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【 注意 】
・全て捏造
・🌈🕒 rttt ( CP要素は無し )
・作中伏字無し
・不穏
・暴力表現有
・ヴィラン化
・低クオリティ
・解釈不一致
・初描き、初投稿
全て許せる方のみお読みください。
『 目 』
「おい!避けろ!」
「うぉ!?ちょ、どこ打ってんだよ!」
唐突に仲間の荒々しい声が聞こえれば、俺は反射的に野太い声を上げた。
攻撃が俺に当たりそうになった。
全力で逃げたり、飛んだり。
強いくせして不器用で、協力しようって言ったのに全く手を貸してくれやしない。こんな時ですら俺のことをからかっているのか。
「おま、バカ。やったな!?」
少しの対抗心からか…、やられたらやり返すなんて言葉が浮かんできたせいか…。
今度は俺が攻撃をした。
「は!?何してんだテメェ!」
そんな喧嘩のようなことをしているうちに、
画面上には『GAME OVER』と表示されてしまった。
「…リトくんのせいだからね?」
「いいや、俺の目の前に居たお前が悪い。」
俺の家に今日はリトくんが遊びに来ていて、今は2人でゲームをしていた。
俺が敵の所へ近付いて行ったときにリトくんが攻撃を溜めていたようで、たまたま俺に当たりそうになってしまったらしい。実際少し当たってHPが減った。そこからさっきの喧嘩の流れになってしまった…。
リトくんが「疲れた〜」なんて呟きながらとんっとコントローラーを置いて床に寝転がる。
「流石に休憩しよ。うち水しかないけど飲む?」
「よく水だけで生きていけるなお前。貰うわ。」
立ち上がって台所へ向かおうとした途端にリトくんのスマホが鳴った。
本部からの連絡だった。
リトくんはスピーカーに設定して俺にも聞こえるようにしてくれた後に応答ボタンを押した。
「C地区にKOZAKA-Cを目撃。至急向かうように。」
寝転がっていたリトくんは腕にぐっと力を入れて床を押し即座に立ち上がって
「あいよ。」
と1つ返事をして電話を切った。
「ったくよ〜、俺らの貴重な貴重な休日奪いやがって。構ってちゃんか?」
「今度は目の前気を付けてよね」
俺達はデバイスを起動して急いでC地区に向かった。
C地区に足を踏み入れたときに物凄い音がして、急いでその音の方へ走った。
しかし、特段大きなヴィランが居るわけでもなく、小さな奴が数匹居る程度だった。
辺りを見渡すと、 電柱に頭を打ち付けて俯いている男性が居た。
「ちょ、大丈夫ですか!?」
唐突なことだったからショックで頭をぶつけてしまったのだろうと思い、咄嗟に声をかけた。
「…ぁ…うぁ……」
その人から発せられた声はどこか震え気味で、手は爪を立てて頭をガリガリと傷つけるようにかいていた。
背中を揺すろうと思い手を伸ばした途端に、
男性から凄まじいオーラが現れた。
「テツ!」
リトくんが強引に俺の服をガシッと掴んでその人から離してくれた。
「ご、ごめん。助かった。」
「大丈夫。おい、あれヤバいよな」
男性から出たオーラはこの世のものとは思えないくらいにおぞましい。
全てを飲み込むような、作ろうと思っても作れないような黒色。
近付くとまずい、と本能的に思わせてくる圧力。
一般男性が放てるようなものでは決してない。
そう、ヴィランの仕業だ。
ヴィランが人に取り憑く、憑依する。というのはあまり珍しいケースではない。よくあることだ。 何度も経験したことがある。取り憑かれた人は正気ではない。
しかし、これ程のオーラを放つヴィランは中々居ない。
この男性も、運が悪かったな。
「やるよな?テツ」
「…そりゃぁ、 もちろん!」
「アイツをあの人から引き剥がす。」
憑依したヴィランは人の中にいる限り攻撃は効かない。憑依した人が傷つくだけだ。
ヴィランを人から離すには、オーラを掴んでソレを引っこ抜くことが必要となる。掴めるくらいには近くに接近し、相手からの攻撃をかわさなければならないけれど、
不幸中の幸いか、今回のは力が強いからかオーラがデカイ。少し距離を詰めればすぐに掴めるだろう。
なんてったって、今日はフィジカル最強のリトくんもいるんだからね。怖いけど、きっと大丈夫だろう。怖いけど。
「おい!テツ!避けろ!!」
色んな考え事をしている最中にリトくんがまたもや荒々しく俺に向かって声を上げた。
すると、頭の中に生々しく、鈍く、重い音が響いた。
痛い。
「んがァッ…!はぁ…はァ…!」
「テツ!!」
俺はあの男性に殴られたらしい。完全にヴィランに取り憑かれてしまったんだ。
リトくんが俺の方へ駆けつけて来た。
「ご、ごめん、大丈夫。ぼーっとしてた」
「馬鹿野郎!死ぬぞ!」
リトくんの怒りと心配が混ざりあった瞳。中々見ないな。
「動けるか?」
「うん、舐めないでよ。絶対的ヒーローをさァ…。」
正直めちゃくちゃ痛い。逃げたい。怖い。
けれど、あの男性を放っておく訳にはいかない。助けないと。
なんて考える暇もなく、男性がこちらへやってくる。
「…俺が抑える、テツがアイツ引っこ抜け。」
「おっけー、任せて。」
リトくんは俺より先に走り出し、男性の後ろへ回って動きを止めようとした。
リトくんが回っている間、俺は男性の気を引いた。
全力で逃げたり、飛んだり。
邪魔くさい小さいヴィラン達も片付けながら、必死こいて気を引いた。
もうほとんど体力が無い。さっき殴られたこともあって思うように体が動かない。
そんな弱気なことを思っているうちにリトくんの声がした。
「テツ!来い!!」
男性のことをしっかりと掴んで押さえ付けてくれている。
俺は最後の力を振り絞って抑えられた男性の方へ一直線に走った。
勢いでガシッとオーラを掴んでは、腕に力を込めてソレを引っこ抜いた。
すると、男性が纏っていたオーラは消え、ヴィラン本体が出てきた。
「よし!リトくん、やって!!」
出てきたヴィランをリトくんに片してもらおうと声を上げた。
しかし、それは遅かったらしい。
そのヴィランは、リトくんの中へ入ってしまった。
「は、リトくん!?」
まずい。
本能でそう感じた。
しかし俺はもう動けない。体力が限界だ。
リトくんからは先程見た黒いオーラがじわじわと溢れ出してくる。
リトくんは頭を抱えて俯いた。苦しそうな唸り声を上げながら。
逃げないと。殺される。逃げないと。怖い。痛い。怖い。死ぬ。怖い。
リトくんはゆっくりと顔を上げた。
何の感情も無いような瞳を浮かべていた。
あれはもうリトくんじゃない。
「ちょっ、待ってリトくん!!」
恐怖で腰が抜けてしまい、声をかけることしか出来ないでいると、リトくんは先程助けた男性を踏みつけながら俺の方へ歩いてくる。
「ま、待ってってば!リトくん、リトくん!」
後ずさりしながら呼びかける。
「落ち着いて、ねぇ!」
空は暗くなり、雨が降ってきた。
「リトくん!ねぇってば!」
数秒で雷も落ちてきた。
その時、俺の皮膚にピリッと何かが走った。
それはリトくんの溜まっていた電気が溢れ出したものだった。
このままでは、いつか本当に死んでしまう。
そう考えているうちに、リトくんが目の前へ来てしまった。
リトくんは拳を握って高く挙げた。その時に反射的に俺の脳が言った、
殴られる。
「いッ…!リトくん!やめて!」
1発
「り、リトくん…!」
2発
「ねぇ…ッ!リト、くん…! 」
3発。
「たす、けて…ッ」
もう何発殴られたのかも分からない。
頭がクラクラする。前もよく見えない。
そんな時にリトくんが俺の前で屈んだ。
トドメを刺そうとしているのか、また拳を高く挙げた。
もう諦めるしかない。そう思った。
その時、俺はふとリトくんの目を見た。
泣いてる。
雨でよく分からなかったが、確かに彼は泣いていた。
「…ははっ、なぁーんだ。リトくんじゃん。」
俺は口角を上げた。
強いくせして不器用で、俺のことをよくからかう、あのリトくんを思い出した。
なんだ、コイツもいつものリトくんじゃないか。
俺は高く挙がったリトくんの手を残りの力で掴んだ。
「ごめんね、疑って…。俺の知ってるリトくんはさァ〜…?確かにめちゃくちゃ怖いけど、こんなにどす黒くないもんで、勘違いしてたよ…! アイツは、ちょっと殴られただけの俺を放っておけないくらい、お人好しで、正義感が強くて、仲間想いな奴なんだよね…!そんな奴が俺をボコボコ殴って平気なわけないじゃん…。だーかーらー…」
「返して、俺らのリトくん。」
重い体を起こして、リトくんから溢れるオーラを掴んですぐさま引っこ抜いた。
すると、すっと元のリトくんが戻り、 ヴィランの本体も現れた。
「…テツ…?」
「寝坊すんなって、筋肉おばけッ!協力して!」
リトくんが目を開けて見えた世界はさぞ不思議だったろう。さっきまで一緒に戦ってた 俺がボロボロの状態で立ってるんだから。
後で説明と説教してやらなくちゃな。
相変わらずの正義感でか、リトくんはすぐに立ち上がって俺の横に並んで構えた。
「すまん、迷惑かけた。いけるか?テツ。」
「当たり前でしょ、絶対的ヒーロー舐めんなって…!正直まじで痛いしもう辞めたいけどねェ!」
ふはっと2人で吹き出して笑えば、ヴィランに目を向けて拳を握った。
「一緒にメンヘラ構ってちゃんの相手してやろうぜ?」
「今度は目の前気を付けてよね、ヒーロー。」
帰ったらゲームの続きしよ。
END.
3705字、お疲れ様でした。