テラーノベル
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キャラ崩壊があると思います
通報は🙅♀
ボールの音が、合わない。
それだけで、すべてが崩れていく。
体育館には、いつも通り人がいる。
声も出ている。走ってもいる。
なのに──
「今の、誰が取るんだよ!」
田中の声が響く。
でも、誰も答えない。
ボールが落ちる。
床に当たる音が、やけ大きい。
「……すまん」
誰かが言う。
でも、その謝罪に意味はない。
ラリーは続かない。
影山はボールを持ったまま止まっていた。
“誰に上げるか”
それを考えている時間が、長すぎる。
速攻はもうない。
視線の先に“あの位置”がある。
そこに、いない。
分かっているのに。
手が、勝手に迷う。
「影山!」
声が飛ぶ。
反応が遅くれる。
トスがズレる。
田中が空振りする。
「っ……!」
舌打ち。
空気が、悪くなる。
「今の、合ってねぇだろ」
田中が言う。
「合わせた」
影山は短く返す。
でも、それは“正しさ”のであって、
“バレー”の言葉ではなかった。
沈黙。
月島は、静かに言う。
「ズレているのは、トスだけじゃないでしょ」
誰も否定できない。
ズレているのは、全員だった。
山口が、少し震えた声で言う。
「なんかさ……全部、タイミング合ってない」
「分かってる」
菅原が答える。
でも、その声は明るくない。
午前の練習。
ミスが続く。
レシーブが上がらない。
ブロックが間に合わない。
そして、誰も笑わない。
午後。
さらに崩れる。
「今の、普通なら繋がってるだろ!」
田中が叫ぶ。
「普通ってなんですか」
月島が返す。
言い返した瞬間、空気が止まる。
しまった、という顔。
でももう遅い。
“普通”が分からなくている。
影山は、ボールを見ていた。
トスを上げる。
速い。
でも、誰もいない。
「……くそ」
小さく呟く。
誰にも届かない場所。
夜に近づく。
体育館の音が減っていく。
それでも練習は続く。
義務のように。
「もう一本!」
澤村の声。
その声だけが、まだチームを繋いでいる。
でも、それも限界に近い。
最後のラリー。
ボールが上がる。
影山が走る。
視界の端に“空白”が見える。
そこに向けて、手が動く。
でも──
誰も、いない。
トスは宙に浮き、落ちる。
誰も触れない。
ドン。
終わる音。
静か。
誰も動かない。
「……もう無理じゃねぇの」
田中の声。
誰も否定しない。
山口が、下を向く。
月島は目を閉じる。
影山は、ネットの向こうを見ている。
そこには何もない。
でも、まだ見ている。
「……戻すしかないって、言っただろ」
澤村の声はかすれていた。
でも、その言葉はもう“命令”じゃない。
願いだった。
夜。
体育館の電気が落ちる。
コートに影が広がる。
ボールが一つ、転がっている。
誰も触らない。
ただそこにある。
そして、
その空白は、少しずつ広がっていた。
見てくれてありがとうございます<(_ _)>
コメント
2件
うますぎるってぇ…!?続き楽しみに待ってます!