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#9
side wki
あの日、思い切って言葉にしてから、もう3日が経った。
放課後も休み時間も、大森は変わらず隣にいてくれたし、いつもどおり笑って話してくれる。
でもそれだけだった。
あの「嫌じゃない」って言葉のあと、大森は何も言ってこない。
いつもより少しだけよそよそしいような気もするし、逆に前より笑ってるようにも見える。
俺の気にしすぎかもしれないけど、考えれば考えるほど、胸の奥が落ち着かなくなる。
何が怖いって、大森の答えがNOだったらどうしようってことだった。
でもこのまま何も聞かずにいるのも、もっと怖かった。
そして、その日の帰り道。
いつものように大森と二人で歩いてるとき、俺はとうとう言葉を飲み込めなくなった。
wki「なあ、大森」
omr「ん?」
振り向いた大森は、少しだけ笑った顔をしていたけど、その目が不安げだった。
wki「この前のさ……俺の気持ち。考えてくれた?」
大森は一瞬で視線を逸らして、前を向いたまま足を速めた。
omr「……あー……その、うん、考えたけど、さ……」
wki「答え、聞きたいんだけど」
俺は追いついて隣に並ぶ。
胸がどくどくしてた。
声が少し震えてたかもしれない。
でも今言わなきゃ、ずっと言えなくなる気がした。
大森は小さく息を呑んで、それから俯いたまま、ほんの少し黙った。
omr「……言わなきゃダメ?」
wki「うん。はっきり聞きたい」
自分でも、ずるいと思う。
大森が恥ずかしがりなのも知ってるのに、それでも聞きたかった。
いや、聞かずにはいられなかった。
しばらくして、大森は立ち止まって、顔を少しだけ俺に向けた。
頬が赤くて、唇を何度も噛んで、言葉を探しているみたいだった。
omr「……俺も……」
wki「え?」
omr「俺も……好き……だよ」
小さい声だった。
でも、はっきり届いた。
頭の中が真っ白になった。
信じられないくらい嬉しくて、胸の奥が熱くなった。
wki「……ほんとに?」
omr「ほんとだよ……っ、何回も言わせんなよ……恥ずかしいだろ……」
大森は顔を真っ赤にして、視線を逸らしたままだったけど、その耳まで赤く染まってた。
wki「じゃあさ……」
俺は息を吸って、大森の顔を覗き込んだ。
wki「付き合おう。俺と」
大森は一瞬、驚いた顔をした。
でもすぐに目を伏せて、小さくうなずいた。
omr「……うん。よろしく…」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥から何かが溢れるみたいに嬉しくて、思わず笑いがこぼれた。
wki「……ありがとう」
omr「……なんでお前がありがとうなんだよ……」
wki「だって、好きなやつと両想いになれたんだぞ?」
そう言ったら、大森はもっと顔を赤くして、「……バカ……」って小声で呟いた。
夕焼けが、二人の影を長く伸ばしていた。
隣にいるのに届かないと思ってた距離は、たぶん今、ちゃんと繋がった。
その帰り道が、今まででいちばんあたたかくて、少しだけくすぐったかった。
side wki
家に帰って、自分の部屋のベッドに寝転んだ瞬間、改めて思った。
_夢じゃないんだな。
何度も思い返す。
信号待ちのときの大森の照れた顔、頬の赤さ、小さいけど震える声。
全部が愛おしくて、胸の奥がじんわり熱くなる。
あいつ、絶対に恥ずかしかったはずなのに、それでもちゃんと言ってくれたんだって思うと、もっともっと好きになる。
スマホを握って、連絡したい気持ちがこみ上げてきたけど、今日は我慢した。
きっとあいつも、今ごろ恥ずかしさでいっぱいいっぱいだろうし。
でも_明日からは、堂々と「好き」って言えるんだよな。
あの距離を縮めたいって願ってた俺が、今日やっと隣に立てたんだ。
なんてことない夜のはずなのに、世界が少しだけ輝いて見えた。
明日、大森に会うのが楽しみで仕方ない。
あいつの顔を見たら、また胸が苦しくなるんだろうな。
でもそれも全部含めて、たまらなく幸せだった。
side omr
「付き合おう」って言われて、「うん」って答えたときは、頭が真っ白だった。
家に帰って玄関を閉めた瞬間、恥ずかしさが一気に襲ってきた。
omr「…はあぁぁ……」
顔から火が出そうなくらい熱くて、鞄を放り投げて自分の部屋に飛び込んだ。
ベッドに顔をうずめて、何度も思い返す。
若井の真剣な顔。
ストレートに「好き」って言ってくれた声。
それに返事をする自分の声の震えまで、全部覚えてる。
恥ずかしい。
恥ずかしいけど_でも、心の奥から嬉しいって気持ちが込み上げてきた。
ずっと隠してきた想いを、やっと言えた。
しかも、若井が先に言ってくれて。
「嫌じゃない」どころか、本当はもっとずっと前から好きだったんだって、胸の奥で何度も繰り返す。
枕を抱きしめて、布団の中で転がりながら、顔が熱くなるのを抑えきれない。
明日、どんな顔して会えばいいんだろうって考えると、また心臓が跳ねる。
でも不思議と、怖くはなかった。
若井が隣にいてくれるってわかってるから。
あいつの声も笑顔も思い出すたび、自然と顔がほころんでしまう。
omr「……ほんと、バカだな……」
でも、そのバカに好きって言われたことが、今は世界で一番嬉しかった。
ほい、やっとくっつきましたねー
まだ、この先ありますよ?
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