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「よお」
お前は、伏せていた視線を俺に向けた。
「また来たんだね」
髪が海風に靡いて、波打っていた。
「今日は風が強いね」
青い草木が擦れ、程よく音を立てている。
お前は立って、点字ブロックの手前まで歩き
「綺麗な青空だ」
なんて腕を広げて、楽しそうに笑う。
靡く髪に陽が差し、黒髪を透かす。
照らされた髪は、白い肌に影を落とす。
「綺麗だな」
俺も同感だ。
明るい髪を掻き、屋根の下からお前を眺める。
「こんな天気のいい日は海に限るね」
首筋に沿って、水滴が流れる。
「俺ら、いつも海見てんじゃん」
晴れでも曇りでも雨でも、来ればお前はここにいる。
「確かに」
そして俺もいる。
「なんで海って輝いて見えるんだろうね」
遠くを見つめながら問われる。
「陽が波に反射してるからじゃないのか」
お前がこんなに簡単なことを聞いてくるなんてな。
「厳密に言えばそうなんだけど」
感情的に考えてみると分からないものだね、と続けた。
正直何を言っているのか分からない。
「お前、海にでもなりたいのか」
と我ながら意味不明な言葉を返していた。
「そうかもしれないね」
笑いながらそう言ったお前の顔には、影があった。
「そろそろ時間かな」
赤い陽が俺達の影を長く伸ばす。
「またね」
お前はまた去っていった。