「·····私が遣ります」
「あら、貴方が相手なの?一人で大丈夫なのかしら。見た処、強そうには思えないわ」
「其れは如何でしょう。遣ってみなければ判らないですよ」
「麗沙、手前何考えてやがる。下がってろ」
「そんな状態で何を云っているのですか。私は一人でも平気です。それに·····」
「何だよ?」
それに、其れ以上貴方に傷ついて欲しくないの。
「いえ、何でも無いです。兎に角、此処は私に任せて下さい」
私は、敵へ向かって駆けた。先ずは、夕稀の周りに居る異能に依って形作られている奴等を始末しなければ。
一気に距離を詰めて、ナイフを手に先ず一人。続けて残りの四人も片して跳躍。盾が無くなった彼女まで後一寸·····の処で止まった。否、止められた。体は宙に浮いたまま。
横を見れば、私の首根っこを掴んでいる大男と目が合った。彼も又、灰色だった。
「何故?確かに始末した筈なのに」
「たかが五人しか召喚出来ないとでも?其の様なくだらない異能なら、重宝しません。後何人とお相手になってくれるのかしら?」
「·····嘘でしょ?」
目の前には、二十人は居る。
「此れが、今の私が使える異能の最大ですわ。此れ以上は増やせないけれど、此の人数を一人で相手にするのは、少しばかり無理が或るのではと思いますよ、玲沙さん?」
此の状況はやばい。本当に危機的状況だ。
中也さんは負傷中。
夕稀の異能は想像以上。
私は捕まえられたまま、宙に浮いている。
如何考えても絶望的な状況である。
でも其れは、今のままならの話だ。
今のまま私がナイフを振り回しているのなら、確実に夕稀の異能に負ける。小型銃も持ってはいるが、奴等を全て始末するまでに確実に弾切れになる。
では如何するか。
「ほら、早くしないと死んでしまいますわよ」
「·····隠してる場合じゃないか」
「ふふっ。彼等を倒すまでに何分掛かるのかしら。余り時間を掛け過ぎると、お仲間の状態が悪化するのでは?」
「十秒有れば十分」
「·····十秒?流石に其れはあり得ませんね。先程の五人を倒すのに、もっと掛かっていたはず」
然し、其れは先刻の話だ。今とは違う。
「夕稀さん。貴方は先刻異能の事を、不意を突くのに善いと云っていましたけれど、本当に不意を突くなら、味方すら知らない切り札が必要なのですよ」
「其れは如何云う·····えっ!な、如何なっているのです!?」
「·····おい玲沙。如何云う事だよ、此の状況は」
夕稀の周りに居た沢山の奴らは、其の半分がガシャン、と音を立てて崩れた。残ったのは、沢山の砕けた氷。
「··········『氷像の宴』」
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