『二人の兄と姉の記憶−オモイデ−』
日々大戦の準備や魔獣被害の対処に追われる紅姫と湊そんなある日の昼下がり精霊達の提案で休息をとる様に言われとある孤児院にやって来ていた。精霊達からは屋敷の仕事の事は忘れて休息をとる様にと念を押され送り出された。
紅姫:あの子達…本当に大丈夫かしら…あの子達も私達と同じ位疲労が溜まっている筈なのに…
湊:はは、そうかも知れないね…けど精霊達にしてみれば人間の俺達が心配なんだよ…この好意無駄にしちゃダメだよ。
紅姫:…それは、わかってるわ。
孤児院の子供1:あ、湊兄ちゃんだ!皆ー湊兄ちゃん帰って来たよー!
孤児院の子供2:本当!?
孤児院の子供:紅姫姉様も一緒にいるよ!
孤児院の子供達は二人を見つけるとすぐに走り出し二人に駆け寄る。
孤児院の子供1:おかえりなさい!湊兄ちゃん、紅姫お姉さん。
湊:ただいま、皆元気だったかい?
孤児院の子供2:うん!
孤児院の子供3:湊兄ちゃんと紅姫お姉さんも元気そうでよかった!
孤児院の子供4:ねぇねぇ湊兄ちゃん剣教えて〜僕、将来湊兄ちゃんみたいな騎士団に入りたいんだ!
湊:それは頼もしいね将来が楽しみだ、よし軽く教えてあげるよ。
孤児院の子供4:やった!
孤児院の子供5:紅姫姉さん…あの…また、ビーズでアクセサリーの作り方教えて…
紅姫:ええ、勿論よ。
??:湊、紅姫元気そうねぇ〜
??:子供達、あまりお兄さんお姉さんを困らせちゃダメだぞ。後少し話があるから後で相手してもらいなさい。
子供達:はーい、湊兄さん、紅姫姉さんまた後でね〜
子供達は院長の言う事に返事をした後各々遊び始めたり、勉強し始める。
??:やれやれ…
湊:ごめんよ、クロノス。
クロノス:構いませんよ。なんせ私達魔武器は大戦までは出番がありませんし、私達が君達と一緒に戦う際は守護神達がここを守る予定でありますから。
紅姫:フロストもありがとね。
フロストローズ:構わない…子供は嫌いじゃない…苦ではない。
紅姫:そっか。
湊:それでクロノス話って?
クロノス:はい、貴方がたの兄と姉のお話です。
紅姫・湊:!?
フロストローズ:君達は『死に戻り』を知っているか?
紅姫:確か…死を迎えるたびに、自身は記憶を保持したまま、過去の一定の時点に戻って生き返る事だった筈…
フロストローズ:その通り…
クロノス:君達の兄と姉はその死に戻りで現世に居ます。それも別の姿でね…
ロゼリア・ノエル:…………
紅姫:リア…答えてくれ
湊:ノエル、本当なのかい?澪兄さんと里愛さんが生きてるって…
クロノス:そろそろ言っても良い頃合いではありませんか?ロゼリア殿、ノエル殿。
ロゼリア:そうだな…今がその時かも知れんな…
ノエル:ですね。お二人の兄と姉つまり澪と里愛は私達なのです…
紅姫:……え
湊:ノエル達はノエル達でしょ?
ロゼリア:二人共落ち着いてくれ…これには澪と里愛が望んだ死に戻りなのだ。
紅姫:姉さん達が望んだ死に戻り…
ロゼリア:あぁ…確かに澪と里愛は大戦時に命を落とした、だがその二人の魂は天界に辿り着いたのだ。
ノエル:その時に私達とアリスに出会ったのです。彼等は私とロゼリアの依代になり死に戻り君達を見守る者、力を貸す者となる事を望んだんです。
湊:それじゃ、俺達の神化で感じた違和感は…澪兄さんと里愛さんの力だったって事?
ノエル:はい、後もう一つ君達がクロノスとフロストローズを扱う度に蘇る澪と里愛との記憶それが君達の力の源となっています。
紅姫:じゃあ、今はリアとノエルの心の中で生きてるんだ姉さん達は…
ロゼリア:……うむ……
ノエル:はい…生きていますよ私達の心の中で…ずっと貴方達と居ますよ。
ノエルのその言葉を聞いた途端、紅姫と湊は泣き崩れた幼い頃に魔獣によって命を落とした自分達の兄と姉の安否をやっと知る事ができ、自分達の傍で見守って力を貸してくれていた事に気付いたのだ。
ノエル達との話が終わり子供達とヘトヘトになるまで遊び、食事、お風呂等を済ませた二人は子供達が寝静まったのを確認した後外に出た。
−孤児院 外−
紅姫:あーあ…まさかこんな近くで見守ってくれていたなんてね…正直驚いたよ…
湊:そうだね…でも俺達は皆に見守られてきたんだなぁて実感するよ。
紅姫:そうね、なら…私達はその分頑張って私達なりに恩返ししていかないとね。
湊:うん、屋敷に帰ったら鍛錬しなきゃ…
紅姫:今は休息に専念しないとね。鍛錬はそれからよ。
湊:ははっ、そうだね。よーし明日もめいいっぱい子供達と遊ぶぞー
二、三日孤児院の子供達と触れ合い心身の休息が出来た紅姫と湊は青薔薇屋敷に戻る、そしていつもの忙しい日々に戻るのであった。