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静まり返る廃スタジオ。そんな時……
リチャードがゆっくりと呟き出した
【……なぁ、雅人さん。】
雅人が目を向ける
【“夢ノ宝石キャンディ”……もう完成してるんやろ。】
その場の空気が一瞬、張り詰めた。
『え……?でも、さっきまだ完成してへんって……』
晶哉が戸惑う。
リチャードは静かに続ける。
【あんたの手……震えてる。健が持っとるのが“試作品”やなくて、“完成品”や。ほんで、晶哉を巻き込もうとしたのは、息子に使うのが怖かったからやろ。】
雅人の目が一瞬見開かれる。
【副作用がある。せやから他の人間で試して、“安全かどうか”確かめたかった。でも本当は……息子を守りたかったんやろ?】
雅人は、健が持つ瓶を見つめた
{……あの時の私は、父親ではなかった。研究者として、結果しか見ていなかった。だが、誠也が記憶を失っても、笑って生きている姿を見て……ようやく、恐ろしくなったんだ。}
誠也がゆっくりと顔を上げる。
「……怖かったん?俺に使うのが。」
雅人は小さく頷いた。
{“夢ノ宝石キャンディ”は、記憶をすべて取り戻す。だが、失敗をすれば存在自体が無くなるんだ……。}
《それを晶哉に……。》
{彼を実験台にする気はなかった……。ただ、“止めたかった”。誠也をこれ以上、傷つける研究を。}
リチャードは静かに息を吐いた。
【……せやけど、もうその選択は息子のもんや。あんたが怖がっても、俺らは逃げへん。】
『……そうや。俺らがここまで来たんは、誠也くんを取り戻すためやからな。』
晶哉の目には涙が滲んでいた。
「お前ら……。」
誠也の声が震える。
「俺……ほんまは怖い。“でも……記憶を取り戻したいんや!俺、逃げへん。」
健は手に持っていた瓶を誠也に渡す
{お前が選ぶなら、止めはせん。だが……覚悟だけはしておけ。}
光を放つ青緑の飴玉。
メンバーは黙ってその光を見つめた。
それが“希望”なのか“破滅”なのか、
誰にも分からないまま……