コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
改めて、今回のターゲットの名前はフラジール。諜報屋によると、雨粒を操る能力らしい。自発的に人を殺すことはないが、積極的に襲われたら殺す。これでもかなり温厚なタイプの能力者らしい。
そして、重要なのが能力のデメリット。どうやら時間制限があり、1日に一回、それも一分ほどしか能力を使えないようだ。制限時間がわかりやすいようにとタイマーを預かっている。
「…ほんとに役に立つのかな、これ。」
怪訝な顔していると、ターゲットが奥からやってきた。私は通学路唯一のトンネルの下で彼女を待っていた。
こちらに気づいた彼女が突然立ち止まる。
「こんにちは。今何なさっているんですか?」
話しかけてきた。流石にはぐらかすのは無理だろう。この場所はあまりにも相手にとって不利すぎる、気付かれるのも必然か。
「…」
私は黙って翼を生やした。相手が慌てて服装を変える、防寒具だろうか?
「誰に、言われてここにきたんですか。」
「言わないよ、話し合いは無駄だってわからない?」
「…わかりました。とても残念です。」
自分が勝つのが当然みたいな口ぶり、腹立つね〜。でも、少し引っかかるかも。何か策でもあるのかな?あ、雨降り出した。
タイマーポチッと。
「…」
あたりに緊張が走る。あまりにも長い10秒、しかし相手が何かしてる様子はない。
「あのさ、ふざけてんの?」
「さぁ、どうでしょうね。」
-ヒュン
突然、悪寒が走る。私は体を大きく左にずらした。するとガリガリと音を出してトンネルの壁が抉れていた。下には水たまりがある。
「驚いた!」
私は驚いて声を張る。すると彼女も声を張り返してきた。
「わたしは、人殺しはいけないことだと思ってます。」
急に何言ってるんだこいつ…今から私達がやることだろ。嫌な顔をする私に向かって、構わず彼女は叫び続ける。
「私を許さないでくださいね。死んでも恨み続けてください。私、それでも生き続けますから。」
急に悪寒がする。なんだこれは。武者震いか…それとも…。
「私が殺した人の分だけ!!!!」
-ドカーン
瞬間、私の全細胞が警報を鳴らす。トンネルだ。トンネルが崩壊し出した。まさか、水圧で押し潰したのか。
「チィッ」
舌打ちをしながら、私は全速力で走り出す。彼女に向かって一直線に。すると、ギョッとして彼女もトンネルとは反対側に走り出した。雨粒だらけの戦場ではわたしは彼女に敵わない。なんとしてでもこっち側に引き摺り出す。
「何でそんなに、躊躇わずに殺しができるんですか!」
彼女が話しかけてくる。
「血を吸うためだよっっ!!!」
私は反射的にそう答えた。
すると彼女は立ち止まりこちらに向かって構えた。
「命を弄ぶな!!!」
私の右腕が吹っ飛ぶ。想定以上の威力…こんな話は聞いていない。
「お前だって殺してんじゃねぇかよ!!!」
この痛みは、一度経験した。大丈夫。前より動悸もしてない。
「私は何人殺しましたか…いや…数なんてどうでも良いんでしたね…わたしがするべきことは!生きながらえた罰を!噛み締めて!彼らに死んだ意味を与えることです!」
「何偉ぶってんのさ、あんたがやったことはただの人殺しでそれ以上でも以下でもないよ。」
「そんなことはわかっています!でも縋るんです!私は!ただ死にたくない人間だったから!」
本当に人を殺したくなかったんだな、少しだけ同情する。でもこれは殺し合いだ、手を抜くつもりはない。
彼女は勢いよく迫る私を足止めしようと必死に抵抗する。あたりの地面が雨でえぐれていく。そこらじゅうの水たまりが消えて、回転する水によって私の左足が抉れた。必死で痛みを堪える。
私はここで考え方を持久戦に切り替えることにした。この足で踏み切っても、あの防具の下には届かない気がした。時間はあと何秒稼げば良い?8秒か、長い。かくなる上はこうだ。
「っ!!!」
私は持っていた右腕をフラジールに投げつけた。彼女は怯んで3秒ほど動きが止まる。その隙に私は自分の左足を爪で切り裂いた。
「何してるんですか!」
「抉れてるからすぐキレるんだなぁこれが!!!」
私は全神経を集中させる。時間はない、一度きりのチャンス。最初で最後の命のやり取り。
「くらえ!!!」
私は全力で自分の左足を投擲した。半端な威力じゃ簡単に逸らされる。このままの勢いでしっかり彼女の足を何秒か止めて見せろ、私の足!
「小癪な事をっ!!!」
彼女は大きな渦を作って壁を作った。
攻撃は受け止められ、私の足は粉砕された。 しかし、
_ピピピピ
時間は無常にも訪れた。