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「マッド」
「冬弥」
今日も彰人は柵の向こうを見ていた。
「なんかあったか?」
「……俺は、…」
言うんだ。もう苦しい思いはさせたくないと昨日決めただろう。マッドはいつも俺を通して違う人を見ているんだ。マッドの、ために。
(でも、…)
マッドと話すのは楽しくて、会うのをずっと楽しみにしていた。もう会えなくなるのは……、
「俺は、…ッ俺はもうここには来ない」
「は?」
「マッドという名前も嘘なんだろう」
「っ、」
「俺を通して知らない誰かを見ていると思うと辛いんだ。俺は彰人を見ているのに、と。」
「…に、…」
「え?」
「お前に何が分かるんだよ!!!!」
彰人の怒号が頭に響く。
「ッ…、」
「嘘ついて何が悪い!!お前は大切な人を失くしたことがないからわかんねぇんだろ。この気持ちなんか」
分かるわけがない。気付いたらここにいて、大切な人を失ったことがないのだから。
「みんな生き残ってたのに好きなやつだけがいなくなって、なにもかも嫌になって全部捨てて、そんでしばらくたったら同じ名前で同じ声で同じ顔で現れて!!!」
そんなの、俺に言わないでくれ。
「なんも知らねぇ癖に勝手に好きになって離れようとして……ははっ、もう来ねぇんだっけ?だったら教えてやるよオレの名前」
勝手なのは彰人もだろう。
…?俺は何故本名を知って、
「東雲彰人。何百年前の白国第3皇子、青柳冬弥の一生の護衛だ」
「あき…と…?」
なんだか、聞き覚えがあるような、
「ヅ…!!!!」
(あたまが、いたい)
俺は何も知らなかった。
彰人の過去も
嘘をついていた理由も
少なくともオレはお前を友人だと思ってたけどな、と彰人が言ってくれたことも
なにも、しらなかったんだ