ただその後ろ姿を静かに見ていた。


すかー(……また、やっちまった……)


すかーは拳を強く握りしめたまま、息をひそめていた。


──そのころ、ネグはマモンの部屋へ。


マモンの腕にすがりつきながら、泣き声を押し殺していた。


「ひっ……く……っ……」


マモンは優しく抱きしめ返し、小さく背中を撫でながら囁いた。


「……大丈夫だ。俺がついてるから。もう、誰にも殴らせねぇよ。」


──その泣き声を、ドアの外でだぁと夢魔が聞いていた。


二人は黙って顔を見合わせ、静かに歩き出した。


「すかー。」


夢魔が静かに声をかける。


「昨日のこと、ちゃんと話せ。」


すかーはしばらく黙っていたが、唇を噛んだあと、低く重い声で話し始めた。


「……ネグがまた勝手に部屋出たと思って……俺、一瞬……マジでブチ切れてた。」


拳を握ったまま続ける。


「ドア閉められた時……もう何もかもどうでもよくなって……頭真っ白で……。見つけた時、あいつ、ベッドで……何も言わずに……。そん時、もう殴るしかできなくなってた。」


「……。」


だぁと夢魔は黙って聞いていた。


「でも……あいつ……本当に、何も知らなかったのかよ……?」


すかーは顔をしかめて、震える声で呟いた。


──その後、ネグにも話を聞きに行った。


ネグはマモンの腕にしがみついたまま、小さく震えていたが──


だぁがそっと声をかける。


「ネグ、昨日のこと、教えてくれ。」


ネグは少し顔を上げ、かすれた声で話した。


「……知らな……っ……だって……わし……トイレ……行こうと思ったら……」


少し呼吸を詰まらせながら、続けた。


「マモンが……掴んできて……離さなくて……」


「……!」


すかーはその場で顔を真っ青にした。


「はぁ!?違うだろうが!!」


怒鳴りそうになったが、だぁが手で制した。


「落ち着け。マモン、お前は?」


マモンはネグの背中を軽く撫でながら、目を伏せて言った。


「……俺が掴んだ。ネグを逃がしたくなくて……俺が鍵閉めた。」


すかー「……!」


一瞬、頭が真っ白になった。


「じゃあ……ネグは……!」


すかーの視界が揺れる。


「……じゃあ、誰が鍵閉めたんだよ……って……俺……。」


その場で静かに膝をつき、頭を抱えた。


「……マジかよ……」


だぁは重く目を閉じて、すかーの肩に手を置いた。


夢魔も静かに言った。


「すかー、お前……やりすぎた。」


しばらくの沈黙。


そのあと、すかーはネグのほうへ行き、しゃがみ込んで、顔を上げさせた。


「……ネグ。本当に……悪かった。」


すかーの声は震えていた。


「俺……勘違いして……お前のこと……傷つけた。」


ネグは目線を合わせようとせず、顔を背けたまま、震える声で呟いた。


「……すかー……嫌い……」


その言葉を聞いた瞬間──


すかーは一瞬、完全に思考が止まった。


顔色がサッと青ざめ、目線を落とし、苦しそうに唇を噛みしめたまま、何も言わず立ち上がると──


そのまま、静かに部屋を出ていった。


──すかー視点──


(嫌い……か……)


胸の奥に鋭い杭を打たれたような感覚。


重く、苦しく、呼吸すらしにくい。


(あぁ……本当に……やっちまったんだな……俺……)


ネグの涙が、震える背中が、ずっと頭から離れない。


それでも、もう何を言えばいいのかすら分からず──


すかーはただ無言で、自分の拳を見つめ続けていた。


拳はまだ震えていた。怒りじゃなく、ただ後悔と、自分への怒りで。


──夜、家の廊下──


ネグは静かに携帯を耳に当てていた。

震える指先。声もかすれて、言葉にならない。


レイの声が聞こえた。


「……どうした、ネグ?」


ネグはしばらく何も言えず、唇を強く噛み、ようやくしぼり出すように小さな声で呟いた。


「……逃げたい……」


レイは一瞬、黙ったままだった。

ネグは泣きそうな声で、もう一度、小さく繰り返した。


「……レイ、助けて……逃げたい……」


しばらく沈黙が続いたあと、レイの低い声が返ってきた。


「……すぐ向かいに行く。」


その言葉を最後に、電話は切れた。


──ネグはゆっくりと、小さなカバンにスマホ、財布、モバイルバッテリーだけを入れる。

ボーッとしたまま、手が震える。


しばらく経ち、レイから「着いた」と短くメールが届いた。


ネグは静かにドアに手をかけ、靴を履こうとした──その時。


「……どこ行くんだ?」


すかーの声。

暗い廊下に、その低い声が響いた。


ネグは肩をビクッと震わせたまま、すぐに答えず、ただドアノブを握りしめる。


「……ネグ。」


少し近づいてくる気配。


「ネグ、どこ行くんだって……」


その時──すかーがネグの腕を掴もうとした。


その瞬間、ネグは強く振り払うように叫んだ。


「……っ、触んないで!!」


その声に、すかーの手がピタリと止まった。


ネグは振り返り、目に涙を溜めながら、でも真っすぐにすかーを見上げた。


「……嫌い。すかーなんて……大っ嫌い!!」


その言葉が、すかーの胸に刺さった。


一瞬、何も言えなくなる。

視界がぼやける。


すかーはただ、その場に立ち尽くしていた。


ネグはそのままドアを開け、外へ飛び出した。


夜の冷たい風の中、ネグの後ろ姿はすぐに見えなくなっていった。

遠く、レイの車のライトが見えた。


──すかー視点──


(……っ、ちょ……待て、ネグ……)


心が痛い。何を言っても、もう届かない。

胸が締めつけられるような苦しさ。


「……大っ嫌い、か……」


低く呟いた自分の声すら震えていた。


ただただ、後悔だけが、心の中を埋め尽くしていた。

ネグの姿も、もう見えなかった。


すかーは、その場から一歩も動けず、ただ立ち尽くしていた。

逃げたり、やらかしたり

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

20

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚