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おー、第31話読んだよ!イソトマが宝石より紙に夢中になってるの、めっちゃわかるわ。あの真剣に紙選んでる姿、職人かよって思った(笑)。でも「大事なものは自分のお金で買いたい」ってポリシー、イソトマらしくて好きだな。セインが「知れば知るほどもっと知りたくなる」って言うのも、なんか納得。最後に手繋いで走るシーン、ほっこりした🔥
午後になって、待ち合わせ場所に行った。ディルクには、少し離れてもらった。真後ろで会話を聞かれるのは嫌だった。見られているのも本当は嫌だ。
(でも護衛だから。ディルクは、何も感じないのかな)
無表情で言葉も少ないから、気持ちがわからない。
「やぁ、イソトマ」
考え事をして歩いているうちに、目的地に着いていたらしい。
セインが手を振っている。
「お待たせ」
「俺もちょうど来たところだよ。行こうか」
セインに腕を差し出された。
控えめに腕を絡めて歩き出す。
「お昼は済ませた?」
「アルエと一緒に食べちゃった」
同人誌の売り場の近くに屋台が出ていた。東の国のホットサンドらしいが、美味しかった。
「それじゃ、宝石なんか、どう?」
セインがキャラバンの出店の前に連れてきてくれた。
色とりどりの宝石が、所狭しと並んでいる。
「うわぁ、綺麗だね」
イソトマは星の形をした紫色の宝石を手に取った。
「その宝石は、イソトマのようだね。とても似合っているよ」
セインが宝石を髪や胸にあてる。
視界の端に、白いものが視えた。
「これをもらおうか?」
「セイン、待って」
セインから離れて、隣の店を覗く。
真っ白で大きな紙が、売っていた。
「紙だ……滑らかで、真っ白。張りがあって、しっかりしてる」
かなり上質な紙だ。この辺りの店では見つけられなかった。
「お兄さん、なかなか慣れていらっしゃるね。そこまで上質な紙は、この辺りじゃぁ、ちょっと見ないよ」
「あのさ、腰があって、硬すぎなくて、表面が滑らかな紙って、他にある?」
店主が後ろの戸棚をしきりに開け閉めした。
「欲しい紙がはっきりしているね。用途が決まっているのかい?」
「絵を描くんだ。羽ペンで、黒いインクを使って、細い線を引く。だから、ペン先に負けちゃう紙じゃダメなんだ」
店主が嬉しそうに三種類の紙を出した。
「硬けりゃいいって訳でもないんだろ。このあたり、どうだい」
イソトマは三種類の紙を見比べた。
かんな
2,452
寿命㌫(主) 🔮🖤ᩚ
8,872
(どれも悪くない。使って確かめて、比べてみたい。どうしよう)
欲しいとは思うが、王都の文具店で売っている紙とは桁が一つ違う。
「この辺り、コナハト皇国の南側にしかいない民族が作っている、特殊な紙だがね。まとめ買いなら安くしとくよ」
店主が計算機を弾く。出された値段はまとめ買いにしては安いが、まだ悩む額だ。
「一枚ってわけにいかないし。買うなら最低十枚は欲しい。うーん」
「やれやれ。今のイソトマは宝石より紙を欲しがるのか。この三種類でいいのかい?」
会計しようとするセインを、イソトマは手で制した。
「待って、セイン。これは僕の趣味の買い物だ。だから、自分で買うよ」
「イソトマの趣味に貢献できるなら、嬉しく思うよ」
セインの申し出に、イソトマは首を振った。
「大事なものは自分のお金で買いたい。じっくり選ぶから、ちょっとだけ待っていて」
イソトマは紙に向き合うと、三種類を触ったり匂いをかいだりして比べ始めた。
「ふふ、わかったよ」
イソトマが選んでいる間、セインは後ろで静かに待っていてくれた。
「店主……これと、これと……うーっ、思い切って、これも!」
見比べていた紙を差し出す。
店主が嬉しそうに笑った。
「いいねぇ。貴族様なら、ほいほい買いそうなもんなのに。そこまで真剣に選んでくれると、嬉しくなるよ」
店主が数枚のサンプルを付けてくれた。
「こっちのは俺からのサービス。それに俺の名刺だ。気に入ったなら、屋敷に呼んでおくれな」
「ありがとう、店主! また買わせてもらうよ」
イソトマは、店主とがっちり握手した。
「はぁ、いい買い物ができた!」
大きな紙袋を抱えて、イソトマは大満足していた。
本当はもっと欲しい紙があったが、三種類に厳選した。店主がくれたサービスは悩んで諦めた紙のサンプルだ。
「優しい店主だったねぇ。少しだけ安くしてくれたし、嬉しいな」
使い心地が良かったら、是非また購入しよう。
「イソトマなら、いくら高いと言っても紙くらい、全部買えただろ?」
「えぇ、無理だよ。学園祭は今日から五日間もあるのに。初日でお小遣い、使い切れないもん」
セインが不思議そうな顔をしている。
イソトマは首を傾げた。
「おじ様に頼めば、値段なんか気にせず、何でも買ってもらえるだろうに」
「それはそうだけど。毎月、お小遣いもらっているから、趣味の物とかは自分で買うことにしてるんだ」
アルシュタイン家の金庫からオタ活資金を出すわけにはいかない。
あくまでオタ活は、イソトマ個人の趣味だ。
(限られた資金の中で選ぶからこそ、出来上がった作品も愛おしい)
前世のオタ活を思い出す。
イソトマを眺めていたセインが、吹き出した。
「侯爵子息が、お小遣いか」
「い、いいでしょ、別に! 大きい額のお金とか、よくわからないんだもん!」
昔のイソトマは、湯水のように金を使っていた。
前世を思い出してからは、そんな金の使い方が怖くなった。
(そもそも庶民だったんだもん、仕方ないじゃん)
アルバイトで稼いだお金でオタ活する大学生だったのだから。
今のイソトマからしたら、欲しいものを考えもせずホイホイ買う感覚のほうがわからない。
「本当に見ていて飽きないな、イソトマは」
セインの指が、イソトマの頬を撫でた。
「面白いし、可愛いし、男らしい。どの顔も、目が離せない。知れば知るほど、もっと知りたくなるね」
頬を撫でるセインの指が、唇に触れそうになる。
ビクリと、イソトマの肩が強張った。
セインの手が戸惑いがちに離れた。
「あ……僕、その」
何を言えばいいのかわからない。イソトマは黙り込んだ。
セインが眉を下げて笑んだ。
「喉、乾かない? すぐそばに、レインボードリンクっていう、飲んでいるうちに色が変わる飲み物があるんだけど、興味ない?」
「え! ある!」
イソトマは、自然と顔を上げた。
「じゃ、行こう。ドリンクくらいは、奢らせてくれよ」
セインがイソトマの手を握った。
イソトマの胸が、小さく跳ねた。
「ああいうドリンク、きっとイソトマは好きだよ」
セインの横顔がワクワクしている。ちょっと少年みたいだ。
(こういうセインのほうが、いいな)
気取って腕を組むより、ワクワクしながらドリンクに走るほうがいい。
「どれくらい変わるのか、楽しみだね!」
まるで子供の頃のように、イソトマはセインと手を繋いで走った。