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『クラスの陰キャ男子は”元”不良でした。』
Episode.13
ぷちぷち→👀
ぽん太→🐤
いむ→🐾
ひなこ→🎀
のあ→🍪
-作者より-
今回は死に関わる内容なので、地雷な方は引き返すことをお勧めします。
もしかしたらセンシティブ入るかも………
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side:百石乃愛 -momoishi noa
数年前、私には好きな人が居た。
「あっ、のあさん!おはよ~っ!」
🍪『おはようございます、じゃぱぱさん!』
彩風沙葉。
私と同い年で、重度の喘息持ち。
私と彼は昔から家族ぐるみで仲が良かった。つまり、幼馴染みというヤツである。
「いつもごめんね、俺の我が儘に付き合わせちゃって……」
そんな私が、なぜ毎日のように彼の病 室に来ているのか。
理由を簡潔に言えば、「彼に外のことを話すため」だ。
彼は体も弱く、手足に力がかかりにくいことも多い。 その為に、生まれてから一度も外に出たことが無いのである。
「ねぇのあさん、 今日はどんな話?✨」
外の世界を歩いたことも無く、目にすることすら難しい彼にとって、外から来た私のような人間からはよく話を聞きたがる。
言い方が悪いかもしれないが、正直危機感が無さすぎてほぼ犬である。
🍪『ふふっ‥
そんなに焦らなくても、私も話も逃げないので安心して下さい。』
「だぁって~‥っ、!」
──その日も、いつも通り私の1日について話した。
どれだけ下らない内容でも、ずっと瞳の中をキラキラと輝かせて笑ったあの人の顔が、忘れられなかった。
──────────────
🍪『それで……あっ、もうこんな時間‥』
じゃぱぱさんと過ごす時間はやけに短く感じてしまって、彼との別れを、毎回寂しく感じる。
「あ、ホントだ。」
「………じゃ、また明日。」
少しだけ、寂しそうな顔をしていた。
まるで、私に帰らないでほしいと言うような。
「…ねぇ、のあさん。」
🍪『………?どうしたんですか?』
病室の扉に向かって歩き、引戸の取っ手に手を掛ける。
扉を開けようとした瞬間、じゃぱぱさんに引き留められた。
「………いや、なんでもないよ。」
「…”ばいばい”、のあさん。(にこっ」
どうして、そんなに悲しい顔をするのだろう。
少しだけ感じた違和感の理由は、明日になってようやくわかった。
──────────────
🍪『え、ッ‥?(震』
「ですから‥彩風さんは今朝、」
“亡くなられたんです”。
それを聞いた瞬間に、全てが結びついた。
あのとき、じゃぱぱさんが「ばいばい」と言ったのは……
🍪(自分が死ぬのを、分かってた、っ‥?)
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嫌な考えが頭を巡ってゆく。
このまま放っておいたら「死ぬ」。
たぶん、じゃぱぱさんは‥そのことを分かっていて手術を受けなかった。
🍪(どうして、ッ…)
いくつか答えのパターンはあるけれど、一番有力なのは……
🍪(“既に手術をしていた”、?)
治らなかった。
それは間接的に、今の医療技術でも治せない病気だったことを表している。
「病弱」、「体が弱い」。
彼がよく自分の体調状態に用いていた表現だ。
そんなワケないのに。
ホントは、自分が一番苦しかったのに。
それに気付いてしまって、心臓が止まりそうになった。
心拍数がどんどん上がるのが、手を当てなくても分かる。
看護師さんの声も、周りの騒音も。何も聞こえない。
心臓がドクドクと速く速く鳴って、呼吸がしづらくなった。
痛い。息が出来ない。
………くるしい。
──────────────
🍪「なん、で‥ッ。」
誰もいない、1人きりの病室の中で、ぽろぽろと涙を流しながらつぶやく。
つい口に出てきたその一言は、誰もいないこの空間に飲み込まれて、すぐに消えていった。
──まるで、 彼の言葉のように。
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side:彩風沙葉 -ayakaze syaha
『もう助からない。』
それは、もう何年も前から分かっていた。
3年前、偶然親と主治医の人の会話を盗み聞きしたとき。
「お子さんは、今の医療技術じゃ治せない。」
主治医の人のその言葉だけが、俺の頭の中でずっと繰り返された。
治せない。
気付けば過呼吸を起こしているときもあって、その度に両親に心配されて、慰められた。
「きっと治るから。」
「あと少しだけ、耐えれば良いから。」
その言葉が偽善であることにも……正直、俺に早く死んでほしいことも気付いていた。
周りにはバカだと思われている俺も、のあさんに教わったり、自分で勉強したりしているので、地頭は良い方だと思っている。
だから、作り物の笑顔を「下らない」と思いながら見ていた。
親からも、医者たちからも、周りの患者たちからも…… そういう偽善や、同情の目で見られて、正直、慣れちゃったんだと思う。
「治るから。」
そんな言葉は、ただの希望的観測でしかなくて。
俺の周りにも… そう言われて、希望を持ちながら亡くなっていった子供が何人もいた。
(……そんなの、酷すぎるじゃん。)
だから俺は、 周りの大人が、 クラスメイトが、医者たちが吐く言葉が嫌いだ。
こっちの気も知れないで、絶対にあるワケないことを言って。
だから、嫌いなんだ。
それで笑っていた当時の俺だって、今は世界一………大嫌いだ。
──────────────
🍪「医者になりたいんです。 」
だから、のあさんがそう言ったとき、ちょっとだけがっかりした。
『”俺みたいな”可哀想な子”をこれ以上出さないように”?』
少しだけ怒ったような声色で言ったけれど、のあさんは気にせず答えた。
🍪「いいえ、じゃぱぱさんを”治したい”からですよ。(にこっ」
『──ッ、!?』
「治したい」なんて偽善は、今まで何回も聞いてきたのに。
…どうして、救われてしまうのだろうか。
─ ─────────────
周りの大人たちはみんな鬱陶しくて、デリカシーも気遣いも…一欠片も無かった。
(俺のことなんて、何にも分かってないくせに。)
このぶつける場所の無い怒りも、悲しみも、辛さも……今までどれだけ期待して、傷ついてきたかも。
親だって何も分かってない。
そもそも知ろうとしてない。
『もう、死にたいのに…』
病室に段々と増えてきた点滴と機械たち。 それらのお陰で、俺はギリギリで生き延びているのだ。
‥それなら、
全部壊しちゃえば良いじゃん。
──────────────
ガシャン、と音を立てて倒れる『点滴スタンド』を見て、「こんなにすぐ壊せるんだ。」と気づいた。
数分後、少しずつ息が苦しくなってきて、もう後戻りできないんだなと気付く。
自殺だと気付かれないように、倒すスタンドは少なくする。
腕に貼られた『点滴固定器』を1つずつ外していく。
死ぬことがこんなに楽しいなんて、笑えてきてしまう。
(‥もう、お別れにしよう。)
俺の「命」を守る一番大事な機械。
『人工呼吸器』と、『CVカテーテル』。
他にも色々機械はあったけど、その中で一番と言えるほど重要そうな物を選んだ。
意外と外すのは簡単で、数分もすれば全て取り外せた。
「他のも外せるかな?」と思ったが、沢山外し過ぎると「偶然外れてしまった」状態を 保てなくなってしまうので、これくらいで終わりにすることにした。
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「は、ぁッ…はッ、ぁ”……」
段々と余裕を保てなくなって、機械を付けているときよりも何倍も苦しかった。
(なんで、こんなときばっか長く感じるんだろ…)
ただただ苦しくて、もう早く死にたかった。
『…じゃ、また機会があれば。』
次があれば、こんなゴミみたいな世界じゃなくて、
(………君みたいな、綺麗な世界で。)
ードサッ、(倒
涙がぽろぽろと溢れて、ベッドに倒れこんだ。
視界が薄くなって、瞼がゆっくりと落ちてゆく。
(あぁ、やっと楽になれるんだ…)
──────────────
………走馬灯のようなものが、
もう何年も前の夏の思い出が、流れてくる。
🍪「じゃぱぱさんが、退院できますように。(ボソッ」
七夕の短冊を書いていたとき、のあさんが呟いていたのを偶然見た。
そのときは、本心で「治そう」と思ってくれているのだと、少し嬉しく思った。
──周りの偽善じゃない、本心が見えたから。
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(ありがとう、のあさん。)
俺と出会ってくれて。
一緒に日常を過ごしてくれて。
俺が泣いたとき、ずっと側にいて話を聞いてくれて。
君と過ごしたこの日常が、俺の「宝物」だったよ。
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…こんなゴミクズな俺にも、次があるとするならば。
もし、生まれ変われたら…… 必ず君に、こう伝えたい。
(あぁ、やっと言える、ッ……)
のあさん、
今まで、伝えられなくて‥本当にごめんね。
でも、さ。
最後に‥これだけは、聞いてほしいんだ。
『俺と……』
『結婚してくださいっ、!!』
だいすきだよ、のあさん。
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Episode.13
『宝物』 終了
Episode.14・・・12/14公開
次回もお楽しみに。
【参考】
人工呼吸器:
呼吸不全の患者さんが自力で呼吸できない場合に、その呼吸を人工的に補助または代行する医療機器。
主な目的は、「肺への酸素供給を助け、二酸化炭素を排出する換気量を維持すること」で、呼吸不全が改善するまで患者さんの負担を軽減し、命を維持するために使用される。
CVカテーテル:
「中心静脈カテーテル」の略で、鎖骨、首、太ももの付け根の血管から挿入し、心臓近くの太い血管(中心静脈)に留置する管。
点滴、輸液、採血、刺激性の強い薬剤の投与などに使用される。
点滴のために何度も針を刺す必要がなく、複数の薬剤を同時に投与できるなどの利点があるが、感染などの合併症のリスクも存在するため、厳重な管理が必要である。
-作者より-
今回のタイトルなんですけど、「もし、生まれ変われたら。」と悩んだんですよね…
まぁなんとなく 「短めの方が良いかな?」 って思ったので、 書き終わってから思い付いたシーン(最後の走馬灯のとこ)から「宝物」にしました。
ちょっと1話に過去編は大分無理がありましたよね…w
(殆どじゃぱぱさんの心境ですしお寿司)
話入れなさすぎてちょっと反省してます。
次回でのあさん関連のエピソードを頑張って書きたい(ただし努力義務)と思っておりますので……ぜひぜひ次回もお楽しみに~!
やっべ、今回4600文字越えてる‥
コメント
4件
あぁマジで泣けてくる、どうしてこんなにもシャマスさんはうまいのでしょう。