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その後、観念したトシ子がゲロった内容はこうであった。
コユキと善悪の説得で不承不承(ふしょうぶしょう)ながらもその死、いいや存在の消滅を受け入れたかに見えたメンバーは、実の所一人も納得していなかったらしい。
特別な用事が無い限り、基本的に早寝早起きの二人が眠りにつくと、誰が誘った訳でもないのに自然本堂に集まったのだそうだ。
最初はぼそぼそと寂しいだとか悲しいだとか無力を嘆いたりだとか、何とも陰鬱なお通夜みたいな感じだったと言う。
そんな不毛な話し合い、いいやハッキリ言おう、愚痴り合いは、時間経過と共に次第に様相を変化させて行ったのであったらしい。
切欠(きっかけ)は狂信者、イーチ、元のダキア王、ブレビスタの言葉だったと言う。
『そもそもの前提が可笑しいんじゃ無いですかね? 至高の御方(おんかた)を喰らうのが、前回の周回までは箸にも棒にも掛からなかった、えっとぉ、サタナキア? サタンですか? 誰ですその雑魚(ザコ)ってぇ? そんな見ず知らずのゴミに喰わせるくらいなら私が至高の御方達を引き継いだ方が良いんじゃないですかねぇ? うんっ、そうだっ! 私がお二人を喰って引き継ぎますよっ! どうですか皆さんっ!』
狂っているイーチの狂った言は誰一人採用しなかった様である、良かった。
次に大きな声で言ったのは、同じく狂信を心に抱えたハミルカルだったようである。
彼は言ったそうだ。
『コユキ様と善悪様を喰らうとは信徒とも思えぬ言葉である! 決して看過(かんか)出来ぬ事では有るが、今この時に於いてその愚は問題ではない! 今大切な事はお二人を維持しつつ、世界の破局を防ぐに足る方策であろう? であるからして、私は宣言したい! 我が君っ、バアル様がお立ちになる時なのです! 我が君、バアル様がサタナキアを喰らって二柱目の魔神王、その高みへとお登りあそばされる、その時が到来されたのですっ!』
これには二柱の悪魔がすぐさま噛みついたのだそうだ。
真紅(クルムズ)の悪魔、ネヴィラスと、真蒼(マーヴィ)の悪魔、サルガタナスの二柱である。
普段は冷静沈着その物だった二柱が、ムキになった感じで飛沫を撒き散らせながら主張したのは、自らの主、アスタロトがどれ程純粋で我欲を持たぬ、純朴で可愛らしい魔神か、そして二柱目の魔神王に相応しいのはアスタロト、一択、それしか無いっ! の、これまた狂信者の言葉であった。
狂った様にアスタロト、アスタロトと叫び続ける二柱をまず切り崩したのはスプラタ・マンユの三男、パズスの言葉であったそうだ。
『サルガタナス、少しだけ、ほんの少しだけ黙ってくれないかな? 駄目かい?』
サルガタナスは瞬で両目をハート型にして答えたらしい。
『は、はいぃっ! パズス様、す、好きでっすっ! もう喋りません、ええ、ええ、言葉なんて忘れましたともっ! んぐんぐぅ、好きぃ』
『ありがとな』
サルガタナスは言葉を捨てた。
残されたネヴィラスの口を閉じさせたのは、互いにライバルと認め合うシヴァだったようである。
小さなソフビ姿のシヴァはギャーギャー騒ぎ続けて居るネヴィラスに言ったそうだ。
『なあ、焦げ臭い、いいや、真紅(クルムズ)のネヴィラスよ…… お前って口で戦うタイプだったんだなぁ、俺はがっかりだよ、心底がっかりだ…… 口より手、それが俺とお前の不文律だったんじゃないのか? はぁー』
真紅(クルムズ)の魔王は瞬で答えたらしい。
『ばっ、馬鹿を言えっ! 当たり前だろうがっ! 私は何も言っていないぞっ! ムゴムゴムゴ…… 黙ったぞ…… これで良いか? シヴァ?』
『応っ! 良いな!』
『ほっ!』
こんなやり取りが交わされたらしいのである。
その後も少し頭のおかしい狼の口白が、
『俺が食う』
だとか、もっとおかしい人間頭のカルラが、
『アタシが喰らう』
だとか、子ザル姿のフンババが、リョウコが手にした柿の種の賞味期限欄に映し出したメッセージ、
『貴様らが喰らう位なら、俺が喰う!』
とかの意見というか我儘三昧を関わるメンバー全員で、時には説き伏せ、またある時は馬鹿にしながらも、何とか纏め上げて、北の遠征に間に合わせたのが今回の悪巧みであった様である。
急遽拵える事になった死ぬかもしれない程の毒性を持った下剤を手にしたガープは言ったそうだ。
『本当に良いのか? 普通なら死ぬぞ? まあ、あのお二人なら何とか生きているかもしれないが、な……』
その場に寝不足なままで残っていた悪魔(二つの意味で)達は言ったらしい。
『構わんっ! 死んだら死んだ、そこまでの奴って事だっ! 寧ろ、殺せないのか? その薬はぁっ!』
と。