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「ねえ大森〜」
控室で譜面をいじっている大森の背後から、若井が覗き込む。
距離、近い。いつも通り近い。
「……なに」
「いや、今日のリハの大森、かっこよかったな〜って」
「うるさい。集中できない」
そう言いながらも、大森は席を立たない。
若井がすぐ隣に腰を下ろしても、どかない。
「ね、ね」
「触るな」
若井の指が譜面を指した瞬間、即座に叩き落とされる。
でも若井は全然めげない。
「今の照れた?」
「照れてない」
「耳赤いよ」
「……照れてない!!」
若井は嬉しそうに笑う。
この反応が見たいだけだと、大森は分かっているのに。
「大森ってさ」
若井は少し声を落とす。
「俺がいないと、ちゃんと休まないよね」
「……関係ない」
「あるよ」
即答だった。
「曲作りで限界まで行って、
それでも“大丈夫”って言うの、俺知ってる」
大森は黙り込む。
図星すぎて、言い返せない。
「だからさ」
若井は笑いながら、でも優しく言う。
「俺がそばにいるんだよ。勝手に」
「……勝手にって言うな」
「じゃあ、許可ちょうだい」
大森は一拍置いて、そっぽを向いたまま呟く。
「……いなくなったら、困るから」
その瞬間、若井の表情が一気に緩む。
「え、それ告白?」
「ちがっ……!」
「嬉しい」
「話聞け!!」
若井は笑いながら、大森の肩に軽く頭を預ける。
「ツンツンしてるけどさ」
「大森、ちゃんと俺のこと必要としてるよね」
「……調子に乗るな」
でも、大森はその重さを振り払わなかった。