スクランブル交差点。人が多いというのに、まふゆは私を見つけると手を降って、こちらに駆け寄ってきた。
「これから学校?」
「そうそう。やっぱり学校帰りの人見ると、なんか嫌になるよね。私はこれからなのに〜って」
「でも絵名は朝起きられないじゃん」
「流石に中学は起きられてたから。あと、そこまで全日制に憧れあるわけではないし、今のままでいいかな」
「そっか」
「うん。じゃあ、また二十五時に」
と、言うがまふゆから返事はない。まあいいかと思って、歩みを始めるが、何故か付いてくるまふゆ。
「えっと……?」
「送っていくよ」
「いや別にいいわよ。あの時みたいに雨も降ってるわけではないし、あっ今日はってか今日も学校に行かず帰ろうとだなんても思ってないわよ?」
「普通に。付いていこうかなって」
「そう……まふゆがいいなら、それでもいいけど……」
そんな意味のないことまふゆがすると思わなかった。理由と行動がセットっていうイメージがある。無駄なことはしません、みたいな。偏見だけど。
そうしてまふゆは私の隣に並んだ。二人並んで通学路を歩く。
私の手の甲にまふゆの指先が当たった。するとそれをきっかけに、まふゆは私の手を指先から掬い上げるようにして、ゆっくりと手を繋いだ。いつもの恋人繋ぎ。
はいはい、いつものいつも──
「え?」
「どうしたの?」
「そんな、ナチュラルに、繋ぐ、の?」
「うん。それがどうかしたの?」
「慣れてない?」
「こんなことするのは絵名だけだけど?」
「ああ、そう、そっか、そうなんだ」
でも、意味もなく、こんな手なんか繋いで。まふゆも歩くだけで不安になるという訳でもないだろうに。
「嫌だった?」
「別に嫌じゃないけど」
「絵名がいつでも繋いでいいって言ったのに……」
「だから、嫌じゃないっての。もう、それならちゃんと握ってなさいよ」
「……うん」
頬を少し緩ませて頷くまふゆ。嬉しそう。
そういえば、子供の頃家族とよく手を繋いだかな。いつの間にか繋がなくなってたけど。いつから繋がなくなったか。小学生低学年とかかな。
「まふゆって、ほんと子供っぽいよね」
「そう? 絵名よりは大人だと思うけど」
「は? まあ、大人だからそんな発言気にならないけどね」
「私より手が小さいし」
「はあ、そんな変わらないでしょ!? あとそれは関係ないから」
「少し絵名のほうが小さいなって。繋いでて分かるんだよね」
「……そ」
ちょっとだけムカついたので、まふゆの手を強く握ってやる。そんなに変わらないでしょ、四センチ差。そんな言葉を込めて。
「……絵名のほうが子供じゃない?」
「子供って言う方が子供だから」
「…………」
呆れたような顔でこちらを見たまふゆは、口を開きかけてすぐに閉じた。言いたいことがあるなら言ってほしいが、今日は賢明な判断をしたと思う。
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