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どなたか他にこのふたりを祝ってくれる方はいらっしゃるのでしょうか。
最推しカプの左側くんの誕生日を祝います。158歳おめでとう!
夜の会議室は静かで、やけに広く感じた。
窓の外に広がる街も、そろそろ夢を忘れて寝入る頃だろう。
11時55分。
手元でロウソクの明かりが揺れる。
「まだ明日の話ですけど…お誕生日、おめでとうございます!」
おずおずと差し出された白いラッピングの箱。
開けていい、と聞いた僕に、はにかみながら日本が頷いた。
「これ……風鈴?」
「はい。」
「あ!メープルリーフだ!」
涼やかなガラスの曲面や短冊の上に、五指を広げる葉っぱが散っている。
「我が国では楓という秋のシンボルのような存在でして。通常、風鈴には夏のモチーフを描くんですが……」
「あなたの国旗が楓だと伺いまして。秋の涼やかさも感じられますし、いいかなぁ……と。」
その瞬間、痛いほど胸が温かくなった。
「ありがとう、嬉しいよ。……色々考えてくれたんだね。僕のために。」
「……はい。音を聞くだけで体温が下がるそうで…夏の間だけでも、そばに置いていただけたら……。」
大したものではありませんが、と日本が俯く。
そんな彼を見ていて、ふと疑問が湧いた。
「ねぇ、日本?……どうして、こんな時間に僕を呼んでくれたの?」
ぶわり、と音がしそうなほど、彼の手が一気に熱くなった。
「……えっと……。」
声が微かに震えている。しばらくそのまま待っていると、か細い声が聞こえてきた。
「……今のカナダさんは、今日で最後でしょう?」
胸の奥が、ゆっくりと波打つ。
「……だから…ちょっと、独り占めしたくなっちゃって………。」
言葉を探す間も惜しいほど、心が満ちていく。
こんなに大切に思ってくれていたことが、嬉しくてたまらなかった。
込み上げる気持ちを伝えようとしたけれど、キャパオーバーを起こした日本の頬が冷えるのを待つことにした。
そうしている内に、カチン、と一際大きく時計が鳴った。
12時。
「……新しいカナダさんですね。」
やっと日本が顔上げる。
その微笑みが、あまりにも優しくて。
「そうだね。……でも……。」
新しい時間を刻み込むように、一歩近付く。
「変わらないものも、あるかもよ?」
確かめてみる、と目を見つめると、日本はためらいがちに頷いた。
呼吸が静かになる。
そっと手を伸ばし、柔らかな頬を包み込む。
長いまつ毛が伏せられて、僕を受け入れるように背中に腕が回された。
唇が触れ合ったのは、ほんの一瞬だった。
それだけで、胸の奥にあかりが灯る。
確かめるでもない、ずっと変わらないもの。
「…ほんとだ。私だって、変わりませんからね。」
こつん、と額を合わせて、ふんわりと日本が微笑む。
離れたくなくてもう一度だけキスをした。
これからも、ずっと一緒にいよう、と思いながら。
(終)
***
(おまけ)
「……えっ!?風鈴の音で体温が下がるのって日本人だけなんですか!?」
「うん。そうらしいね。……まぁ、僕もそもそも君に会うまで風鈴なんて知らなかったし。」
「えぇ………。」
ガックリと肩を落とす。
僕は意味のない贈り物をしてしまったのか。
「ってことはさ!」
顔を上げた。
「僕はずぅっと飾っておけるんだね。」
カナダさんが、ひだまりのような笑みを浮かべている。
「……僕は寒くなっちゃうので、こたつ出してください。」
「えぇ〜。僕ん家、こたつはないよ〜?」
「じゃあ、今度買いに行きましょう。」
じゃあお鍋と、みかん用のカゴも、なんて。
訪れもしない季節の話をするのが、どうしようもなく楽しかった。