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#オリジナル
ゆいらーめん
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頼朝side
エールローズ定期ライブ当日。オレたちにとっては、何ら変わらない、いつもの公演のはずだった。
会場へ向かうワゴンの中や、ヘアメイク中、そしてリハーサル中でも、オレは自分たちの演奏よりも、別のことを考えていた。
この間のミート&グリートで、古参ファンだという少年『ミツル』くんと話をした。その子は高校生で、大学受験に対する自信を無くしてしまった、人生が楽しくないと泣きながら話してくれた。
どんな人の心の中にも、叫び続けるバラのような存在になる、というコンセプトの元、活動をしているオレたちは、当然人気度はトップアイドルには劣る。それでも、誰かの心の支えになるように作り上げた曲が、届かない…咲かないことがある。
ミツルくんは、初期の頃に物販で売っていたキーホルダーをお守りがわりのように、持ってくれていた。
[回想]「じゃあ、今度のライブに来て!絶対後悔させないような、すっごい思い出にしてあげるからさ」
その子がライブ会場に来てくれているのかは、分からない。ファンの母数が多くなってきている今は、チケットが抽選制で行きたくても行けない人だっている。無責任な事を言ってしまった。
「頼朝!テンポ、早まってる!」
ヒロキに指摘されるまで、気付かなかった。気づくとカイも、バサさんも、演奏がズレていた。
「わー!ごめんなさい!考え事してて」
「考えるなら、ミーティングの時にちゃんと言ってって……何?時間ないけど、どうするつもり?」
「ヒロキ、お願い!MCの台本、変更させて!」
このまま本番まで臨めるような気がしないと思って、オレは頼み込んだ。
ライブのセットリストや、演出、そしてMCの管理は、いつもリーダーのヒロキがキッチリと計画している。何らかのトラブルに巻き込まれてもすぐに対応出来るように、ライブを重ねていった結果だった。
アドリブが嫌いなヒロキの事だ。僕のカンペキな計画を壊すのはどうこう〜と文句を言われるかもしれない。子役時代からの長い付き合いで、最近は丸くなったけど。
「……はあ、いいよ。頼朝が何考えてるかは、僕は知らない。知りたくもない。ファンの子達を困らせるようなことさえしなければ。2人もそう思いますよね?」
カイとバサさんは、それぞれ目配せをして頷いてくれた。
「みんな、ありがと!ほんのちょっとだけ、言いたい事があったんだ」
本番まであと30分。ステージが開場を始めた。オレたちは、最後に動きをスタッフと確認した。
MCを終わらせたあとは、新曲!
気合いを入れないとダメなのに、オレはドラムを叩きながら目を凝らした。観客席は満員だったけど、ミツルくんを見つけられなかった。2階席?それともチケットが当たらなかったのかな?
スタンド席のペンライトが何かをキラッと反射させた。あのキーホルダーは…!
それは、よくライブに来てくれている三つ編みの子のものだった。今日も来てたんだ。
「ありがとう、大好きだよーーーっ」
どこからともなく、そんな言葉が聞こえた気がした。
気付けば、ファンの子達は泣いていた。それに感化されるように、ヒロキも、カイとバサさんも、メンバー全員の目が潤んでいた。
鳴り止まない拍手と歓声。このアイドルバンドが始まって結構経つけど、今までより一番の大盛況のまま、公演が終わった。
数日後
先日、ライブで初めて披露した「フルカラー」は、ヒット曲になった。何せ歌詞がじんわり沁みてくると評判だったみたい。どこでも自分達の曲が流れていて、むず痒い感覚がする。歌番組に呼ばれることが増えて、前よりも忙しくなった。
オレとヒロキは普段は大学生。芸能活動中はみんなが集まってくるけど、今はどこにでもいる人に溶け込んでいる。
「キミ、一人?ちょっと俺らとタピオカでも飲んで話さない?」
学校帰り、若い男2人に絡まれている、高校生くらいの女の子がいた。見る限り、露骨に嫌がってる。
「や、やめてください…!け、警察呼びますよ!」
その子は泣きそうになりながら声を絞り出していた。
この人通りの多い街で、誰も助けようとしない。
「何やってんだ!離れな…さいっ!」
オレは無意識に走り出して、男達を突き飛ばしていた。
「チッ、ガキがよ」
捨て台詞を大声で叫んで、男達は逃げて行った。
「ううっ…ぐすっ…」
女の子は座り込んで泣いてしまっていた。
「ねぇ。ねぇーってば、怪我してない?警察呼ぶー?なんてねっ」
心配でオレは声をかける。周りの目はどうだっていい。第一、こういう時は誰も見て見ぬふりだし。
女の子は涙をハンカチで拭くと、少し赤い顔で
「あ、ヨリ…貴方は…!わ、私のヒーローです」
と言われた。
「えっ?そんな、ヒーローなんてさ、ディフェンジャーとかじゃないし」
彼女は首を振ると、まっすぐこちらを見て話し続けてくる。メガネの奥の大きな瞳に、少しドキッとしてしまった。
「いえ、いいえ!今度こそちゃんと、お礼を言わせてください!」
エルローのファンの子かな?よく見ると、その子はこの間のライブに来ていた子だった。それにしても、前に会ったことがあるみたいな話しぶりだ。
確か、名前はーーー
これで完結です。結末は皆さんの想像にお任せします!
コメント
5件
🌸 えっと…完結おめでとうございます!!✨ 頼朝sideのエピローグ、めちゃくちゃ沁みました…😭💕 ライブ前にミツルくんのこと気にしてた頼朝が、最後にファンの子を助けて「ヒーロー」って言われる流れ、エルローズのコンセプトそのものじゃないですか…!「フルカラー」がヒットしたのも納得の、人の心に寄り添う優しさが詰まったお話でした。 結末を想像に委ねるスタイル、余韻がすごくて何度も反芻しちゃいます…📖💕 素敵な作品をありがとうございました!