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紅
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#糸師凛
りー
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日曜日、無事に乾かし終わった俺の上半身防具と彩花の防具をきちんと並べておき、完全に乾いていることをアピール。朝食には珍しくパンを使っているのでバターと合わせて二枚食べる。あとは目玉焼きと、キャベツの千切り、それと冷蔵庫に残っていたオーク肉を焼き、朝からなかなか贅沢な朝食だ。今日も半日以上探索をする予定なので、いつも通り彩花が弁当を作りに来るはずだ。
そう思う中での朝食なので今日はしっかりと食べて栄養バランスもそれなりに考えられている。明日は野菜炒めか野菜スープでも作って、きちんと各種ビタミンや葉酸、カルシウム……は牛乳でいいか、色々と仕入れることにしよう。
朝食を食べて今日の持ち込む荷物を仕込んでいると、彩花がやってきた。彩花はいつも通り両手に食材を持ち込んでの昼食作りも込みだ。今日は何か手伝おう。
「さて、今日は手伝うぞ。二日続けて昼食を作ってもらい続けるのは悪いからな」
「じゃあ、簡単なものと手間がかかる物だけ手伝ってもらおうかしらね」
卵のかき混ぜやタマネギのみじん切り等の軽度な重労働をメインに手伝いつつ、どんどん料理が出来ていく。どうやら今日は手作りハンバーグと卵焼きが入っているらしい。みじん切りにした玉ねぎが無事に扱われてくれているらしい。
「そういえば、無事に乾いたの? まだ見てないけど」
「乾いた。匂いが完全に抜けきってるかどうかは……まあ、自分で確認してくれ。さすがに俺が嗅いで判定するのはちょっとな」
「まあ、今更な気がしないでもないけど……そうね、ある程度の距離感みたいなものは必要だものね。作り終わったらちゃんと確認することにするわ。もうちょっと幹也と心と体を重ね合わせればそういうことをしても問題なくなるのかしら」
「どうだろう? 夫婦になっても絶対お互いに踏み込まないラインみたいなものを持ってる人たちもいるしね」
「その辺は追々話し合っていくことにしよう。どこかでひょっこりそういう部分が出てきてからでも遅くはないと思うし」
「そうねー、熟年夫婦になってから初めて知る相手の嫌だった部分とかもあるはずよね。というわけで昼食の美味しそうな匂いに釣られてやってきたけど、いいわね、ハンバーグの肉汁の匂いが家中に広がっていてついつまみ食いをしそうよ」
アカネが待機状態から行動状態に移行、そしてキッチンの周りをうろうろし始めた。
「はいはい、ご飯は逃げないし見た目の邪魔だから離れてみててね。アカネさんが目の前にいると油跳ねがしているかどうか見えなくて困るわ。後の掃除も面倒くさくなるだろうし」
そういうと、アカネは素直にキッチンから離れ、俺のよこで正座を始めた。霊体でも足は痺れるんだろうか?
「痺れないわよ、重さが無いんだから」
それは便利だな。俺も生まれ変わったら霊体になって好きなだけ正座をすることにしよう。
「そういえば【マジカルシュート】についてなんだが、極稀にケットシーが落とすスキルスクロールらしい、という話がサイトに上がってた。まだそんなに知られてないのか、それとも誰も知識の更新をしないのかはわかんないけど、とにかく出る物は出るらしい」
「じゃあ、かなりの運の良さだったってことね。儲けものじゃない」
「そうなんだよな。いっそのこと売ってしまうのも手だと考え始めたよ」
「売ったらいくらになるの? 参考までに聞いておくわ」
「240万かな。手数料抜きになるから、120万ずつってことになる。それに加えて昨日の儲けの魔石の振り込みをお願いすることになるから……一体いくらになるんだろう? 」
「魅力的な提案だわ。今日一日でこれだけ稼ぎました! って知らしめるには充分すぎる金額だし、両親を説得するにもいい金額ではあるわね。やっぱり売ることにならないかしら」
値段を聞いてグラグラと揺れ始める彩花の精神に、頷いてしまうのも一考だ。二人でドロップしたスキルスクロールでもあるし、彩花がそう思うならそうするのもありな気がしてきた。よし、ここは現金に換えてしまうか。
「じゃあ、【マジカルシュート】は現金にしてしまおう。名残惜しいというほどでもないし、威力が欲しけりゃ自力でケットシーまで潜り込んでマジックミサイルを集めればいいしな」
「催促したみたいで悪いけど、ここでドカンと収入にしてしまえば、夏休み遊び倒せるだけの予算にもなりそうだし、中々夢のある話になってきたわ」
「ちゃんと税金分は残しておくなら、確かに夏休みの軍資金にはなるな。日本一周とはいかなくても浦安で二泊三日で遊んで楽しめるだけのお金にはなるな」
「浦安はアトラクションというより人ごみを楽しめないと厳しいらしいわよ。幹也には合わないんじゃないかしら。それより、最近人気が急上昇してきた身近の外国に行きたいわね」
「そのほうが人が多少少ない分楽しむ要素は上ってことか。日帰りで複数日通えるのもいいところだな。そっちで遊べるように夏休みはスケジュール組むか」
「それは楽しみね……と、ご飯の準備終わり。アカネさん、私の愛情詰まったお弁当の評価をよろしく」
そう言いながら洗い物を始めたので、洗い物ぐらい俺がやる……と代わりにフライパンや調理器具の洗いを始める。後ろでは、弁当箱の中身に対してアカネの努力チェックが始まっている。
「よし、合格! 充分神力が回収できたわ」
「やった! 」
どうやら合格点がやすやすと出たらしい。良かったな、彩花。小姑の試験は無事に突破出来たぞ。洗い物を片付けると、彩花が嬉しそうにご飯を弁当箱に詰めている。ハンバーグはさすがにチーズインではないそうだが、それでもふっくらとしていて美味しそうに見える。さて、やる気もみなぎってきたし、早速出かける準備をすることにしよう。
彩花にお弁当を渡され、出かけようとするとアカネも付いてきた。どうやら大学ダンジョンの様子を見に行くらしい。
「参考にするダンジョンが変わっても途中からの変更なら問題ないだろうし、すくなくとも、あと三年半は同じような構成のダンジョンを使うんだから、十五層までが駅前ダンジョンで十六層から先が大学ダンジョンで出来ていても、他の誰かが入り込んで使うわけじゃないなら問題ないわよね」
確かにそうだな。ただ、同じようなモンスターを倒し続けるので若干作業感は出るが、ドロップ品が被るのでインスタンスダンジョンでのドロップ品チェックをされる心配もなく換金所を使えるのはいい話だろうな。
「では、早速行くか。相変わらず自転車移動だが」
「体力的には問題ないけど、少し暑いのだけが難よね」
「これからもっと移動が辛くなるが……その前にはもうちょっと涼し気で丈夫な装備に着替えられるように頑張るか」
ケンタウロス装備なら今の防具より確実に素材が薄めで耐久力がある。夏場の防具にはぴったりだろう。後は上半身だけ……というところだが、この上半身が無くても一応セット装備としての効果は出てくるらしいので、上半身だけもうちょっと見た目に違和感のない装備や服装があればいいんだけどな。
一人だけ涼しそうなアカネが、ワンピース姿で腕組みをしながら足も動かさずにそのままスイーっとついてくる。これ、そういうのが見える人からだとどういう様子に見えているんだろう。自転車二人にくっついて移動してる謎のワンピース少女なのか、それとも俺か彩花どっちかにとりついているように見えるのだろうか。
……っと、考え事をしてるとアカネに読まれるな。無心で行こう。大学の構内の自転車置き場に自転車を止めると、すでに荷物の詰まったバッグを背中に背負って大学ダンジョンまで歩いて向かって、入場手続きをして中に入る。そのままワープポータルで十層へ入り込み、十層の空気で少しだけひんやりしていく。
「君らは……一年生か? あまり見たことがない様子だけど」
突然話しかけられたので振り向くと、頭にタクティカルヘルメットをかぶった学生らしき一行がこちらを見ていた。
「ええ、そうです。一年生です」
「凄いな、一年生で十層までワープしてきて、しかも二人で突破しているのか。自力だよね? 」
「流石にまだ伝手とかそういうのを使う手段がないので自力、ということになりますね」
目であちこち観察しながらどういう人物なのかを測る。向こうのパーティーも十層までこの時間に気軽にきていることを考えると、彼らもワープポータルで十層に来たパーティーなんだろう。
「俺達は大学の探索者サークルなんだ。これを機に知っておいてくれ。もしサークル入部する気があったら……ここにサークルの部室があるから気軽に足を運んでみてほしい。夏休み前に新人確保しておかないと、という部長命令でね。学生っぽい人たちには声をかけるようにしているんだ。それじゃあ、そっちもご安全に」
そういうと、四人連れ立って奥の方へ向かってしまった。渡されたプリントをよく見ると、40名ほどが参加するサークルであることが分かる。
「興味ある? 」
「今のところはないわね。ただ、二十層まで楽にいけるようにしてくれる……とかのキャリーがあるなら、キャリーしてもらった分だけの恩は返さないといけないな、とは思うところね」
「そういう意味で利用したいな、と思うところがあるのは確かだな。ただ、それだけを理由に入るのもちょっと違う気がするし……まあ、選択肢の一つとして持っておくのは悪くはないとは思ってるけどね。ただ、サークルとして活動する場合二人離れて行動することもあるだろうから、お互いがそれぞれ知らない所で何かやらかしちゃってそれが理由となって専用ダンジョンがバレる可能性を考えると、あんまり知られてないほうがいいような気がする。そういう面では入らないほうがいいかもしれないな」
「ただ、大学にはそういう選択肢もある、ということだけ知っておけばいいのかしらね。後は、ダンジョン学部だからぜひとも学部生を迎えて色々知りたい情報やらを吸い上げておきたい、というのはあるかもしれないわね」
「まあ、うちの学校にも立派にサークルがあることさえ知っておけばいいさ。とりあえず今日のノルマを達成しに、十五層へ行って帰ってこよう」
途中、十三層でダンジョンサークルメンバーと出会ったが、お互いにあのうるさい環境で会話ができるわけもなく、そのまま十四層まで突破したところで追いつく。どうやら、彼らも目的は十五層の模様だ。夏休みに強化合宿と称して二十層まで行けるように努力するらしい。二十層か……こっちも二人で夏休み中に突破することを目標に頑張っていこうかな。
コメント
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あおいです🌷 日曜日の穏やかな空気感がとても心地よかったです。防具を乾かすところから、彩花さんとの朝の料理、アカネさんの小姑チェックまで、日常の風景が丁寧に描かれていて、ほっこりしました。特に「夫婦になっても踏み込まないライン」の会話、距離感の絶妙さが素敵だなと。あと、霊体の正座が痺れるかどうか気になるあたり、アカネさんのキャラが好きです。スキルスクロールの売却話や夏の計画も、二人の関係性がじわじわ深まっている感じがして良いですね。今日もお疲れさまです!