テラーノベル
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タコピー見ちゃったっピ。糖分補給。素直になれない日本さんをどうぞ。ワンチャン続きを書きます。
アルコール入りの、熱い吐息が混ざる。
電車の音が、ひどく遠くに聞こえた。
妙に長く、触れるだけでない僕の行動に、水晶のような瞳が揺れている。
「………っ、日本……」
その続きを聴きたくなくて、丁度来たタクシーにお金を握らせて、彼を詰め込んだ。
***
それが、3日前のこと。
昨日の日付で止まったままの彼のメッセージを思い出す。
既読をつけるのが怖くて、ロクに画面を開けていない。
資料の束を抱えて歩く廊下。
開いたエレベーターの先に、フィンランドさんが立っていた。
「あ、日本………」
「……すみません。忘れ物をしたので、どうぞ。」
彼は戸惑ったように眉尻を下げながらも、僕を問いただすような真似も、追いかけるようなこともしない。
ひとつに戻る扉を眺め、ため息を吐いた。
手に持った書類がクシャリと歪む。
直そうとしても、指先に力が入らなかった。
いつまで逃げるんだ、と自己嫌悪に陥る。
あの夜、自分から触れてしまったくせに。
あの人の優しさに縋ったくせに。
***
4日目。
彼の声が聞こえるたびに、電話が…と席を外した。
5日目。
すれ違った時、お疲れさま、と言ってくれた彼の声に気付かないフリをした。
6日目。
増えてしまった彼からの通知を、全部消した。
7日目。
夜、眠れなかった。
目を瞑るたび、フィンランドさんの目が頭に浮かんで。
唇に、柔らかい感触が蘇って。
そして、8日目の今日。
「……フィンランド、さん。」
残業中、コーヒーでもと訪れた給湯室に、彼がいた。
湯沸かしポットの音が響いている。
長いまつ毛が上がり、細いシルエットがこちらを向く。
「……日本。」
咄嗟に後ろに動かした足を、悲しそうな彼の目が映した。
声が震える。
「待って。」
ゆるりと伸ばされた手が触れる。
それだけで胸が痛んだ。
喉元に上がってくる心臓を誤魔化すように、彼から目を逸らす。
「……ずっと、無視してるよね。俺のメール。」
何も言えなかった。
「毎日送ってた。……返事なんかなくてもいいって思ってたのに、…どうしても、君の気持ちが知りたくて。」
静かな声が狭い室内にこだまする。
「……好きだよ、日本。」
ひゅ、と微かに息が漏れた。
「日本は俺のこと、どう思ってる?」
どんな言葉でも受け止める、という凪いだ湖のような色の瞳。
目線を合わせるように彼が屈み、至近距離で視線が絡まる。
日本、と優しく名前を呼ばれる。
やめて。そんな風に、呼ばないで。
「僕も……あなたが……。……あなたを、……。」
いつしか、手を握られていた。
輪郭が混ざり合ってしまいそうなほど、手のひらが熱を持つ。
もう、ダメだった。
「………あなたのことは、遊びだったんですっ……!!」
震える声で意味のわからないことを叫び、給湯室を飛び出す。
息が苦しい。
視界が滲んで、蛍光灯の光が歪む。
好き。
どうしようもないくらい。溺れてしまいそうなくらい。
それでも、自分が自分でなくなってしまうような甘い痛みが怖くて。
どこまでも優しい彼に、壊れてしまうような気がして。
廊下に自分の足音が響く。
張り裂けそうな胸が、うるさいくらいに「彼が好きだ」と叫んでいた。
(終)
コメント
5件
あああああああああああああ やばい好きだぁぁぁぁぁあぁあ
これは 続き書かないと ダメだよ 🥺 🇫🇮🇯🇵って どこか 悲しくて 甘いのが一番似合うのよ 🤔 遊びだって言われた時の 🇫🇮の顔を想像すると 天に召されそうでやばかった🤦♀️💦