「や、やめてくれよ! 俺だって混乱していて怖いんだからさ!」
私は強く頭を振った。ここが不可解な夢の世界なのかは別として、どうやったら元の世界に戻れるのだろうか。恐怖と混乱でぐちゃぐちゃになりそうな頭で、私はそればかり考えていた。……早く帰りたい。
「きみが占いか呪いだっけ? で、鍵の在り処を調べるっていうのは」
私は意外性に賭けてみた。
「でも、私あのコーヒーを飲んでから調子がおかしいのよ」
呉林は茶色い長めの髪をかきあげてから考えだした。
「でも、その不思議な感じる力は出来るのか……?」
しばらく歩くと、さっきの誰もいない事務所に着いた。呉林は、さっそく散乱している机の中や奥のロッカールームを探す。私もそれに続いた。
この事務所の明かりも、天井に数個しかないやや大きめの裸電球だけであって、薄暗くなっている。私は小ざっぱりとした机の上にあった懐中電灯片手に机の引き出しを一つ一つ探しだした。
呉林は奥のロッカーを中心に探した。ロッカーの中には刑務官のジャンパーや着替えがある。鍵が一番ありそうな場所だった。
しばらく根気よく探したが、やはり無い。一時間以上しただろうか、私はだんだん疲れてきた。
「ここには無いようだし、他を探そう」
「ええ」
呉林も少し応えているようだ。額に汗が浮き出ている。
私と呉林はまた通路に出る。私は今では鍵のことより、この不可思議な世界から出ることだけを考えるようになってきた。
私は、溜め息をついて嘆く。
「はあ、どうやったらここから出られるんだ」
私は未だに極度の恐怖と混乱した頭で言い捨てた。
「その前に鍵よ」
「あ、うん」
私は気のない生返事を返し、額に浮き出た冷や汗とも疲労の汗ともいえない汗を拭う。
それを聞いた呉林は私の方に怖い顔を向けてきた。
「あなた! さっきの人たちのこと、どうでもいいって思ってない! それじゃあの人たちが可哀そうよ!」
呉林が悲しさと厳しさが入り混じった顔をした。
「いい! 強い意志を持たなきゃ駄目よ! でなければ、この不思議な場所からは出られないわ! ここから一生出られなくてもいいの! あの人たちの協力がきっと不可欠よ!」
呉林は少し怒りが入り混じった声をだし、厳しく捲くし立てる。
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