ある出来事をきっかけに、私はいわゆる人間不信というやつになった。
母「霞音…」
『私は大丈夫だよ、気にしないで』
母「そう…そっか霞音がそうしたいならお母さんなにも言わないわ…」
母「でも、無理はだめよ…?頼ってね…」
『…ありがとう』
父親はいないが母が女手一つで大切に育ててくれたおかげで私は幸せだった。まぁ、今は人間不信だけど…
母「そうだ、気分転換に喫茶店にでも行きましょう!たまには外にでることも大切よ?」
『そう、だね…うん行こっか…』
母「!」
母「なら、準備しなくちゃ!ほら、着替えてらっしゃい」
『はーい』
たまには外に出てみるのも悪くないかなと、少しだけ前向きな気持ちで久しぶりのお出かけの準備を始めた。
カランカラン
「いらっしゃいませ~」
最近よく母から聞くポアロという喫茶店に母と共にきた。中へはいると、若そうなお姉さんが笑顔で迎えてくれた。
「あっ!音鳴さん!こんにちは、来てくれたんですね~!」
母「こんにちは、梓ちゃん」
母「梓ちゃんに覚えてもらえるなんて私もすっかり常連ね!」
梓「いつもありがとうございます!」
母よ、店員さんと仲良くなるなんて一体どれだけの頻度で来ているんだ。
梓「あら?今日はお二人ですか?」
ビクッ
『…』
母「そうなの!今日は娘を連れてきたの!」
梓「じゃあ、この子が言ってた娘さんですか?」
母「そうなの!」
何、人の居ない所で人のこと喋ってんだ、オイ
『…初めまして』
梓「か…」
『…か?』
梓「かかか、可愛いぃぃ!」
『!?』
梓「音鳴さん美人さんだから娘さん会ってみたかったんです!やっぱり娘さんも可愛いぃぃ、そして美人さん!」
可愛いって言われた?はい?てか、この店員さんテンション高くね??第一印象は人柄がよさそうな人だなぁと思った。まぁ、確かに母は美人だ、通行人に二度見されるくらいには美人だ、そしてその遺伝子を引き継ぐ私もまた美形だとは思う、うん。否定はしない。
母「でしょでしょ!」
梓「はい!」
母と店員さんの梓さん?との熱血トークが行われていると、
「梓さん、大きい声が聞こえたのですが、何かあったんですか?」
カウンターの奥から金髪の褐色肌、そして童顔のイケメンがでてきた。
梓「安室さん!すみません!うるさかったですよね…」
安室「いえ、今は人も少ないので大丈夫ですがほどほどに」
母「私も、つい夢中になっちゃってごめんなさい…」
安室「音鳴さん、いらっしゃいませ」
安室「お気になさらず、立ち話もなんなので席へご案内します」
安室「おや?今日はお子さんもご一緒でしたか」
母「そうなんです!」
安室「とりあえず、席へご案内します」
私達を席へと案内する安室という店員…私は、もともと人を観察するクセがあり、いつも第一印象を決めて苦手などを判断するのだが…この男の第一印象は…
『気持ちわるい…』
口に出ていたことでハッとし、ずっと話していた母と安室さんの視線を一気に感じ、バツが悪い顔で正直なことを言う。
『安室さんの笑顔なんか気持ち悪い…』
安室「!」
母「こら、霞音!失礼でしょ!」
安室「いえ、いいんですよ」
母「すみません…いつもはこんなこと言わないんですが…」
安室「気にしないで下さい」
と、安室さんが笑顔で答えた所で母のスマホがなった。
母「すみません、少しはずします…」
不安そうに外に行く母を目で追い、外に出たタイミングで安室さんに声をかけられた。
安室「…さっきのこと、どうしてそう思ったのか聞かせくれないかい?」
『…』
聞かれたら答えるしかない…先ほど同様顔を歪めながら正直に思ったことを話した。
『店員さん…さ、それ作ってるでしょ…店員としてじゃなくて、ポアロ店員の安室自体を…』
安室「!」
安室「…どうしてそう思うんだい?」
『…はぁ』
『感だよ感、確信はないけど…嘘をつかれている気がする…』
安室「へぇ…」
バッ
今一瞬、素に戻った雰囲気が全然違う…
安室「警戒されてるなぁ…これでも僕、女性には人気なんですよ?」
眉を下げて参ったなと呟く彼はとても顔がいい、いや、マジで絵になるなオイ。その顔で一体どれだけの女性を虜にしてきたのか…
母「ごめんなさい、仕事の電話が入ってしまって」
とか考えてたら母がきた
安室「いえ、気にしないで下さい」
安室「ご注文はいつものでよろしいですか?」
母「そうですね!」
安室「では、ハムサンドとアイスコーヒーで」
安室「霞音ちゃん?だったかな?」
無言で頷く
安室「注文は何にする?」
少し焦っている母をスルーし、メニューを一通り見た後少し考え
『…コーヒーゼリーで』
と、頼んだ
『…トイレ』
母「えっ?あぁ、いってらっしゃい…」
何か余計な事を聞かれそうなので席を立つ面倒くさいので母に任せよう
安室「えっと、コーヒーゼリーだけですが大丈夫ですか?」
母「あ、あぁ大丈夫です…」
安室「…いつもこんなに小食で?」
母「小食…と言いますか…ええと…」
母「娘は前まで拒食症だったんです…」
安室「!」
安室「そうでしたか…」
母「最近やっと固形物以外…ゼリーなどを食べるようになって…」
安室「ご飯などは?」
母「粥などにすれば少したべます」
安室「そうですか…」
母「娘は…前に、大切だと思っていた人に裏切られてしまって…」
母「その…人間不信になってしまって…」
安室「人間不信…」
母「すみませんこんな話!」
安室「いえ、では僕は戻りますね、ごゆっくりどうぞ」