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「何でひろのほうが俺のこと知ってんだよ、っていうか……負けたわ。」
僕は、目を開けて恒を見た。
恒は、笑ってるけど、目はちゃんと僕を見ていた。
「……僕は、守るために見てるから。
見てないと、僕のほうが崩れる。」
その瞬間、恒は僕の顔を見て、少しだけ動揺した顔を見せた。
ひろの笑顔が消えていた。
口元に力がなくて、目の奥は静かで、何も映していないみたいだった。
真顔。
感情を隠すための、無表情。
恒は、ペットボトルのキャップを開けた。
その音が、静かに響いた。
その言葉と顔が、恒の中に少しだけ残った。
ひろが俺を見ている理由が、ただの責任じゃないことに。
恒は、ペットボトルを持ったまま、僕の横顔をちらりと見た。
何も言わない。
でも、何かを考えている顔だった。
僕は、壁にもたれて、少しだけ息を吐いた。
「まぁ、好きなものって、勝手にできるものだと思ってるし。」
恒は、手を止めた。
「勝手に?」
「うん。気づいたら持ってる。気づいたらなくなってる。
守ろうとしても、消えるときは消える。」
恒は、何も言わず、ペットボトルをちゅっと吸った。
その音が、静かに落ちた。
「だから、今は何も持ってない。
でも、また勝手にできるかもしれない。」
恒は、うなずかなかった。
ただ、静かにその言葉を聞いていた。