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『---、-きなさい。世界を-----。』



目を覚ますとそこは見慣れた天井。

古びた天井は何度も続く雨のせいで一部分シミが出来てしまっている。



「まだわからないんだ…」



少し前から見続ける夢に僕は頭を悩まされていた。誰かが僕に向かって言う言葉は日を追うごとに聞き取れるようになってはいるものの、その全貌は未だに分からないままだ。


まだ開ききっていない目を擦りながらベッドから起き上がると、部屋の扉が勢いよく開いた。



「おはよう、セラ!」


「おはよう、ノエル」


「はやく着替えて!またマザーに怒られちゃう!」



僕のベッドに腰掛けて足をばたつかせる。茶色いふわふわした癖毛が跳ねて昨日見た子犬が思い浮かぶ。


僕を置いて食堂に行けばいいのにノエルは必ず迎えに来る。僕のせいで何度もマザーに叱られているのに。



「さ、行きましょ!」



ぐい、と袖を引っ張られ、足がもつれる。 それでもノエルは構わず前へと進んでいく。


子犬を散歩させてるみたいだなあ、と思ったけれどノエルが拗ねる姿が目に浮かんでそれは言わないことにした。



「さあ、2人もはやく席について!」



既に食堂には他の子達も集まっていて僕らが1番最後だった。マザーの手を叩く音に急かされ、僕らも急いで席に着く。



「では、祈りを捧げましょう」



目を瞑り、両手を合わせる。テーブルに並べられたパンと野菜スープの匂いが、脳より先に胃を目覚めさせる。



「恵に感謝を」


「恵に感謝を!」全員の声がピタリと重なった。





孤児院に来て何年が経ったのか。

気づいたらココに居て、”セラ”という名前はずっと前にマザーにつけてもらったものだ。


明日、僕は14歳になる。もちろん、本当の誕生日じゃない。僕がここにやってきた日が誕生日として使われているらしい。



(今日は何を読もう。)



この歳になって文章もだいたい読めるようになってきた。いつか孤児院を出る歳までにある程度の読み書きはできていた方がいい。

難しい言葉 がズラリと並んだ本棚をじっくりと見つめ、1冊の分厚い本を取り出す。

何年も読まれていなかったのだろう、”五神獣と五国の歴史”と書かれた赤い表紙は埃まみれだ。


机にその本を置き、ページをめくる。ページをめくる度に埃が舞い、咳が出た。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


この世界が誕生した時、五の神獣も共に誕生した。


神獣はそれぞれの属性を司る存在となり、五人の人間と契約を結び力を分け与えた。

五人の人間は力を持つ者として地を治め、それぞれ国を創り上げた。


中心に位置する炎の国”リヴァルト”

南部に位置する大地の国”セレフィナ

北部に位置する風の国”フェンディル

西部に位置する水の国”ナギエル

東部に位置する闇の国”ノクト


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「王のみが神獣と契約を交わし、力を持つことが出来る、かあ」



色あせたページを指でなぞりながら、ゆっくりと読み上げていく。


神獣が伝説の存在ではなく、実在するのかどうか僕は知らない。存在していたとしても、きっと会うのは至難の業だろう。



「セラ!マザーが呼んでるよ!」



突然の大声に思わず肩が跳ねた。



「驚かさないでよ」


「えへへ、ごめんね!」



歯を見せて無邪気に笑うその顔に思わず僕も笑みがこぼれた。


未完成な世界と僕

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