TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

「生まれてこなければ、幸せだったのか?」

 真面目であるが故に馬鹿を見て、理不尽に打ち拉がれ、苦悩し疲弊し、時に涙する菊を見る度に、俺はそう考える。俺もまた、不条理に晒されながら生きてきた身だからだ。


 生きることが、痛みと同等であるならば。

 何も感じない、生まれる前が幸福なのか。


 あらゆる可能性の存在しない世界こそが、

 人類の望む、究極の理想郷だというのか。


 この世に生を受けること自体、「間違い」なのか。


 だからといって、今さら死のうとも思えず。

 菊と心中しようだなんて、もってのほかだ。


 テーブルの前で項垂れて咽ぶ菊のもとに、俺は静かに近寄った。そして背後から、包み込むように抱き締めた。


 俺は彼の笑顔を知っている。そして何よりも、彼の優しさを知っている。それはとても幸福なこと。何も無いところからは、決して生まれないもの。


 確かにこの世は糞みたいで、穢くて、救いようがない。しかし、「希望」は確かにあるのだ。それが、どんなにささやかなものだったとしても。だって、俺がそうなんだぜ。菊に「好き」って言われただけで、どんなに沈んでいた気分も、忽ち舞い上がるんだぜ。それは、俺が単純だからってのもあるのだろうけど。


 ふと、頬を濡らした菊が此方を振り向いた。そして腕を伸ばし、俺の身体を抱き締め返した。菊もまた、俺の存在を「希望」だと思ってくれているようだった。


 俺達は────生まれてきて「正解」だったのだ。


キムチ丼SS過去作品集(悠久の憂い編)

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

8

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚