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ゆゆ

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#初投稿
たこ焼き
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コメント
3件

勇気を出すんだ!!!! 今日2本投稿されてる🥹 ありがとうございますー!!!
食事を終え、お腹も心も大満足で部屋へと戻る。
「はぁ〜、北海道まじさいこ〜」
「ほんまそれよな〜。こんな贅沢、人をダメにしてまうわ〜」
部屋に戻るなり、僕たちはどちらからともなく畳の上にゴロンと寝っ転がった。
「もう、東京戻りたくなーい」
「俺もずっと、じゅうと2人でここで暮らしたーい」
「……2人でいるだけなら、東京でもどこででもいれるだろ」
「ま、まぁそうやな!なんや急に照れるわ!」
天井を見上げながら、そんなくだらない会話を交わす。
しゅんは相変わらず嬉しそうに顔を上気させていた。
「そういえばさ、僕たちまだ大浴場に行ってないよね?」
「あ、それな〜。……あ! あとな、じゅう。今日は夜に『夜泣きそば』のサービスがあるらしいから、それ絶対に食べるで?」
「え! なにそれ、そんなんあったの?」
「うん!俺も昨日はバタバタしてて忘れてたんやけどな!」
「今日は絶対行こ!」
「当たり前や! じゃあもうちょっと部屋でゆっくりしたら、まずは大浴場いこな!」
そう言って起き上がった時、ふとテレビ台の下の棚が目に入った。
確か昨日、あそこに何か置いてあったはず……。
「しゅん、見て! これ!!」
「んー? なにー?」
「コーヒーセット! しかも自分で豆を挽いて淹れるやつ!!」
「えー? そんなん部屋に置いてあったんや!! 最高やん、やろやろ、淹れよ!」
すぐさま食いついたしゅんと一緒に、小さな手挽きのミルを回す。
ゴリゴリと硬い豆が砕ける小気味いい音と共に、部屋の中が一気に芳醇な香りで満たされていった。
丁寧にお湯を注ぐと、ふっくらと膨らむ珈琲の泡。
「あぁ……めちゃくちゃええ香りやわ〜」
淹れたてのコーヒーが入ったマグカップを片手に、僕たちは窓際のソファーにふたりで並んで腰掛けた。
窓の外には、朝日に輝く北海道の雄大な景色が広がっている。
お腹いっぱいの後の、温かいコーヒー。
張り詰めていた心が、じんわりと、どこまでも優しく解きほぐされていく。
「あかん、もう幸せすぎて動けやん~」
ソファーに深く身体を預けて、しゅんがふにゃふにゃに蕩けた顔で笑う。
「だーめ!! 大浴場いくよ!!」
「えー、もうちょっとだけこうしてたい〜」
なんて甘える彼の腕を引っ張りながら、僕も残りのコーヒーをごくりとゆっくり飲み干した。
大浴場は地下にあるらしい。
着替えを持って部屋を出て、エレベーターを降りると、そこにはガラス張りの広々とした湯上り処が広がっていた。
「あ、待って、じゅう! コーヒー牛乳あるやーん!」
しゅんが目ざとく見つけたのは、湯上り後に自由に飲めるようにと設置された、保冷ケースに並ぶサービスのコーヒー牛乳だった。
「それ、湯上り用でしょ!」
「ええやんっ! 先行投資や!」
わけのわからない言い訳をしながら、しゅんは瓶の蓋を器用に開けてグビグビと豪快に飲み干していく。
「ぷはーーー!! さいこー!」
「え、飲むのはやぁ〜」
「これでまた背おっきなるなぁ!」
「それ以上でかくなってどうすんの? 見上げるの疲れるんだけど」
「はっはっはー! ええやろー! もっと見上げてやー!」
「うざ……。ふふっ もうさっさと行くよ!清掃時間で閉まっちゃうよ?」
「わっ、ほんまや! 急がなっ!!」
大浴場には内湯が3種類ほどあり、サウナや岩盤浴まで完備されているようだった。
露天風呂へと足を運ぶと、そこには風情のある五右衛門風呂があり、周りには鮮やかに色づいた紅葉が朝の光に美しく映えていた。
「あかん、今回は時間足らんなぁ。あとでまたゆっくり来て、サウナとか岩盤浴も絶対入ろうな!」
利用時間の終了が近づいていたため、今回はささっと一通りのお湯を巡って脱衣所へと出た。
今度こそ正真正銘の湯上り。
僕はさっきから楽しみにしていたコーヒー牛乳を冷たい瓶のままいただく。
お湯で火照った身体に、甘い液体が優しく染み渡っていく。
ふと隣を見ると、しゅんはまたしてもコーヒー牛乳の瓶を傾けていた。
……こりゃ、身体が大きくなるわけだ。
「あ! じゅう、見てみて! ここで夜泣きそば食べれるんやって!!」
湯上り処の案内板を見つけたしゅんが、嬉しそうに声を弾ませる。
「本当だ! 今日は絶対忘れないで来よ!!」
「あ! 待って!! アイスも食べれるやーん!! 15時から25時やって!!」
「ってことは、サウナのあとに夜泣きそば食べて、さらにアイスってこと!? 最高じゃん!」
「ほんま、今回の旅行2泊にしてよかったな! 昨日だけやったら全部逃してるとこやったわ〜」
「いや……昨日は僕があんなに慌てさせちゃったせいだし、そもそも俺がお酒飲みすぎたせい。そっから全部だめになったんだ。だから、今日は部屋に戻るまで絶対にお酒は飲まない!!」
そこまで一気にまくしたてて、僕はハッと口を噤んだ。
お酒、パニック、そして昨夜の暗闇。
楽しさの中で一瞬だけ頭をよぎった昨夜の出来事に、自分の表情がわずかに強張るのが分かった。
「……じゅう?」
すぐに僕の異変に気づいたしゅんが、心配そうに僕の顔を覗き込んできた。
いつだって彼は、僕の心の揺れに誰よりも敏感だ。
覗き込んできた彼の瞳を見つめる。
朝日のなかで優しく揺れるその瞳には、恐怖も、拒絶も、軽蔑もない。
ただ、僕を丸ごと包み込んでくれる圧倒的な安心感だけがあった。
その温もりに背中を押されるように、僕の胸の奥で、ずっと固く結ばれていた塊がふっと解ける音がした。
「あのさ……しゅん。なんかさ……俺、普通に話せそう、かも」
「ん? ……あの事、?」
しゅんの声のトーンが、優しく静かなものに変わる。
「うん。なんかしゅんにだったら、ちゃんと普通に話せる気がして……」
「……そっか。なら、じゅうの無理せん程度に、聞かせてもらえたら嬉しいかも。俺、いつでも準備できてるから」
正直に言うと、今だってまだ、あの過去を口にするのは怖い。
けれど、この人が隣にいてくれるなら、もうあの暗闇に引きずり込まれることはないって、そんな確信に近い予感があった。
「ありがと。……あとで、ちょっと時間頂戴?」
「うん……わかった、待ってるな」
しゅんは僕の手首をそっと優しく握り、トントンと安心させるように叩いてくれた。
僕は深く息を吐き、心地よい冷たさの残るコーヒー牛乳を、今度は最後まで一気に飲み干した。
to be continued………