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放課後、教室には掃除を終えた後のわずかな生徒しか残っておらず、二人の教師も資料整理に取りかかっていた。
「……今日は少し余裕があるみたい」ミユは厳しい目を細めつつ、机の端に置かれた資料を片付けながら小さくつぶやく。
コビーはその横で微笑み、そっとミユの肩に手を添える。
「ええ。少しだけ、こうして静かに過ごす時間も大切ですね」
教室の静けさの中、二人の距離は自然に近くなる。
互いに目で合図を交わし、肩が触れそうになる瞬間もあったが、ミユは厳しさを失わず、気の強さを滲ませる。
「……油断すると生徒に見つかるよ」
コビーは微笑んで、軽くうなずく。
「ええ、でもこうしていられる時間があるのも、今だけですから」
二人は机の上の資料を整理しながら、互いにわずかに触れ合う手や肩の距離を慎重に調整する。
厳しく気の強いミユの表情は変わらないが、その目はわずかに柔らかさを含み、コビーにだけ許された特別な瞬間を映していた。
「……ほんの少しだけね。だから、調子に乗らないで」ミユは低く、しかし確かな声で言った。
「はい、もちろんです」コビーは穏やかに答え、わずかに微笑む。
教室の静けさの中、二人の距離は確かに縮まっている。
外から生徒の目が届かないこの時間、この場所だけで、二人は秘密を守りながらも互いの存在を実感できる。
秘密の恋は、まだ完全には明るみに出ていない。
だが、放課後のこの短い瞬間が、二人の関係をより特別なものにしていることは確かだった。