「変に手出したら俺のこと嫌いになってくれんだろうなーとか考えた日もあんのよ」
『……でもそんな事できないしする気もないでしょ』
「はは、よく分かってんな」
この人がどれだけ悪い大人なんてずっと前からわかってる。
わたしを待たせて甘ったるい声を出す女の人と電話をしてることも
毎日のように彼女でもない女の人達を連れ込んでいることも
息を吸うように煙草を吸うことも、
きっと全て褒められるようなことではないしこれだけで嫌悪感を抱く人だっているはずだ。
それでも
それでもわたしはローレンのことが好きだ。
できる限りわたしのことを優先してくれる所も
お客さんに変に絡まれた時にすぐに助けてくれる所も
誰にも優しいけどわたしにはもっと優しい所も
都愛って優しい声で呼んでくれる所も
『…わたし、ほんとに好きなんだよ。ローレンのこと』
諦めろなんて言われて簡単に諦められないんだよ。
嫌いになれるならとっくに嫌いになっているし
ダメな部分も全部引っ括めて好きになっちゃった。
『きっと彼女ができたって言われてもまだ好き、諦められない』
「それはちょっと好きすぎんじゃない?」
『ローレン以外考えらんないもん』
「こんな男に引っかかんなよ」
はあ、とため息。
こっちだって引っかかるつもりなんてなかったのに。
煙草を吸う人は嫌いだし女遊びが激しい人も嫌い。
でもそれを許せるところがちょっと、ありすぎた。
『力強いよ』
「なんかもうお前が悪い」
『えぇ』
「もうさー、俺がダメだわ。普通に。」
足がするりと絡みついてくる。
ただでさえ近かった距離がさっきより近くなった気がした。
完全に目が覚めてしまったから携帯でも見ようかなって思ったのに
腰も足もガッツリホールドされていて身動き一つ取れそうにない。
「ごめん、寝そうだったのに。もう寝ろ」
『眠気戻ってくるかな』
「目閉じてたらなんとかなる」
ほんとわがまま。
結局関係は何一つ変わらず会話は終了。
はっきり好きと伝えられただけでもマシなのかもしれない。
普段なら厄介な雨の音を子守唄代わりにして大人しく目を閉じると
あっという間に眠気がきた。
ローレンの体温を感じながら意識を飛ばしたわたしは
首元のちいさな痛みになんて気づくことはなかった。
「……俺が諦めらんねーよ」
コメント
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えっ、好き
おっと?ローレン?ギリアウトやね、それ