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#転生
コシ
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耀聖(ようせい)
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『偽りの無能、真の覚醒〜転生皇女はすべてを奪い返す〜』
下町での賑やかで温かいお忍びデートを終えた、ある静かな夜のこと。
ガルディニア皇宮の奥深くにある、私のためだけに作られた『白銀と深紅の薔薇の私庭』は、いつも以上に幻想的な美しさに包まれていた。
夜空には満天の星々と、美しく輝く双子月が浮かび、その柔らかな光が咲き誇る薔薇の花びらを白銀色に濡らしている。世界を脅かした魔王も、その裏で糸を引いていた魔女も、そして私を裏切った前世の敗北者たちも、もうこの世界には誰一人として存在しない。
ここにあるのは、ただただ静かで、誰も私たちを傷つけることのない、本物の平和な夜だった。
「お兄様、リン。今夜は私のわがままで、こんな夜更けに集まっていただいてごめんなさいね」
庭園の中央に用意された白い大理石のテーブル。
そこに腰掛けるアルベルトお兄様と、その斜め後ろにそっと控える専属侍女のリンへ、私は愛おしさを込めて微笑みかけた。
「何を言うんだい、ローゼマリー。君の呼び出しなら、たとえ世界の果てにいたって一瞬で駆けつけるさ。……それにしても、今夜の君は、月光を浴びていつも以上に一段と神秘的で、吸い込まれそうなほどに美しいね。僕の胸が高鳴りすぎて、今すぐ君をこの腕の中に閉じ込めてしまいたいくらいだよ」
銀髪を月風に揺らしながら、お兄様はいつもの過保護全開な、けれど心の底からの愛が溢れる瞳で私を見つめてくる。
「ローゼマリー様、お茶の準備はいつでも整っておりますわ。今夜は、あなた様が下町でお気に召したあの串焼きのタレを再現した、特製の夜食スイーツもご用意いたしましたの」
リンもおっとりとした優しい笑顔を浮かべ、温かいハーブティーを私のカップへと丁寧に注いでくれた。
そんな二人の姿を見つめていると、私の胸の奥から、温かいものと一緒に、じわりと涙が込み上げてくるのを感じた。
私はそっと、ドレスの袖から二つの小さな、美しい白銀の箱を取り出して、テーブルの上へと並べた。
「ローゼマリー……? これは一体、何だい?」
「ふふ、お兄様、そしてリン。これまでの全ての戦いを終えた今だからこそ、私から二人に、どうしても贈りたいものがあったのですわ。……さあ、開けてみてちょうだい」
二人が不思議そうに顔を見合わせながら、そっと箱の蓋を開ける。
その中に収められていたのは、私が自身の本来の魔力――紫と黄金の絶対魔力を極限まで収縮させ、二人のために一から作り上げた『決して枯れない氷光の薔薇のブローチ』だった。
お兄様のものには彼の瞳と同じ極限の蒼い輝きが、リンのものには彼女の覚醒させた神聖な純白の光が、薔薇の結晶の奥で永久に美しく明滅している。
「これは……、なんて美しい魔導具なんだ。君の魔力の波長が、まるで生き物のように優しく息づいている……」
アルベルトお兄様が驚愕に目をみはり、宝物を扱うかのように愛おしそうにブローチを見つめる。リンもまた、いつもはおっとりとしたその瞳を大きく見開き、震える指先でその結晶に触れていた。
「お兄様、リン。……私はね、前世のバロア王国で『シャルロット』だった頃、本当に、息をするのも苦しいほどの暗闇の底にいましたの。魔法無能と罵られ、婚約者であったカイルや周囲の貴族たちに裏切られ、最後は誰からも愛されることなく、冷たい雨の中で泥水をすすって孤独に死んでいきましたわ……」
私の言葉に、お兄様とリンの表情が、切なさと痛ましさに引き締まる。
「生まれ変わって、このガルディニア帝国にローゼマリーとして生を受けたときも……私は心のどこかで、ずっと怯えていましたの。『またいつか、あの孤独な暗闇に突き落とされるのではないか』と。……でも、そんな私の凍りついた心を、その圧倒的なまでの過保護な愛で、真っ向から溶かしてくれたのは、お兄様、あなたでした」
「ローゼマリー……」
「そして、裏社会の孤独の中で生きていた私を信じ、影となり光となって、どんな時も私の側に寄り添い、笑顔でお茶を淹れ続けてくれたのは、リン、あなたよ」
私は流れる涙を隠すことなく、二人の温かい手を力強く、きつく握り締めた。
「二人がいたから、私は前世の絶望を乗り越えられた。二人がいたから、私は魔王や魔女という世界の理不尽な恐怖にすら、一切怯えずに立ち向かい、最強の皇女として覚醒することができたの。……このブローチは、私たちの魂の絆(ソウル・リンク)の証。たとえ何があろうとも、私のこの命と愛は、永久にあなたたちの側にあるという誓いですわ。……私と出会ってくれて、私を愛してくれて、本当に、本当にありがとう……っ」
私の涙ながらの、心からの感謝の吐露。
前世の悪役令嬢シャルロットとしての孤独な魂が、今、この二人の愛によって、文字通り完全に救われた瞬間だった。
「ローゼマリー……っ!」
アルベルトお兄様は、堪えきれなくなったように席を立ち、私の身体をその長い腕で強く、強く抱きしめてくれた。お兄様の広い胸に顔を埋めると、彼の身体もまた、愛おしさと感動で僅かに震えているのが分かった。
「君を傷つける過去なんて、僕がそのすべてを氷の底へ沈めてみせる。君が僕を兄にしてくれた。君が僕に、命を懸けて守りたいと思う本当の『光』をくれたんだ。ありがとう、ローゼマリー。僕のこの全魔力も、この命も、永遠に君だけのものだよ」
「ローゼマリー様……」
リンもまた、私の前に静かに跪き、涙を浮かべながらも、世界で一番誇らしげな、そして美しい笑顔を浮かべて私の手をその頬に寄せた。
「元暗殺者であった私の薄汚れた手に、人を守るための神聖な光をくれたのは、ローゼマリー様、あなた様です。あなた様が私の太陽。たとえ世界が滅びようとも、私のこの刃と忠誠は、永久にローゼマリー様のためだけに振るわれますわ。……一生、あなた様のお側でお茶を淹れさせてくださいね」
月光が優しく降り注ぐ薔薇の庭園で、私たちは互いの絆を改めて強く誓い合い、いつまでも、いつまでも温かい抱擁を交わし合うのだった。
そこにはもう、涙を流す悪役令嬢などどこにもいない。あるのは、世界で一番愛され、世界で一番幸せな、一人の可憐な皇女の姿だけだった。
◇
翌日。ガルディニア帝国の皇宮大広場は、歴史上類を見ないほどの、熱狂的な歓声と祝福の嵐に包まれていた。
「ローゼマリー皇女殿下ーーッ! 万歳ーーッ!」
「帝国の誇る最高の毒薔薇に、永遠の栄光あれーーッ!」
魔王と魔女を滅ぼし、世界に本物の平和をもたらした私たちの功績を称えるため、皇帝陛下が直々に開催した『世界平和感謝祭』。
広場を埋め尽くす何十万、何百万もの国民たちが、手にした薔薇の花びらを一斉に空へと放ち、帝都の空は赤と白、そして黄金の花吹雪で美しく染め上げられていた。
皇宮の特設バルコニー。
私は、先日のデートでお兄様が丸ごと買い占めてくれたドレスの中から、最高に美しく仕立てられた、純白のシルクに紫と黄金の薔薇が刺繍された『最強の皇女のための正礼装』を纏って立っていた。髪はリンの手によって完璧に結い上げられ、胸元には、昨夜私が二人に贈ったものとお揃いの、蒼と白の光を放つ薔薇の結晶が誇らしげに輝いている。
「さあ、行こうか、ローゼマリー。世界は君のその美しさを、君のその圧倒的な強さを待っている」
隣に立つアルベルトお兄様は、最高位の公爵の礼服を完璧に着こなし、私に優しく右腕を差し出してきた。そのブローチを胸に光らせたお兄様の美貌は、世界中の平民や貴族たちが一目で恋に落ちるほどに輝いている。
「ええ、お兄様。どこまでも一緒に行きましょう」
私が微笑んでお兄様の腕に手を絡めると、私たちの後ろから、同じく胸にブローチをつけたリンが、いつものおっとりとした完璧な笑顔で静かに従ってきた。
私たちが一歩、バルコニーの最前線へと歩み出た瞬間、地鳴りをも遥かに凌駕する、割れんばかりの大歓声が世界中から巻き起こった。
私は集まった愛おしい人々、そしてこの美しいガルディニア帝国の広大な青空を見渡し、背後に、本来の『紫と黄金の十六枚の薔薇の翼』を、祝福の光の粒子と共にまばゆく顕現させた。
その圧倒的で、神聖で、どこまでも美しい姿に、集まった人々は驚愕のあまり息を呑み、次の瞬間には全員が、深い尊敬と愛を込めて一斉にその場に膝をついて頭を垂れた。
前世の世界は、私を無能と罵り、すべてを裏切った。
けれど、現代の世界は、私を最強と称え、これ以上ないほどの愛で私を包み込んでくれる。
「カイル、エレン、そして私を虐げたバロア王国の有象無象ども。
……あなたたちが泥水をすすって永遠に落ちぶれていく暗闇の底から、特等席で指をくわえて見てご覧なさい?
これが、あなたたちが無能と切り捨てたシャルロットの……、いいえ、現代の最強皇女ローゼマリーの、
本当の『終わらない幸福(ハッピーエンド)』よ」
私は心の中で、かつての過去の遺物たちへ向けて、最高に気高き、そして冷酷で美しい完全勝利の冷笑を浮かべた。
そして、隣で私の手を強く、愛おしそうに握り締めてくれるアルベルトお兄様と、後ろで優しく微笑んでくれているリンへと振り返り、
世界で一番、眩くて幸せな満面の笑みを咲かせるのだった。
咲き誇る薔薇の香りと、大切な家族の温もりに包まれて。
最強皇女ローゼマリーの、愛と幸福に満ち溢れた、永遠に終わらない、
最高に甘美な日常の幕が、今ここに美しく下りるのだった。
(――第2部・完結――)
これにて、『偽りの無能、真の覚醒〜転生皇女はすべてを奪い返す〜』は
完全完結といたします。
最後までご視聴ありがとうございました。
コメント
4件
読み終わった…やっと、!!!最高!!!るーちゃんが作るのってなんで神作なんだろ、???
最終回、完走おめでとうございます…!泣きました。ローゼマリーがお兄様とリンに感謝を伝える場面、涙腺崩壊しましたよ。前世の孤独が全部報われるラスト、本当に最高でした。紫と黄金の翼を広げるシーン、脳内でめっちゃ映えてました。最後まで幸せ全開で締めてくれてありがとうございます!お疲れ様でした🔥