「新海君……!おはよう」柊さんが病室に入ってきて言う。「おはよう、柊さん」僕は笑顔で返した。ふと彼女の頭を見ると桜の花びらが付いていた「桜……?」僕が聞くと彼女は少し照れた様子で答える「うん、病室の窓から見えるんだよ……すごく綺麗」
確かに病室からは外が見えるようになっていたそしてそこには満開の桜があった。「そっか……」僕はその景色に見惚れていた「……新海君?どうかした?」柊さんが心配そうに聞いてくる「あぁ……いや、なんでもないよ」そう言ってまた窓の外を眺めるすると突然僕のお腹が鳴る「……あ」思わず声が出るそれを聞いた柊さんは笑いながら言う「新海君もう外出しても大丈夫だったかな?」「うん、大丈夫だけど……」僕は少し戸惑いながら答える。すると柊は嬉しそうに「じゃあ……一緒にお花見に行かない?」「えっ?」僕は思わず聞き返す 柊さんは笑顔のまま話を続ける「せっかく天気も良いし……それに桜も満開だよ?」
確かにこんな機会は滅多にないだろうなと思い承諾した。こうして僕達はお花見に行く事になった。病院の近くにある公園に行くと既に多くの人がいて賑わっていた「わぁ……」柊さんが感嘆の声を漏らすその視線の先には一面に咲き誇る桜の花があった「……綺麗だね」僕が呟くと彼女もコクリと頷き言った。うん……やっぱり桜はいいな……学校のあの桜を思い出すな……僕は少し感傷的な気持ちになった。すると柊さんが「新海君?どうかした?」と聞いてきたので慌てて首を振る「ううん、なんでもないよ」そしてそのまま柊さんは僕の車椅子を桜の木の下まで押した「はい、ここでいいかな?新海君」そう言って柊さんは僕の顔を見る「……うん、ありがとう」僕は素直に感謝の言葉を口にした。
「じゃあ……早速お弁当食べようか」そう言って彼女は鞄から弁当箱を取り出すそして蓋を開けるとそこには美味しそうな料理が所狭しと並んでいた。「すごいね!これ全部作ったの?」僕が聞くと彼女は少し照れながら言う「う、うん……」そしてそのまま僕の口元に料理を運ぶ「はい……どうぞ……!あーんってやつ……してみたいなって思って……その……」「え……?」僕は一瞬戸惑ったがすぐに理解した。そしてそのまま口を開けるすると柊さんの顔が見る見るうちに赤くなってきた「……あ、あーん」そう言って彼女は僕に食べさせた「どう……?美味しい?」彼女が聞くので素直に感想を言った「うん、すごくおいしいよ!」それを聞いた柊さんは嬉しそうに笑う「良かった!いっぱいあるからどんどん食べてね……!」それから僕達は2人で仲良くお弁当を食べた。
しばらく経ってお腹も膨れてきた頃、ふと柊さんが言った。「ねぇ……新海君?これからは私が新海君を支えるから……何でも言ってね」「うん、ありがとう。じゃあ何かあったら遠慮なく頼らせてもらうよ」そう言うと彼女はニッコリと笑った「もちろん……!いつでも頼ってね!」
柊さんはそう言って僕の胸に顔を埋めた。僕は無くなった腕を悔やんだ。もう、前みたいに柊さんを抱きしめられない……でも、それでも僕は柊さんがいればそれで良いと思った。
「……新海君?どうしたの?」柊さんは不思議そうに言う「あぁ……いや、なんでもないよ」そう言って僕は彼女から目線をそらした。「嘘つかなくていいよ?」彼女は優しく言った。「無理しないで……?私が新海君の為ならなんでもしてあげるから……だから遠慮なんてせずに言ってね」
あぁ……やっぱり柊さんは優しいな……僕は彼女の方を見る「うん、ありがとう……」僕は笑顔を作って言う。しかし僕の目には涙が溢れていた「……泣かないで?私はずっと側にいるから……」そう言って彼女は僕を抱きしめる。僕は静かに涙を零す。「……ごめんね」僕は彼女に謝る「いいんだよ……私こそ勝手に抱きしめちゃってごめんね」柊さんは申し訳なさそうな声で言った。そして僕の涙を拭ってくれた。それからしばらくの間、僕達はお互い無言だったが不思議と気まずさは無かったむしろその沈黙が心地よかったほどだこうして2人で桜を見ていられるそれだけで幸せだった
「新海君……!そろそろ帰ろっか?」柊さんが言うので僕も帰ろうかなと思い頷いた。その後僕達は病院へ戻った「じゃあ、またね」柊さんは笑顔で僕に手を振った。僕も手を振って答えるそして病室に戻ると僕はベットに横になって窓の外を見る。そこには満開の桜が風に吹かれて揺れていた
「……綺麗だな……」そう呟くと突然睡魔に襲われた。どうやらまだ疲れが残っているらしい……でもまぁいいかと思いそのまま目を閉じた。するとすぐに意識が遠のき深い眠りへと落ちていった それから数日後、医者から「義手をつけてみるかい?」と言われた僕は迷わずお願いしたそして次の日、ついに完成した
「はぁ……すごい」僕は自分の右腕を見る。感覚はないが本物の腕のように動かせた。左腕はダメだった。切断点が高すぎて義手を制作できないとのことだった。「うん、問題なく動くみたいだね。良かったよ」医師が言う。「ありがとうございます……!」僕は感謝の言葉を述べて病院を出たそしてそのまま柊さんに会いに行った。
病室に入るとそこには嬉しそうにしている柊さんがいた「あ……!新海君……!」僕に気づくと彼女は笑顔になる。僕も笑顔で返した「どう?調子は?」僕が聞くと彼女は答える「……すごくいいよ」そう言って笑う彼女の腕を見ると確かに前より細くなっている気がした。
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