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#などなど
유리
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「……両片思い、長かったね…」
研磨のその一言で
食堂の空気が、ぴたりと止まった。
「…………は?」
最初に固まったのは日向だった。
「え、両片思い?」
「え?」
五色もきょとんとする。
菅原は数秒沈黙してから、
「……あぁ〜……」
全部察した顔をした。
澤村は頭を抱えた。
「マジかぁ……」
「なんで皆そんな反応なの!?」
及川だけが一人で騒いでいる。
「え!? 待って!? 俺が飛雄好きなのは周知の事実だけど!?」
「そういう問題じゃねぇんだよ」
影山が涙声のまま低く言った。
でも全然迫力がない。
目真っ赤だし、涙止まってないし、鼻までちょっと赤い。
日向が思わず指差した。
「影山がデレてる……」
「レアすぎるっす……」
「写真撮る?」
「殺す」
涙声だった。
怖くない。
及川はまだ混乱していた。
「え、待って」
本気で分かってない顔をしている。
「飛雄って俺のこと嫌いじゃなかったの?」
「は?」
影山の眉が寄る。
「だっていつも冷たいし!? 避けるし!? 暴言吐くし!?」
「お前がうざいからだろ」
「ほらぁ!!」
「でも嫌いなら六百年も隣いねぇだろ」
菅原の一言で、及川が止まった。
影山も止まる。
「……あ」
及川が固まる。
日向がニヤニヤし始めた。
「えっ魔王様今気づいた?」
「うわ鈍」
「研磨さん以下っすよ」
「俺と比べるの失礼」
「研磨も大概だろ」
騒がしい。
なのに。
影山だけは黙っていた。
涙が止まらない。
きっと、もう隠せないから。
「……だって」
ぽつり。
小さい声。
全員が静かになる。
「……おれ」
影山は俯いたまま言う。
「及川さんに、嫌われたく……なくて」
及川の呼吸が止まる。
「……は」
「だって、お前」
涙で声がぐちゃぐちゃだった。
「誰にでも優しいし……誰でも拾うし……」
「いや誰でもじゃ――」
「おれだけじゃ、ないから……」
そこで言葉が詰まる。
悔しそうに唇を噛む。
「だから、嫌われたら終わるって……」
六百年。
ずっと。
隣にいるのが当たり前だった。
でも。
当たり前じゃない。
及川徹は気まぐれだ。
面白いものが好きで、飽きたら離れる。
――そう思っていた。
「……っ、でも」
影山はぐしゃぐしゃの顔のまま、及川を見た。
「おれのこと、ちゃんと見てたって……」
その目が、また潤む。
「……そんなの、好きになるだろ……」
静寂。
完全なる静寂。
日向が口を押さえた。
「うわ」
「うわぁ……」
五色まで顔を覆っている。
「純愛じゃん……」
菅原がぼそっと呟く。
及川だけが、固まっていた。
数秒。
十数秒。
完全停止。
そして。
「………………飛雄」
声が震えていた。
「それ、今言う?」
「知らねぇ……」
「俺あと三百年くらい引きずるよ!?」
「重」
研磨が真顔で言った。
でも及川はもう聞いていない。
次の瞬間。
影山の顔を両手で包み込んだ。
「飛雄」
「……ん」
「好き」
「……ぅ」
「大好き」
「分かったから……」
影山の顔が真っ赤になる。
及川は止まらない。
「え、待って無理、可愛い」
「黙れ……」
「俺の飛雄可愛すぎる」
「及川さんのじゃねぇよボケ……」
「俺の」
「はぁ!?」
「違うの!?」
ぎゃあぎゃあ。
でも。
影山は振り払わなかった。
むしろ。
少しだけ、及川の手に擦り寄った。
その瞬間。
「「「うわぁ……」」」
周囲の声が綺麗に揃った。
「飛雄!?!?」
及川が叫ぶ。
「今寄った!? 寄ったよね!?!?」
「うるせぇ……」
でも耳まで真っ赤だった。
及川は数秒固まって。
その後。
ふらり、と後ろへ下がった。
「及川さん?」
「……無理」
顔を覆う。
「好きすぎて死ぬ」
「死なねぇだろ不老不死」
影山が即座に返した。
食い気味だった。
日向が爆笑する。
「通常運転戻ってんじゃん!!」
「よかった〜!」
五色も笑う。
菅原は穏やかに目を細めた。
「……よかったなぁ、影山」
その声に。
影山は少しだけ目を伏せる。
それから。
本当に小さく。
「……ん」
とだけ返した。
でも。
その顔は。
六百年の中で、一番柔らかかった。
コメント
1件
うわあ……やっと、やっとだね! 両片思い、長かった……って研磨の一言がもう全てを物語ってて、涙声の影山と混乱しきりの及川が本当に愛おしかった。影山の「嫌われたくなくて」って本音がぐちゃぐちゃに溢れるシーン、胸がぎゅっとなったよ。六百年の隣が当たり前じゃなかったんだって気づけて本当によかった。ラストの擦り寄り、最高の瞬間だった……。