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「きょうはあそこか」
空を飛んでいる黒い羽の生えた人…
いや、何かの生物は、静かな住宅街の何の変哲もない一つの家を見つめて言った。
流れる風に溶け込むように進み、その生物は家へと、飲まれるように入っていった。
「こんにちは。」
冷たすぎず暖かすぎず、どこか裏のあるような声で、静かに言った。
「っ!」
その家、部屋の主であるだろう少年…青年は、
聞いたことのない声が部屋の中に聞こえたことにおびえ振り向き、
さらにその生物の背に生えている黒い羽に驚いた。
「そんなに驚かなくても大丈夫ですよ。すぐになれますから」
淡々と表情を変えずに言を放つ生物。
表情に気づくまでもなく、青年は人が入ってきていることに驚いたまま固まっているようだった。
「あれ?どうしたのでしょう?まあいいですよ。」
我に返り部屋の中にいるもう一人の目を見て話を聞き始める。
「どうせお互い独り身で静かに消えていくのですから」
「消え…?」
その生物の言葉に静かに耳を傾けていた青年は、突然出てきた“消える”という言葉に引っかかったのか、
動揺の色が目に現れる。
「まぁまぁ落ち着いてくださいよ。それでは、始めますか…」
この世との別れの儀式を────────。