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「マザー、用って何?」


「あぁセラ!買い物に行ってきて欲しいの!」




お団子のように束ねられていたマザーの髪の毛はいつの間にかボサボサになっている。その原因であろう赤子はマザーに抱かれ、うとうとし始めているところだった。



「今日は何を買うの?」


「えぇ〜っと、野菜の種でしょ、それから…新しい布もいるわね!」


「うん、わかった。お金はいつものところ?」


「ええ、助かるわ。いつもありがとう 」



マザーの眼鏡に陽の光が当たりキラリと光る。



「いつでも任せてよ」


「あら!頼りになるお兄さんだこと」



頬がきゅっとあがり、目が細くなる。彼女の笑顔は柔らかく、暖かくて少し照れくさい。






「あとはここだけ」



”雑貨屋”とでかでかと書かれた木製の看板の前で立ち止まる。


何種類もの野菜の種が詰まった小袋を小脇に抱え、ゆっくりと大きな扉を開ける。


ギギッ、とドアが軋む音とチリンチリンというベルの音が店に響いた。



「おお、よく来たな」



顔馴染みの店主が新聞を読んでいた手を止め、こっちを向く。



「今日は布を買いに来たんだ。安くて丈夫な布はある?」


「ああ、あるさ。ちょいと待ってな」



老眼鏡をクイッと上に持ち上げ、新聞を放ると「よっこらしょ、」と言いながら立ち上がり、カウンターの奥へと引っ込んでしまう。


少しかかるだろうか、と僕は周辺を見渡した。


雑貨屋はいい。来る度、自国の物や他国の物、新しい物、古い物までワクワクするものが揃っている。


自国の物は亀をモチーフにした物が多く売られている。


きっとここが大地の国”セレフィナ”であり、亀の神獣”玄武げんぶ”の加護を受けているからだろう。



「なんだ、気に入るもんでもあったのか」



店主がカウンターに大量の布を置くと、カウンターが少し揺れた。



「ねえ、神獣に会ったことある?」


「無いね」


布の枚数を数えながらキッパリとそう告げられる。 僕の何倍も生きてる人ならもしかするんじゃないか、なんて思っていたが期待もあっけなく裏切られてしまった。



「俺は神獣に興味が無いだけだが、興味があるなら祭りに行ってみるといい」


「祭り?」


「ああ、そうだ。国の中心部でな。国の王が新しくなるだろう。それの契約をするんだとさ、まあただの儀式的なものだろうがな。布が6枚で銅貨5枚だ、後はオマケだよ」



ズボンのポケットから急いで硬貨を取り出すと銅貨を1枚、2枚と数えながらトレーの上に置いていく。



「よし、ちょうどだな」



僕が持っていた大きめの肩掛けカバンを渡すと彼は布にシワができないようにひとつずつ丁寧に丸め、カバンの中にしまっていく。



「どうして祭りに行かないの?」





「……馬鹿らしいじゃないか」



彼の表情は曇り、眉間にはシワがよっていた。



「本当に神獣なるものが存在するならこの馬鹿げた世界を変えられると思わないか」



いつの間にか、買った布は全部カバンに詰め込まれ、大きいはずなのに布が溢れ出しそうだ。



「祭りは1週間後だそうだ、中心部に行くまでには馬車で3日かかる。行くなら急いだ方がいいぞ」



店主は椅子に腰掛けると新聞を持ち、落ちてくる老眼鏡をくいっと持ち上げた。



「ありがとう」



重くなったカバンを肩にかけ僕は店を後にした。

未完成な世界と僕

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