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リョウコは足元に転がった元レッサーだった魔核を拾いながらコユキに言う。
「この辺りはぁ大分少なくなってきたからぁ、そろそろぉ? 先に進もうかなぁってぇ、思ってたんだけどねぇ」
子供の頃は可愛らしい妹達だった……
コユキの言う事を何でも素直に聞く良い子たちだった筈なのに……
チョコレートは子供には毒だからアタシが食べてやるだとか、おかずを二品以上食べるとおねしょするからお姉ちゃんに貢ぐのよだとか、かなり強引な理屈に基づく要求でも、馬鹿みたいに言う事を聞くイエスマンだった筈である。
事も有ろうかコユキにとって大切な二箇所の自宅警備と言う重責を投げ出してこんな場所に来ているとは……
そう落胆しかけたコユキであったが、気持ちを切り替えてみる事にしたのである。
――――いや待てよ…… そうか、ニート経験がないこの子達には些(いささ)か荷が重たかったかもしれないわね…… アタシだって引き籠り始めた当初はどうやって時間を潰すか随分悩んだものだったし…… それにジッとしているとあれがあるのよね、エコノミー症候群が、仕方ない、警備任務を命じる前に確り対処法を講じなかったアタシのミスでも有るんだから怒るのは止めておくとするか……
リョウコの背後を守る様に大蟹のカルキノスが、リエの後方ではスカンダとガネーシャが敵の接近を防いでいる。
「来ちゃったのね、にしても今回は本当に戦う意味がないのに何やってんのよ二人ともぉ、もう、怪我とかしてないわよね? 大丈夫なの?」
「ヨユーよ」
「うん、大丈夫ぅ」
「はぁ、まあ来ちゃったもんは今更とやかく言っても仕方ないわね、今からはお姉ちゃんの後ろに居なさいよ! アンタ等弱っちぃんだからね! ところでどこから入って来たのよ、アンタ等?」
「富士山麓のクラックからムスペルヘイムを経由して来たのさっ、ネヴィラスに導かれてこの先に有る別のクラックから入ったんだがね、敵の集まってる真っ只中に出てしまったんだよ、そこからはもう無我夢中で放射状に戦ってさぁ、バアルとアスタロト、スプラタ・マンユ達が参加して挟撃(きょうげき)を始めてからは楽勝って奴だったよ、ははは」
リョウコの頭の上から発せられた返答にコユキは驚きの目を剥いたのである。
「あ、アンタ、フンババちゃん話せんのね! そう言えば体も透けて無いし心なしか大きくなっているような……」
「ははは、もう少ししたら元の姿に戻れそうなんだよ、そしたらダブルヘッダーでも一人で投げ切れるぜ」
「そ、それは頼もしいけど…… さっきの話からするとスプラタ・マンユとアスタ、バアルちゃんも一緒になって戦っちゃってるって事よね、あれ程言って聞かせたのに、あの馬鹿どもめー」
善悪が庇い立てるように言う。
「いや、先行してクラックに入ってみたら戦いになっちゃってたんじゃないの? それで緊急事態って事で身にかかる火の粉は、って所じゃ無かろうか? ね?」
コユキは大事な所に気が付くのだった。
「あれ? 先にオルクス君達が入ったんなら何でクラックの入り口がそのままだったんだろ? 今までは壊れたまんまだったわよね? 誰かが張り直した? と、か…… むー、アスタ、いいや、あの逢魔が原もそうよね、きっとぉ! って事は脳筋じゃなくて器用な方だわねっ!」
「あーそう言う事でござるかぁー、コユキ殿が途中下車した事を好機とみて、先に乗り込むだけじゃなくて拙者達の足止めに逢魔が原まで準備して時間稼ぎをしたって事でござるなー、んでも何のためでござろ?」
コユキがピンときた顔で答える。
「そりゃあれでしょ、アタシと善悪を消滅させない為なんじゃ無いの? 気持ちは嬉しいけど、世界の危機だってーのに…… 困った物ね……」
善悪は更に首を傾げた。
「でも別行動を取れたのは本当に偶然だったでござろ? 虎大君や竜也君、カイムまでグルだったって事ぉ? だとしたら三人とも名演技過ぎでしょ? 何、子役とかやっていたとか?」
この疑問には答えずに大きな声で返すリエである。
「あれ? 本当だ! カイムちゃんがいる! んでこの二人がオンドレ氏とバックル氏か! 打ち合わせと違うじゃない? そう言えば、ユキ姉とヨシオちゃんはお腹もう良いの? かなり強力な、二日位は悶え苦しむレベルの下剤を使うって話だったよね、お婆ちゃん?」
「ば、馬鹿っ!」
トシ子の慌てた声を聞いてコユキと善悪の目がジトッとした色に変わる。
「お婆ちゃん…… はぁー」
「師匠、事ここに至っては最早隠し立ては無用でござろ? 全部話してっ! でござるよっ!」
「う、うむぅ、仕方ないか…… 実はな――――」