テラーノベル
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翌朝、起きるとそれまでの疲れが嘘の様にスッキリしていた。隣のベッドを見ると、ゼルゼディス様の姿は無かった。
私は着替えと薄い化粧を済ましてリビングに向かった。
なにやらほんのりと良い香りがする。
「エシャロット起きましたか?」
「え、えぇ、おはようございます。
ですが、ゼルゼディス様、何をしておられるのですか…?」
私は尋ねる。
「サーカスの練習をしているように見えますか?
目玉焼きを作っているんですよ。」
ゼルゼディス様は少しリラックスしているのか、冗談混じりにそう言った。
「でも、料理は下女の仕事ですわ。」
「その下女が居ないのです。」
ゼルゼディス様は目玉焼きをお皿にのせる。
「ゼルゼディス様はどうして、その、そんなに貧しい暮らしをされているのですか…?」
私は言葉を選びながらも聞いてみた。
「何故って?
宮廷魔導士の中でも下っ端の私にはろくな給料などありませんから。」
ゼルゼディス様は何を当然なというように答えた。
「で、で、でも、領地をお持ちならば、農民からの税収を上げるとか…
いくらでも方法は…」
私は言う。
しかし、それは…
「エシャロット…
この地域ではね、土が痩せ細っていて、ろくな作物が育たないんですよ…
それでも民達は私を慕い、わずかに出来た作物を届けてくれる…
税収を上げると言う事は、農民に死ねと言っているのと同じ事です。
…いえ、ご令嬢育ちのあなたには理解出来ないかもしれませんが…」
ゼルゼディス様はおっしゃる。
私は自分を恥じた。
何不自由なく育てられ、前世で過労死するほど働かされていた事をすっかり忘れていたからだ。
「ゼルゼディス様…
ごめんなさい、私…」
「いえいえ、そんな顔しないで下さい、エシャロット。
実情を知らないんだから、仕方ありませんよ。
実際にあなたには苦労をかけるでしょう。
ドレス1つ買ってあげられないかもしれない…」
ゼルゼディス様も悲しそうな顔をする。
「あら、ドレスなんて堅苦しいだけですわ。
ソーセージは私に焼かせて下さいな。」
私はにこやかに言った。
「でも、料理などご令嬢のあなたが…」
「私はもう令嬢ではありませんわ。
あなたに嫁いだのですから、平民ならば、料理は妻の役目でしょう?」
私はフライパンを掴んだ。
焼き方なら心得ている。
何せ、ブラックファミレスに連勤していたのだから…
「出来ましたわ!」
「おぉ、見事な焼き加減です!
しかし妙ですねぇ…
なぜ、こんなに上手いんでしょう…」
「い、い、いいから、いいから!
ご飯にしましょう!」
私は誤魔化して言った。
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