テラーノベル
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文化祭当日。
魔獣カフェの準備は、いよいよ最終段階に入っていた。
教室は、もはや普通の教室ではない。
壁には、ふわふわの雲を思わせる白い布。
窓辺には、淡いピンクとミントグリーンのリボン。
中央には、コットン・キャンディ・シープたちが休めるように、柔らかな牧草を敷いたふれあいスペース。
奥には、魔法糸でキーホルダーを作るワークショップ用の机が並んでいる。
(よし。客導線、装飾、体験メニュー、物販スペース……全部予定通りね)
私は責任者用の腕章をつけ、バインダーを片手に教室全体を見回した。
「レオン、あなたは接客担当よ」
「任せて。この教室を満席にしてみせるよ」
レオンは、白を基調にした衣装をまとい、優雅に一礼した。
襟元と袖口には、コットン・キャンディ・シープを思わせるふわふわの白いファー。頭には、白い羊角のカチューシャ。
王子様感に、親しみやすさと“癒やし”が加わっている。
「ところでバイオレッタ、今日の僕はどうかな? この衣装、似合ってる?」
レオンは、少女漫画の背景に薔薇が舞うような完璧な微笑みを浮かべた。
「いいんじゃない? じゃあ、そろそろ入口で客引きしてきて」
「え、それだけ!? バイオレッタ……僕への扱い、だんだん雑になってない?」
「気のせいよ」
気のせいではない。
次に、私はフローラへ視線を向けた。
「フローラは、ワークショップ担当ね」
「はいっ、お姉さま! 私、お姉さまのために一生懸命がんばりますっ」
フローラは、白くてふわふわの羽うさぎメイド姿で、両手を胸の前に揃えた。
白いウサギ耳。背中には小さな白い羽。ミルクティーブロンドの髪には、淡いピンクのリボン。
エプロンには、私の使い魔――ピボットのルピを模した、小さな白いウサギの刺繍が入っている。
(待って、可愛い!)
(可愛すぎる!! 神!!)
これは文化祭ではない。天使の降臨祭である。
「お姉さま……似合っていますか?」
不安そうに見上げてくるフローラに、私は即答した。
「世界一可愛いわ! 可愛すぎよ!!」
「……っ! お姉さまっ! 嬉しいですっ」
フローラはぱあっと顔を輝かせ、私の腕にぎゅっと抱きついてきた。
(だめだわ。推しが可愛すぎて尊死しそう……)
私は危うく、現場責任者としての理性を失いかけた。
その時。
「きゅいっ!」
私の肩に乗っていたルピが、ぴょんっと跳ねた。
背中の小さな羽をぱたぱた揺らしながら、私の肩から机の上へ降り立つ。
小さな足には、淡いピンクのリボンを巻いてある。
禁忌魔法の刻印を隠すためのものだけれど、ただのおしゃれな飾りに見えるはずだ。
「ルピも今日はよろしくね」
「きゅいん!」
ルピは誇らしげに胸を張った。
「コットン・キャンディ・シープがメイン。ルピは店内の雰囲気を和ませる担当よ」
ルピはつぶらな瞳で私を見上げる。隣で、フローラが微笑んだ。
羽うさぎメイドのフローラと、小さな羽を持つピボットのルピ。
(可愛い×可愛い=世界平和そのものね……!)
私は胸を押さえた。
「ルピと一緒にワークショップのお客様に配る整理券を準備してきて」
「はいっ! ルピ、一緒に頑張りますよっ」
「きゅいっ!」
フローラとルピが並んで返事をする。
その姿を見た準備中の生徒たちから、「可愛い……」というため息が漏れた。
(よし。これは集客効果があるわ)
レオンの羊王子。フローラの羽うさぎメイド。マスコットキャラのルピ。
ここまでは、完璧だった。
――ただし。まだ一つだけ、大きな問題が残っていた。
入口付近で、お客様を凍りつかせる黒いオーラを放つアレクである。
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