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探し始めて一時間ほど経った。
丘の下から始めて大体丘全体の四分の一ほど終わった所で変化が見られたのである。
ドゴンっ!
丘の一際高い一角から大きな衝突音が聞こえて来たのだ。
その後も続け様に、
ゴンッ! ドンッ! ガンッ! バーンっ! …………
休む事無く何か堅い物に勢い良く突っ込むような音が響き続けているのである。
一同はコユキを先頭に音の発生源に足を急ぐ。
辿り着いた面々の前からは、パッと見て何の変哲もない空間から痛々しい衝突音が響き、時折何かが潰れる様なグシャとかグチャァと言う生々しい音も混ざって聞こえている。
音源を前に仲間達の顔を見回したコユキは、慎重な表情で神器を刺し込んだのである。
パリィーンッ!
「ギャアァーッ!」
「ひっ!」
「む、ムッシュっ!」
「うわぁ、あわわわわぁー」
クラックの入り口が割れ落ちた瞬間、濃い灰色をした人型のレッサーデーモンがコユキ目掛けて飛んで来たのである。
どうやら手負いらしく、顔面から黒ずんだ液体を流し、叫びを上げる口元を痛みに歪ませた悪魔である。
驚いたコユキは、短い悲鳴と共に顔を手で覆い座り込んでしまうのであった。
善悪はコユキに激突寸前にまで迫ったレッサーデーモンを鋭いフックで打ち返し、身を屈めたコユキは足元に転がった、大量の悪魔だった物を目にして驚きの声を上げたのだった。
クラック内の地面に転がるレッサーデーモンは揃って黒に近い灰色で、どの個体も未だ死には至っておらず、呻き声を上げながらピクピクと痙攣、或いはモゾモゾと蠢いていたのである。
「こ、これは、一体」
「コユキ、とどめじゃとどめっ! 幾ら悪魔でも苦しめとくのは不憫じゃろうて!」
「う、うん」
トシ子の声に我を取り返したコユキは瀕死のレッサーたちを解放する様に、素早くカギ棒を刺し込み続け魔核に変えていく。
ピューッ!
「ムッシュっ!」
ドヒュゥーッ!
「ムッシュっ!」
この間にも定期的にこちら目掛けて飛んで来る手負いのレッサー達は善悪の手によって衝突を防がれていた。
周辺の悪魔達を魔核化し、新たに飛来する悪魔達も同様に魔核化しながら進んで行くと、短い通路の先に白銀の世界が現れたが、そこで悪魔達を蹴り飛ばしている人物を目にしたコユキは叫びを上げたのである。
「ちょ、ちょっとリエ! アンタこんな所で何やってんのよぉー!」
「うりゃ! あ、ユキ姉! 早かったじゃ無いの! おりゃ! ちょっと待っててねー、今そっちに行くからぁ! そりゃ!」
雪と氷に埋め尽くされたニブルヘイムで悪魔達を蹴り捲っていたのは、コユキの下の妹リエであった。
今回は自宅警備の為に茶糖家に残った筈のリエが何故ここに? この分だと幸福寺の警備に当たる筈だったリョウコも若しかして……
「ふぅーお待たせね! 一年ぶりの戦いで少しなまってるかな?」
「コユキぃ、ここの悪魔ってぇ、何かぁ物凄くぅ弱いよぉ!」
コユキの予感は当たっていた様だ、リエの後ろからリョウコも登場したのである。
甘ったるい話し方はいつも通りだったが、リョウコの背から伸びた植物の蔓(つる)が、捉えていたレッサーデーモンの首を引き千切りながらであった、普通にグロい。