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お礼を言うことができないまま、人混みから離れて長い坂を登る。


そして、王都を一面見渡せるくらい眺めのいい場所に着いた。



白っぽい石で作られた床と手摺りがあり、真ん中には小さな噴水とベンチがあるお洒落な公園。


周囲には、若者が何人かいて、楽しそうに話している。



夕陽が一番よく見えるベンチの前にセツナが立って私を呼ぶ。



「ここで座って待っていてくれ」っと言ってから、どこかに走って行ってしまった。




今日は疲れたな……。



待っている間だけ居眠りをしていよう。


しばらく目を閉じて休んでいると、足音が聞こえてきて腕にコツンっと何かが当たる。




「ほら、果物を絞って作った飲み物だ。

これもなかなかいけるんだぜ。早く飲んでみてくれ」


「いただきます。

……少し濃いミックスジュースみたいで飲みやすい。好きな味かも」



「それはよかった。

この場所は王都から夕陽を眺めるのにいい一番場所なんだ。

カップルにとって人気なのかデートでここに来る人達が多いんだぜ」


「こういうロマンチックな場所に来ると、デートした気分になるね」



「かけらは今デートしてるって思ってないのか?

まあ、時間があったら、もっと喜んでもらえるような計画を考えるんだけどな」



風で揺れる髪を耳に掛けてから、手を下ろそうとした時、セツナの手に当たってしまいビクッと驚く。


一緒に踊った時は触れても大丈夫だったのに、今はどうしてなのか意識してしまう。


驚いた自分を隠すためにセツナの方を見ると目が合ってしまい、逃げるように視線を逸らす。



「何か不満だったか?」


「ううん……。

利益を得るために私を捕まえたのに、どうしてここまでしてくれるの?」



「悪いようにするわけないだろ。

かけらとレト王子は、未来を変えるために役立ちそうだからな。

皆が笑顔になる国に変えたい。

この情熱を一緒に盛り上げてもらうぜ」



「役に立てるのかな……。

セツナに言ったなかったけど、私は……この世界の人間じゃない。

他の世界から来たの。なぜこの世界に来たのか分からないけど」



いきなりこんな話をして変な人間だと思われるかもしれない。


怖くて手に汗が滲んできたけど、これだけは話しておきたかった。


グリーンホライズンとクレヴェンが平和を築いていくために……――





雲に隠れてぼんやりと見える夕陽から目を逸らして俯く。


セツナの表情がどうなっているのか、知る勇気が出なかったから。


まるで職場で嫌な事を言われた時に何も言い返せなかった頃の私みたい……。



「今更それがどうした?」



意外な言葉が返ってきて、顔を上げてセツナを見ると、先程と表情が変わってないように思えた。


寛いで隣に座っている姿と動じない眼差し。


これっぽっちも驚いているように見えなかった。



「えっ……?

セツナにとって変な事を言ってるのに……」



「勝手に決めつけるなよ。

何のメリットもないのに、オレ達に技術や料理を教えてくる奴がいるか?


助けられた恩だとしても、戦争をしている中で敵に知恵を与える人なんてそういない」



「もしかして、気付いていたの……?」



「世界は広いんだから、オレの知らない場所に住んでいる人だって存在するだろ」



「セツナは、私たちを敵だと思ってないんだね」



「ハハハッ、それはどうかな。

オレはクレヴェンの名前に傷がつくような事をしたくないだけだ」



「本当は……、私とレトを助けてくれただけなんでしょ?」



私にこんな事を聞かれると思っていなかったのか、目を見開いてすぐに答えを話さなかった。


灰色の雲から現れたオレンジ色の眩しい光に照らされた時、セツナは軽く溜息をついた。


そのあと、困ったように微笑んで私を見てくる。



「もしそれが本当だったら、国を守る者として大きな責任を背負わないといけないな」



その返事を聞いてから、心の中でモヤモヤしていたものがやっと晴れていくような感じがした。



最初から私とレトは助けられていたんだ……――




「ありがとう、セツナ。

情に満ちた熱い魂を持つ王子様」



「照れるようなことを言ってくれるな。

褒めても今日のご褒美はこれで終わりだぞ。

……でも、帰りに手を繋ぐくらいのおまけはしてやる」



「ちょっ、それは恥ずかしすぎるって……!」


「かけらを小屋に連れて行くためにするだけだ」



帰り道を歩いていると夕陽が沈み、人の顔がはっきり見えないほど辺りが暗くなっていく。


その時にセツナが手首を優しく握ってきて、まだデートをしている気分にさせてくる。


手のひらは重ねず、私をそっと引いてくれるだけ。



小屋に着くまで何も話さず、静かにセツナの体温を感じた。


この思い出は、誰にも話すことができないだろう。


きっと、セツナも……。



恋戦〜王子様たちに溺愛されて〜

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