テラーノベル
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今日は無いか…
最近でも時々秘密基地を見に来ていた。この町も結構景色が変わってきたけど、ここはいまだに変わらない。
小中学生の頃とは違い、落ちているエロ本を拾って帰ることはない。持って帰るのはビデオだけだ。
さて、また今度来るか。帰ろうとすると、
「山本?」
声を掛けられ驚く。誰だ?
振り向いてまた驚く。
黒く長い髪、大きい瞳の美少女。
「もしかして…馬場さん…?」
「そうだよ!山本は眼鏡になったんだ。相変わらず秘密基地に来てるの?」
思い出が甦る。あの頃、長い期間じゃなかったけど、とても濃密な、大人の階段を駆け上がったあの頃を。
「馬場さんこそどうして?え?もしかして帰って…?」
「ううん。それはまだ。近くに来たからちょっと寄っただけ」
年相応にきれいになった馬場さんだ。馬場さんだ!
「馬場さん…」僕は忘れたことはなかったよ…
「あきら!まだかよ!」
え?男の人の声!?
「ごめん!もう戻るから!」彼氏…?なのか…
男の人は…え!?近付いてきた。
「なんだ?男に会いに来たのか?」
え?
「違うよ。偶然昔のクラスメートに会ったの。山本。山本、あたしのお兄ちゃん」
「あ、ゲームの…。山本です。昔、ゲームをお借りしてました」
「あ、あの?ヒロシ?セーブ見たよ。律儀で真面目なやつだなーって思ったよ」
「え?わかるんですか?」
「わかるよ。きっちりレベル上げして装備も整えて。うん、ヒロシって顔してる」
誉められてるのかな?
「お兄ちゃんに運転してもらったの」
「そうなんだ」ほっとした。
「どうする?話してくか?電車でも戻れるだろ?」
「え?」
「元出井津駅の近くに泊まるの。今日」
話したい。昔のこと、今までどうしてたか、ものすごく興味があった。
「決まりだな。あんまり遅くなるなよ?」
僕の顔を見てそう言ったお兄さんは、じゃあな!とさっさと道を引き返していった。
「よかったの?」
「うん。本当に久しぶり」
「うん。久しぶり…」
どうしよう。いざ話そうと思うと何も言えない。
「山本は高校どこに行ったの?」
「あ、あぁ県立の…」
「え?近いじゃん!いいな~あたしなんか通学、電車で一時間だよ」
「結構遠いね」
「田舎だからね」
「あ、ここじゃ座れないね。今日はレジャーシート持ってないし(笑)」
「レジャーシート!懐かしい!そうだ、山本んち、行ってもいい?」
「!いいよ!行こう!」
馬場さんがうちに来る。えーと、8年ぶりか。
それにしても馬場さん…きれいになったな。
並んで歩く。道すがらも話をした。話し始めたら昔のように話せた。
学校のこと、住んでる町のこと。そっか、東北に引っ越したんだ。
きっとあの頃先生が言ってたんだろうけど、僕は引っ越して会えなくなることがショックで、全然聞いてなかったんだな。
「あ、あそこだよね」
「よく憶えてたね」
「ずっと来たかったから」
馬場さん…
「上がって。まだ誰も帰ってないと思うから」
「うん」
部屋に入るとぐるりと見渡して
「変わってないなぁ」
「そう?マンガとかゲームも増えたよ」
「うん。変わってない」
懐かしそうに目を細めている。
コメント
1件
おお…第37話、読み終えました。馬場さん、再登場ですね。秘密基地のエロ本の話から始まるのが、懐かしさとちょっとしたユーモアがあって、思わず笑みがこぼれました。馬場さんのお兄さんがゲームのセーブデータを見て「ヒロシって顔してる」と言ったシーン、キャラクターの優しい人柄が伝わってきて、すごく好きな場面です。8年ぶりの再会、山本くんの「忘れたことはなかった」という一文にじんわり来ました。この後、二人の会話がどう転んでいくのか、すごく気になります!