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自己満!!!!!!
暇つぶしに書いてます。
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いるまとなつは、今日も“いつもの日常”を過ごしていた。
朝、眠たげに抱きついたまま目を
覚まして、 「ん…いるま…起きて…」
なんて甘えた声でなつが揺すってくる。
昼は一緒にコンビニに行って、
「これも買う?」「買う」
「あ、いるまこれ好きだろ」
なんて他愛もない会話をして、
夜はまたぎゅっと抱きしめ合って、
触れ合って、笑って、くっついて眠る。
――毎日同じ、幸せで、温かくて、
周りから見れば何も問題のない日々。
でもそれは、なつにとって
“安心”と同時に“何もないただのループ”
でもあった。
胸の奥で、濁った水みたいな
不安が溜まり続けていた。
笑っている時でさえ、
急に心が沈む瞬間があった。
‥こんな幸せ、続くはずない
‥‥いつかいるまに捨てられる
‥‥‥俺が重いせいで嫌われる
そんな考えが頭の隅でずっと
声を上げていた。
そして――ある夜。
いるまに抱きついたまま、
喉の奥で震えるみたいな息を吐いて、
なつは、ぽつりと零してしまった。
「いるま……ッもう俺、死にたい……
ごめん、こんなこと言って…
ごめんなさいッ、」
その声は、泣き出す直前みたいに
掠れていて、謝りながら震えて、
いるまの肩に爪を食い込ませながら
必死にしがみついていた。
いつもの甘え方とは全然違う。
顔を上げようともしない。
呼吸が浅くて、身体が熱くて、
力が入らない。
まるで、何度も何度も
心の中で同じ言葉を繰り返して
限界まで追い詰められたみたいに。
“その一言”を聞いた瞬間、
いるまの世界が一度に崩れた。
「……なつ?」
優しい声を出そうとしても
震えてしまった。
抱きしめる腕に、
今までとは違う焦りがにじむ。
いるまは、なつの震える声を聞きながら、
背中をそっと撫でて、息を整えるみたいに
ゆっくり返した。
「……なつ、理由だけ聞かせて?
怒らないから。どんなこと言われても、
離れないから。」
声は優しいのに、どこか不安で
揺れていた。
大事な人が崩れていく音を、
目の前で聞かされているみたいで。
なつは、ぎゅっといるまの服を
握りしめた。
指が震えて、力が抜けそうで。
それでも離れたくなくて、
必死にしがみつく。
「……ッしあ…わせなのが、怖い……」
喉が詰まりながら零すたびに、
涙がポタポタ落ちた。
「いるまに、捨てられるわけ……
ないって…… 頭ではわかってんのに……」
呼吸が乱れて、鼻にかかった声で続ける。
「なのに……っ
心のどこかが勝手に思うの……
“いつか捨てられる”って……」
なつはもう、ぐちゃぐちゃに泣いていた。
感情を隠せなくて、抱きついた腕に
縋るように力を込める。
「俺、重いし……
約束だって守れねぇし……っ
迷惑ばっかで……
いるまみたいないいやつ……
疲れさせるだけだって……
わかってんのに……!!」
声が裏返った瞬間、
いるまの胸のあたりに“ぽた、ぽた…”と
涙が落ちる音がした。
なつは続けたくないみたいに口を
噛みしめたけど、
抱きしめる腕だけは絶対に
離れようとしなかった。
捨てられるのが怖くて、
でも離れたくなくて、
心がぐちゃぐちゃになって、
どうしようもなくなって
――やっと口から出た本音。
いるまは、泣きじゃくるなつの
頬をそっと拭って、
一度だけ深く息を吸い込んだ。
その表情は――悲しさでも怒りでもなく、
“必死に愛する人を引き止めようとする顔”
だった。
そして、言った。
「じゃあさ、なつ……」
ゆっくり、震えた声で。
「“一緒に死の?”」
言葉だけ聞けば危うい響きなのに、
いるまの声はどこまでも優しかった。
まるで“自分ひとりで行かせるわけない”と
覚悟を示すみたいに。
でもその直後、
なつの肩を抱き寄せながら続ける。
「……俺がいないと死ねないでしょ?」
「俺もなつがいないと生きる意味ないし。」
いるまはゆっくりと、なつの後頭部に手を
添えた。
「でも――」
耳元に、そっと言葉を落とす。
「一生 ”ずうっといっしょ”って
約束しただろ」
ぎゅっと抱きしめる腕に、強さが宿る。
「なつが苦しい時は、俺も一緒に苦しむ。
なつが泣くなら、隣で泣く。
消えたいって思う夜は、手ぇつないで
離れねぇ。」
息を震わせながらも、真っ直ぐに続けた。
「だからさ……“ひとりで死のうとするな”。
死にたくなるくらいしんどいなら、
俺のこと巻き込めよ。」
胸元に顔を埋めて泣き続けるなつの
背中を、 いるまは何度も優しく撫でた。
「なつは重くねぇよ。
俺が“受け止める”って決めたから。」
いるまの胸元に顔を埋めて泣いていた
なつが、かすれた声で問いかける。
「……俺のこと、嫌い……?」
いるまは一瞬も迷わなかった。
なつの頬を両手で包み込んで、
涙で濡れた目をまっすぐ見て言う。
「好きだよ。」
即答。
なつの胸の奥で、
張りつめていた何かが少し揺れる。
「……ほんと?」
不安と期待が混ざった、弱くて必死な声。
いるまは、頷きながらさらに
強く抱きしめた。
「本当。愛してる。
なつがどれだけ弱くても、重くてもな」
その言葉が落ちた瞬間、
なつの呼吸が小さく震えた。
「……ほんとに……
一緒に死んでくれるの……?」
涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、
子どもみたいにしがみついてくる。
いるまはその背中を優しく撫で、
耳元でゆっくり囁いた。
「当たり前だろ。」
「俺はなつの隣にずっといたい。
なつのいない世界なんか、意味ないし。」
なつの指が震えながらいるまの服を掴む。
「俺も……ッ
いるまと……一緒にいたい……
ずっと……」
声が途中で詰まって、
涙がぽたぽたと落ちていく。
いるまはその涙を指で拭いながら、
なつの額にそっとキスを落とした。
「じゃあ—」
もう一度、しっかりと抱き寄せて言う。
「“死ぬ”って約束したなら、
それまでは俺と
一緒に生きてもらうからな。」
なつはきゅっと目を閉じて、
いるまの胸に顔を埋めながら小さく頷いた。
「……いるま、離れないで……」
「離れねぇよ。
なつが望む限り、ずっと隣にいる。」
涙で濡れたまま抱き合う2人の夜は、
ゆっくりと深く沈んでいった。
最後の力を振り絞るみたいに
なつの肩が小さく震えて、呼吸だけが荒く
続いていた。
涙で濡れたままの瞳はもう半分閉じていて、
泣き声も嗚咽も、だんだん弱くなっていく。
胸に顔を押しつけたまま、
小動物みたいに震えながら息を吸って、
吐いて――
やがて、
「……っ、ひっ……ぁ……」
途切れ途切れの呼吸のまま、
なつの身体から力が抜けていった。
いるまはそっと背中を撫でながら、
耳元で落ち着いた声をかける。
「なつ、もう大丈夫。
どこにも行かないから。」
なつは返事をしようとしたみたいに
いるまの服をきゅっと握りしめたけど、
そのまま脱力して指先が少し緩んだ。
――寝落ちた。
泣き疲れて、
安心しきって、
ぎゅっと抱きついたまま眠ってしまった。
頬には涙の跡が残ってて、
まつげの先まで濡れていて、
それでも表情は、さっきよりずっと穏やか。
いるまはゆっくりブランケットを引き寄せ、
なつが離さない腕に合わせて中に
滑り込むように横になる。
眠ったなつを起こさないように
そっと額にキスを落としながら囁いた。
「……なつ。
こんな顔になるまで抱え込むなよ……」
手を握ると、
眠ってるくせにきゅっと握り返してくる。
その小さな反応が愛おしくて、
いるまは胸の奥がぎゅうっと
締め付けられる。
なつの寝息がゆっくり落ち着いて、
部屋の空気も静かに沈んでいく。
いるまはそのまま、
眠るなつの頭を優しく撫で続けた。
「……おやすみ、なつ。」
なつの泣いた後の温もりを抱えながら、
夜は静かに、更けていった――。
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