TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

小噺集

一覧ページ

「小噺集」のメインビジュアル

小噺集

10 - 夜の光と揺れる温もり(🐟×🦊)

♥

44

2025年11月13日

シェアするシェアする
報告する

研究室の明かりが落ち、静かな夜が訪れていた。ツナっちは簡易ソファに横たわるくられの様子を見守る。呼吸はまだ浅く、微かに寝返りを打つ気配に肩をすくめながら、そっとブランケットの位置を整える。傍に置いた温かい白湯のカップに手を添え、時折湯気を見つめている。


くられの瞼がゆっくりと開き、かすかな声が漏れる。

「……ツナっち、まだ起きてるの……?」

ツナっちは小さく笑みを返し、穏やかに答えた。

「先生がちゃんと休むまで、俺も寝ませんからね」


くられは目を細め、微かに唇を動かす。

「そっか……ありがとう……」

息が浅く、声も力なく、普段の威勢はない。それでもわずかに微笑みを浮かべる仕草に、ツナっちは胸の奥が締め付けられるような思いを覚えた。


ツナっちは声を柔らかく、しかし確かな調子で促した。

「無茶しないって、約束してくださいね」


くられは肩をゆるりと揺らし、目を閉じたままかすかに吐息を漏らす。

「……善処します……」

言葉は曖昧で、確約ではない。けれど、くられらしい気負わない返事に思えた。


ツナっちはそっとブランケットを整え、くられの肩にかける。体温を感じながら、手のひらで背中を軽くさすった。寝返りを打つたびに、くられの肩がわずかに震える。それでも力なくも安堵の息を漏らす様子に、ツナっちは胸を撫で下ろした。


「無理しすぎたら、俺が黙ってませんからね……」

小さな声で呟くと、くられはかすかに微笑み、浅い息をつく。目はすぐに閉じられ、眠りに落ちていった。


ツナっちは隣のソファに腰を下ろし、同じ空気の中で静かに時間を過ごす。ブランケットに包まれたくられの呼吸のリズムを確かめ、時折そっと背中に手を添える。夜の静けさが深まるにつれ、二人だけの世界は穏やかに落ち着きを取り戻していった。


窓の外にはうっすらと夜の影が残り、遠くの街灯がぼんやりと光を落とす。ツナっちはくられの肩越しにその光を見つめ、心の中でそっと決意した。

――先生が倒れるほど打ち込むのはすごいけど、守れるのは俺しかいない。無理をさせない、ちゃんと見届けるんだ。


くられが眠るその傍らで、ツナっちは小さく息をつき、ブランケットをさらに整えた。

「おやすみなさい、先生」

その声が夜に溶ける。ランプの灯りはゆっくりと揺らめき、二人を包む静かな夜が、優しく流れていった。

この作品はいかがでしたか?

44

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚