コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
今の時間は午後十五時、丁度おやつ時だ。
俺はフサキンに呼ばれ、廟堂に行くところだった。
『お酒が余っているから、一緒に飲んで欲しい』ってことだ。
酒を買うなんて珍しい。なんせ、アイツは酒に弱いから。
まあ、急に飲みたくなったんだろう。
何を買ったのか誘われた電話越しで聞いてみたら、『日本酒の爽酒』とのこと。
日本酒にそんな種類があったことを、まず知らなかった。
俺自身、日本酒よりはカクテルとかの方が飲む。
カクテルって、色んなフルーツとかお酒とかを混ぜて作るだろ?それが美味しいんだ。俺は一つの味より、程よく混ざった味が好きなんだよ。
かといって、日本酒が嫌いな訳では無い。
なんなら全然嗜むし、好きな味だ。
ちょっとは日本酒のこと調べてみるか?
そんなことを考えていたら、廟堂に着いた。
ノックもせずに、玄関ドアを開け、中に入る。
とりあえず、最初は大広間に行ってみる。
大体そこにアイツがいて…、あ、いたいた。
俺の分の座布団が一枚と、フサキンが座っている座布団が一枚。そして、コイツはテーブルの前にちょこんと座っていた。
やっぱ正座してるのかとか、姿勢が良いなとか…、そんなことを思いつつ、俺は声をかける。
「フサキン」
すると、フサキンは俺の方に振り向き、ニコッと笑いながら「いらっしゃい」と歓迎してきた。
…やっといてアレだが、ノックもせずに部屋に来たのはお咎め無しらしい。なんで?
それを聞くと、「そんなことより」と言って座布団をぽんぽん、と叩く。
座れってこったな。本人が気にしてないならいいか。
遠慮なく座ると、フサキンはテーブルの上のお猪口に、早速と言わんばかりに日本酒をいれ始める。
とぽとぽ…。
透明な液体が瓶から滴る。
んー、見事なまでに透明。人間の子供が勘違いしそうだ。
実際、そんなケースがあってもおかしくない…。
とか考えてると、フサキンは二つ目にもいれ始めた。
少なくとも前来た時には、二つも無かったんだけどな。
いつの間に買ったのか?そう聞こうとする前に、コイツは答えた。
「買ったんだよ」
今日、君のためにね。と言って、ウインクを決める。
「…エスパーか?」
「顔に書いてあったよ」
…そんなわかりやすい顔してたのかよ、俺。
割とポーカーフェイスのはずなんだがなぁ。
いや、コイツがそういう感情を読むのが上手いだけか。
お猪口二杯のお酒。そして、フサキンがたった今持ってきた、つまみのきゅうりの浅漬け。
「召し上がれ」
その声に合わせて、俺はまず、きゅうりを口に含む。
しゃく、しゃく…。
程よい塩味に、噛む度に涼し気な音を奏でるきゅうり。
あー、これは酒に合うわ…。
当の本人は、目の前で何も飲み食いせず、ニコニコとしながら俺を見つめている。
どれだけ人と飲みたかったんだよ。
なんて思いつつ苦笑する。
「食えよ」
そう促すと、フサキンもきゅうりを食べ始める
二人して、しゃくしゃく…、と美味しそうな音を奏でる。
きゅうりを二人して食べ終えると、お猪口を持つ。
「「乾杯!」」
何も言わずとも、俺達は通じ合うようだ。
日本酒を口に含む。
なるほど。確かにさっぱりしてて、爽やかな味わい。
これなら誰でも飲みやすそう。フサキンも飲める訳だ。
んー、美味い。
バイトばっか詰まってたから、久々のお酒だった。
たまには、いいな。
現在時刻は午後十五時半。
ほぼほぼ全部、俺が飲んでしまった。
…美味しくてつい。
「飲みすぎ」
そんな注意をされるが、まぁ、酔いつぶれた訳じゃないし、なんなら酔ってもないから、大丈夫だろう。
フサキンは、お猪口一杯分を飲んだだけなのに、頬が色づいていた。
やっぱり弱いんだな、酒…。
俺も酒のせいか熱い。多分、頬が紅くなっているんだろう。
手で顔をあおぐ。あちぃあちぃ…。
「顔洗い行こっか」
そんな様子から察して、フサキンはそう言ってくれた。
ぱしゃぱしゃ…。
今回もまた、涼し気な音を奏でる。
あー、冷水が気持ちいい。
洗い終わり、洗面台を譲る。
ずっと座ってて逆に疲れたため、俺は伸びをする。
少しこり固まっていた体が伸びる感覚が心地いい。
洗い終わり、大広間に戻る廊下。
西日が俺達に優しく差し込む。
そんな景色を見て、俺は言う。
「今度は外で飲みたいな」
「月に照らされながら、なんでどう?」
「ロマンチストめ。けど、いいな」
そんなことを話しながら、俺達はいつしかの為の約束を取り付けたのだった。