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「えっと、加賀美先生が急な教育実習が入ったということで代理になりました…」
「うん、知ってる。あたし先生とメールもしてるんだ。それより先生、口調が堅いよ?ママがいない時は普通に年下に話すみたいにしていいからね。ゆる~くいこ?」
沙樹さんもタメ口なのか…?
まぁ気楽でいいか。
「わかった。じゃあ遠慮なくそうさせてもらうね?えっと、いつもは学校の教科書を使ってるんだって?」
「いいね~、先生慣れるのが早い!」
「うちにも沙樹さんと同じくらいの妹がいるからね」
「あ、沙樹さん、てのも堅いな~」
「でも呼び捨てはさすがに…じゃあ沙樹ちゃん、くらいでどう?」
「うん、それで手を打とう!」
「はい。それで今はどの辺りをやってたの?」
「え~と、今日やったのはこのページ」
「ふんふん。わからないところはある?」
「ありません!」
「え?じゃあここより前でわからないところを補習する感じ?」
「全部わかってます!」
どういうことだ?教科書を使って家庭教師をするのにわからないところがない?
「じゃあ先のところの予習をするの?」
「予習はしたことないな~」
「ちょっと待って?いつも何を教えてもらってるの?」
「う~ん…流行りの服とかメイクとか?」
そういうことか…つまり加賀美さんは勉強を教えていない…?それを報告されたら流石に家庭教師はいらない、となるかも。
「どうして家庭教師を雇ってるの?」
「ママを安心させるためかな?」
そういう使い方もあるのか。
「なるほど。じゃあ勉強はいらないってことか。でもわかってるってどれくらい?」
「あ、疑ってる?じゃあね…」
沙樹ちゃんは机の引き出しから数枚の紙を出して見せてくる。
前回の中間テストか?数学だけでなく主要五教科は全て90点以上だった。
「こりゃすごいな。本当に頭いいんだ」
「えへへ。大学も指定校推薦で行ける学校から選ぶつもりだから、先生は気楽に来てくれればいいからね」
さてどうしようか。とはいっても何もしないってのもな…
「自分はファッションとかは教えられないし…他に何か知りたいことある?といっても音楽とか…選択授業とかもわかるものならって感じだけど」
「なんでもいいの!?」
「わ、わかる範囲なら、ね?」
「じゃあ保健体育は??」
「保健体育?なんで?スポーツドクターとか目指すの?そういう専門の内容も、申し訳ないけど教科書に書いてあること以外はわからないな」
「違うよ、先生」
「え?保健体育って…そもそもどんな内容があるんだっけ?」
「もう先生ったら~わからないふりですかぁ?」
いや、保健体育なんてそもそもそんなに記憶に残って…いや、まさか…?
「もしかして…?」
「おとことおんな、ですよ!」
「ふ~ん…じゃあ教科書ある?どうしてもっていうならいいけど」
努めて平静を装って返す。
初日から取り乱すのも流されるのもなしだ。
自分は誰かの考え、発言は出来るだけ拒否しないようにしたいと日頃から思っている。
「教科書に書いてないことが知りたいな~」
いやもうだめだろ!
「ちょっとちょっと、沙樹ちゃん、あまりからかわないでよ(笑)家庭教師はそういうのは教えないんだよ」
「でもそういうビデオって結構あるんでしょ?」