二人は再び歩き始めた。
空気はひんやりと冷たく、星々の光が弱々しく輝いていたが、その光はどこか希望を感じさせるものだった。
その時、森の奥から不意にかすかな音が聞こえてきた。
…足音だ。エリオスは一瞬緊張し、立ち止まった。
アルノスも気配に気づき、すぐに警戒の姿勢を取る。
「誰かがいる…」
エリオスは、心臓が高鳴るのを感じながら、周囲を見渡した。
森の木々の陰に、複数の影が動いているのがわかった。
敵だ――ダリオスの手先だろうか。
「エリオス、気をつけろ。奴らはお前を狙っている」
アルノスは低く言い、鋭く周囲を見回した。
すると、突如として闇の中から複数の黒い装甲を纏った兵士たちが現れた。
彼らは一斉にエリオスとアルノスを囲むように動き、無言で武器を構えた。
「やっぱり来たか…!」
アルノスはすかさず手元の装置を操作し、機械の腕から光の刃を展開した。
エリオスも境界石を手に構えたが、まだその力を完全に制御できているわけではない。彼は緊張と恐怖で動けずにいた。
「僕は…どうすれば…」
「心を静めろ、エリオス。お前の力はまだ眠っているが、感じ取れるはずだ。自分を信じろ」
アルノスの冷静な声に、エリオスは深呼吸をした。
心を落ち着かせると、手の中の境界石がかすかに光を放ち始めた。
その光は、彼の体の中に温かな感覚を広げていく。力が目覚めつつあるのだ。
敵兵たちが一斉に襲いかかってきた瞬間、エリオスは直感的に手を前にかざした。
すると、境界石が激しく輝き、彼の周囲に光の壁が広がった。敵の攻撃はその壁によって防がれ、弾き返された。
「今だ、エリオス!」
アルノスが叫ぶ。エリオスは震えながらも、その力をさらに解放しようと心の中で呼びかけた。
すると、光の壁が一気に膨張し、敵兵たちを包み込むように広がった。
そして、次の瞬間、光は一瞬にして収束し、敵兵たちを弾き飛ばした。
「…やったのか…?」
エリオスは信じられない気持ちで手を見つめた。
今、自分が放った力がどれほどのものなのか、まだ理解しきれていなかった。
だが確かに、彼はその力を使ったのだ。
アルノスは微笑んで頷いた。
「お前には、その力があるんだ。だが、これで終わりではない。次はもっと強力な敵が現れる。覚悟はいいか?」
エリオスは静かに頷いた。恐怖はまだ完全に消え去ってはいなかったが、自分が選ばれた理由を少しずつ理解し始めていた。
「行こう、アルノスさん」
二人は再び森の奥へと足を進めた。
彼らを待ち受ける運命はまだ未知数だったが、エリオスの中には少しずつ確信が芽生えていた。
彼は、世界の境界を守るための戦いに足を踏み入れつつあった。
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