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<瞳>
声とともに私の前にRyoさんの背中が見え、その先にいるはずの松本ふみ子は走って逃げて行った。
ただ、その逃げていくとき松本ふみ子は驚いたような表情をしていたが、咄嗟のことだからびっくりしただけなのかもしれない。
私だって、まさか松本ふみ子があんなことをするなんて思っていなかった。
助かった。
だけど、どうしてRyoさんが?
「ありがとう」
疑問もあるけど、それ以上に腰が抜けてよろけてしまった。
「大丈夫ですか?」
そう言って支えてくれた。
「ちょうどこの辺りに来る用事があって、先日言っていた食事でも誘おうと思ってきてみたんです。ちょとだけ待って会えなければ帰ろうと思っていたんですが、よかった」
「そうなんですね、私は運が良かったんだ」
「あの人は知ってる人だったんですか?」
「どうだろう」
知っていると言えば知ってるし、知らないと言えば知らないから曖昧な返事になる。
松本ふみ子は凌太のストーカーだったんだ。
Ryoに甘えすぎるのはよくないがまだ足が言うことを聞かない。
「車で送ります。僕につかまってください」
そう言って私の体を支えてくれるが、宇座のこともあって凌太以外の”男性“に警戒心が湧く。
「少しここで休めば」一人で帰れると言おうとした時男性がこちらに走ってきた。
思わず
「凌太」と名前を呼んだらRyoさんが「兄さん」と呼んだ。
「瞳、大丈夫か?松本ふみ子に何をされた?」
そう言いながらRyoさんから私を引き離すとそのまま抱きしめられた。
「それで何故、ここに亮二が?」
「Ryoさんに助けてもらったの」
「りょう?」
「今、仕事を一緒にしているの」
この状況で説明するのは難しいし、人が集まってきそうだから早く場所を移動したかった。
「Ryoさん今日はありがとう、改めてお礼をします。とりあえず、この場所から移動しよう」
そう言うと凌太は「そうだな」と言って私の腰を強く抱き寄せた。
「俺からも礼を言う。あとで話を聞くかもしれない」
少し強張った表情で話す凌太に対して、Ryoさんは微笑みながら「お礼には及びませんよ、奥山さんが無事で良かったです。ぼくはここで」と言うと車に戻って行った。
その姿を見送る凌太は今まで見たことのないほど不快な表情をしていた。