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教室リーグ~底辺モブ生徒が分析スカウターで超名門校の序列をぶっつぶす~
第123話 - 第123話 【絶望と覚悟の夜】救世主は明日に間に合わない!満身創痍の部員を繋ぐ、神話級の姉の言葉
11
1,702文字
2026年06月29日
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大会三日目の夜。
洛北祥雲学園バスケ部の宿舎ホテル。ミーティング会場は、重い沈黙に沈んでいた。
床には使い終えたテーピング。
バケツの氷は溶け、薄い水音だけが続く。
勝ったはずなのに、誰も笑っていない。
誰もがボロボロで満身創痍だった。
疲労と、明日への静かな絶望だけが、部屋を満たしていた。
「明日も、天宮くんに頼るのか」
「このままじゃ、マジであいつ、壊れるぞ」
「けど、天宮に出場してもらわないと・・・」
押し殺した弱音が、あちこちから漏れる。
副主将の上夷壮一郎が、資料をぱらぱらとめくるだけの烏丸に視線を向け、低く口を開いた。
「烏丸先生。教頭先生がおっしゃっていた臨時監督の件は、どうなっていますか」
松川大志も続ける。
「そうです。臨時監督は、いつ合流するんですか。相手はここから格段に強くなる。僕たちだけじゃ、限界が来ます。いや、もうすでに限界かも」
烏丸は心底、不思議そうに首をかしげた。
「私が臨時顧問だがそれでは不満か?」
そのあまりにも空気を読まない一言。
ミーティング会場に凍りつくような沈黙が落ちた。
誰も言葉を継げない。天宮でさえ、返す言葉を失っていた。
(ああ。この人は、何も知らない。――何も、聞かされてないんだ)
松川は、心の中でうなだれる。
その沈黙を断ち切ったのは、ノックの音だった。
扉が静かに開き、黒のコートを羽織った女性が一歩、二歩と入ってくる。
天宮澄玲だった。
彼女は部員一人ひとりの顔を確かめ、丁寧に一礼した。
「お邪魔します。突然、部外者がごめんなさい。でも、どうしても皆さんに伝えたいことがあって来ました」
「みんな、ここまで、よく勝ち抜いたわ。――私は七年前の洛北祥雲学園女子バスケ部キャプテン、天宮澄玲です。蓮司の姉でもあるけれど、今日は先輩として来ました」
近くに立つ弟の肩へ、そっと手を置く。
「蓮司も素晴らしかったわ。姉として、改めてあなたを誇りに思う」
「姉さん、どうして?ここに?」
「私は、仕事の都合でこのあと、東京を離れなければならない。だから今夜、みんなに伝える必要があった」
声量は大きくない。
だが部屋の支配者が入れ替わったことを、誰もが直感した。
澄玲は短く息を吸い、核心を告げる。
「さっき話に出た臨時監督の件――明日の夕方、彼は合流します。理事会で反対意見が出て、調整に時間がかかりました。遅れてしまって、本当にごめんなさい」
上夷が食い気味に問う。
「夕方?じゃあ、明日の準々決勝は―また監督抜きか?」
「残念だけど――間に合わない。明日の準々決勝、仙台代表・神和学院戦は、今いるメンバーで戦ってください」
一拍おいて、彼女は続けた。
「ただし、支えはゼロじゃない。学園直轄のアスレティックトレーナーは帯同します。コンディション管理は全力で。スカウティング資料は私が集めたものを置いていきます。烏丸先生、登録上の手続きと審判対応だけ、お願いします」
烏丸は気圧されながらも、小さく頷く。
澄玲は円の中心に視線を戻した。
「采配は――キャプテン、あなたが執る。蓮司」
天宮の喉仏が、わずかに上下する。
澄玲は弟を見つめ、静かに告げた。
「監督不在、不安なのはわかる。けれど今あなたが迷えば、全員が沈む。明日の40分、あなたの背中が王国の旗になるの」
誰かの呼吸が深くなる。
崩れかけていた背筋が、一本ずつ立ち直っていくのがわかる。
「上夷くん、ディフェンス面で蓮司を支えてあげて。長峯くん、あなたはオフェンス面で蓮司をサポートしてほしい。松川くん、ベンチの声出しはあなたの役目。全員を戦場に立たせ続けて」
名前を呼ばれた部員の目に、光が戻る。
澄玲は最後に、部屋全体を見渡した。
「勝てるかどうか、じゃない。勝つ準備を、今この場で終わらせるの。――あなたたちなら、できるわ。」
たったそれだけ。だが消えかけていた火は、再び小さく確かな炎になった。
天宮がゆっくりと立ち上がる。
握った拳はまだ白い。けれど、その声は揺れていなかった。
「明日は俺が指揮を執る。さらにフル出場する。全員で勝つ。行こう」
返事は最初は小さく、やがて重なり、部屋を震わせた。
「おう!」
氷の溶ける音は止んでいない。
だが、その音にもう絶望は混じっていなかった。
コメント
1件
ああ、もう、胸が熱くなりました……!澄玲さんが「消えかけていた火を再び灯す」って、まさにその通りだなって思いました。一人ひとりの名前を呼んで役割を託すシーン、すごくよかったです。“あなたの背中が王国の旗になる”なんて言われたら、蓮司くん、絶対に折れられないですよね。明日の試合がもう気になって仕方ないです……!
#黒羽快斗
千導 渉
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