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【今宵,妖魔と御稲荷は夢ヲ見る】

第参話:大空に舞いし梟



湿度の高い、生ぬるい風が頬を撫でる。その次に冷たい、涼しい風が吹き付ける。

梟の鳴き声がして、縁側へと出て上空を見上げた。雲ひとつ無い青空の遠くに小さな梟が見えた。

?「なんじゃ、?__か?」

地面に限りなく降下してから、宙を舞ってこちらに向かってくる。そんな、茶色い梟は蝶のようで美しかった。

?「久し振りだなぁ。どれ、手紙を寄越してみなさい」

?「誰からかのぉ?…おお!夏留土じゃあないか」

梟は頷き、茶色の眼で手紙を読むよう催促した。

?「…そうか。そんな恐ろしい妖魔がうろつき始めたか…」

?「__よ、夏留土に伝えておくれ。この妖魔はお前じゃ仕留められないかもしれん。たったの半日で村を潰すようじゃ、こいつはもしかすると…」


?「___かもしれない、とな。」

そう言うと、梟は飛び立ち夜の闇に溶け込んで行った。



火の燃えるにおいや音に釣られて、神社の裏に佇んでいる小さい小屋を覗いた。そこでは赤坂龍太郎さん…じゃぱぱさんが何かを作っていた。

るな「…」

まじまじと見つめていると声をかけられた。

じゃぱぱ「ごめんだけど、構えないよ」

るな「気付いてたんですねっ!?」

じゃぱぱ「まあね。今…めっちゃ忙しいんだよね」

釜戸に木炭を投げ込んだ。炎が大きく燃え上がって、ばちんと弾けた。

じゃぱぱ「玉鋼を作ってるんだけど…これたたら製鉄の一方法でけらおし法ってんだ!これ、昼夜問わず三日間…七十時間ぶっ通しでやらなきゃなんないんだ。」

るな「みっかぁぁぁ?!」

じゃぱぱ「常に変化し続ける火を見て、砂鉄とか木炭とかを入れて、不純物を取り出すんだ。」

じゃぱぱ「これだけは欠かせない。それ以外は、俺天才だから人より何倍も早く終わるんだ。今日でこれも終わるよ!」

るな「がんばってください…」

あまりの大変さに驚き、語彙が乱れた。

じゃぱぱ「今度詳しく説明してあげる。」

その言葉に少し嬉しくなって、飛び跳ねてしまった。



流れてくる煙と、鼻に流れ着く食欲を掻き立てる匂いに釣られ、台所にいる江渡さんの元へと駆け出した。

えとさんは、お昼ご飯を作ってくれていた。割烹着[カッポウギ]を身につけ、ざくざくと山菜を包丁で切っていた。

るな「何作ってるんですか?」

えと「お、るなちゃん!ふふ…なんだと思う? 」

るな「えーわかんないです」

えと「楽しみにしておきなっ!」

子供のような悪戯な顔を浮かべて、笑いかけてきた。

えと「じゃっぴのことだから、刀も二,三日で打ち終わるでしょう?こんなこと言うのもアレだけど、二度と会えなくなっちゃうかもしれないから美味しいもの食べさせてあげたいんだ…」

るな「そう、ですか」

えと「毎回、どぬくさんはこんな恐怖に立ち向かってるんだなって…ありがたみしか感じれなくなるんだよね」

えと「瀬織津姫がしてくれたように、誰かの命を守ってくれて…そのお陰で繋げる絆があって…」

えと「すごいなって。思う」

るな「わかります。尊敬します、とても」

えと「だよね、あんなド天然でも頼れるのが面白いよね(笑)」

るな「ですねっw」

えと「るなちゃんも人のこと言えないけどね(笑)」

るな「えっ?」

口を開け、驚く素振りを見せた。

すると、えとさんは吹き出して大笑いした。

えと「おもしろいなぁっ!!」

と、笑っていると背後で鍋が白い泡を吹き出した。

るな「うわぁぁ!えとさん!」

えと「あっやばい!!」




神社の横に流れる川を渡って少し山を登った所で、海のように深い深呼吸した。

鞘から刀身を抜き出し、前に構える。刃を高い青い空へ向けると、日光で淡い白色にほんのり輝く。

結った髪が動く度、揺れ動いて体に触れる。

ずざ、と草履が砂を掻く。小さく起きた砂埃で袴の裾に砂がへばりついた。


鞘に納め、その場に胡座を書いた。途端、

「おい、渡してきたぞ」

少し高い男の声が真後ろでした。

どぬく「御苦労だったね。ありがとう。」


どぬく「__うり。」



うり「いやーさ、遠いって!!めちゃ頑張って飛んで一日半だよ?!」

どぬく「ごめん(笑)」

うり「…__がそいつは___かもしれない。と、伝えるようにと言われた。」

うり「この前は冗談だったけれど…今回はそうはいかないかもな」

どぬく「わかってるよ」

どぬく「半日でそれなりの村が、姿を消した。杉山村と言ったかな。大きな豊かな村だったよ」

うり「行ったことがあるのか」

どぬく「まあね。それよりっ」

どぬく「たまには人間の姿に戻ってみてよー!」

うり「裸で御前はまずいだろう。」

どぬく「の時は服着てないんだね…」


うり。


姿を自在に操る事が出来る、人間だ。

だが、鳥にしかなれない。

善知鳥[ウトウ]秋梅[シュウメイ]という。

俺達は秋梅をうりと、呼んでいる。初めて会った時うりは俺が大事に育てた胡瓜[キュウリ]を盗んで食べた。

その時から"うり"と呼んでいる。


どぬく「そういえば!」

うり「んー?」

どぬく「そろそろ梅の実がなる時期だね!」

うり「だな!!待ち望んでいたんだよなぁ」

どぬく「明後日此処を出るけど、帰って来たら実がなってるかもね。」

うり「今回は遠いからなぁ、丁度なってるな。村まで1週間だろ、?」

どぬく「うーん…大変だな、」

うり「仕事だからな。俺はちょっと用事があるから行けないけど…」

どぬく「はぁ?!」

うり「どーどー!落ち着けって!!」

声を荒らげた時、遠くで"飯だ"と叫ぶ声がした。振り返るとえとさんとるなが迎えに来てくれていた。




風呂敷に荷物を詰め、鳥居の前で手を合わせた。

すると、

えと「はい、これ」

るな「えぇ!おいしそぉー!!」

筍の皮に包まれた、沢山のお握り。黒のような、緑のような海苔に巻かれ、米は白い輝きを放っていた。

どぬく「わー!助かる!」

えと「でしょう?…帰って来たら、お団子でも食べに行こうね」

るな「…頑張ります」

〈おおーい!!

どぬく「お!キタキタ」

じゃぱぱ「はぁ、はぁ、…るな、刀忘れてるぞ」

るな「げっ…すみません、ありがとうございます」

どぬく「あっぶなぁ…ま、行こっか」

るな「はい!」


えと「行ってらっしゃい…」

じゃぱぱ「行ってらっしゃい。」



るな「行ってきます!!」

どぬく「行ってきます」


鳥居をくぐり抜けると、正面から風が吹き付けてきた。髪を持ち上げて、そのまま消えた。

雲行きは怪しく、初夏の肌寒さがあった。

待ってろ、






紫雲生賀之大桃神____

[シウンセイガノダイトウシン]



第参話:大空に舞いし梟

[完]

【今宵,妖魔と御稲荷は夢ヲ見る】🦊👓

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コメント

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続きが気になりすぎて夜ねれんかも☆

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