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テラーノベル(Teller Novel)
またねという日

またねという日

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波の綾

♥

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2023年11月19日

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「よお」

お前は、伏せていた視線を俺に向けた。

「また来たんだね」

髪が海風に靡いて、波打っていた。

「今日は風が強いね」

青い草木が擦れ、程よく音を立てている。


お前は立って、点字ブロックの手前まで歩き

「綺麗な青空だ」

なんて腕を広げて、楽しそうに笑う。


靡く髪に陽が差し、黒髪を透かす。

照らされた髪は、白い肌に影を落とす。


「綺麗だな」

俺も同感だ。

明るい髪を掻き、屋根の下からお前を眺める。


「こんな天気のいい日は海に限るね」

首筋に沿って、水滴が流れる。

「俺ら、いつも海見てんじゃん」

晴れでも曇りでも雨でも、来ればお前はここにいる。

「確かに」

そして俺もいる。


「なんで海って輝いて見えるんだろうね」

遠くを見つめながら問われる。

「陽が波に反射してるからじゃないのか」

お前がこんなに簡単なことを聞いてくるなんてな。

「厳密に言えばそうなんだけど」

感情的に考えてみると分からないものだね、と続けた。

正直何を言っているのか分からない。


「お前、海にでもなりたいのか」

と我ながら意味不明な言葉を返していた。

「そうかもしれないね」

笑いながらそう言ったお前の顔には、影があった。


「そろそろ時間かな」

赤い陽が俺達の影を長く伸ばす。

「またね」

お前はまた去っていった。

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