テラーノベル
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ボクは光の精霊が加護する国ライトコールの第2王子。名前はアリスト。ボクの国には、滅びの予言がある。
滅びを回避するための方法や他国の情勢や情報を自分の耳や目、足で集めている最中だ。今いるのは、土の精霊の国。
「よっ! アリスト」
声をかけてきたのは、最近仲良くなった狐獣人のコウ君だ。彼はボクと違って体の他の部分も狐に近い。
そう、ボクも獣人。正確には猫の獣人の血が少し流れてる。なので、猫の耳と尻尾を持っている。だけど、この耳と尻尾以外は人と変わらない。むかーし、むかしのご先祖様に獣人がいたみたいで、いわゆる先祖返りってヤツだ。だって、父上も母上も人だったから。
「やぁ、コウくん。今日も月がきれいだね」
三つの月を見上げる。うん、今日もきれいな赤、黄、緑色だ。
「あぁ、酒が飲みたくなるよ」
クイッと、コウは独特な手振りで酒を飲む仕草をする。
彼の中の酒はワイングラスで飲むものではないんだろう。
「ここにはいつまでいるんだい?」
「んー……」
国の情報なんかはある程度集まったが、まだ1番欲しい探し物はまったく見つかっていない。
「もうしばらく……かな」
「そうか、頑張れよ」
そう言って、彼は街へと消えていった。
ふぅ……。
いったいどこに行けば、聖女が見つかるのか。
それか、別の方法がどこかにあったりしないだろうか。
探しても探しても見つからない、迷宮に迷いこんだ気分だ。
ボクはもう一度、夜空を仰ぎ見る。
赤、黄、青色の月が光っている。
青色!?
さっきまで、緑色だったのに。
急いで、国に戻らないと……。
ボクは夜が明けるのをまって、すぐに空にむかって指笛を吹いた。
ーーー
「ただいま!」
片眼鏡と立ち上がった寝癖で出迎えてくれるのはボクのお友達。名前はソーイ。執事もできる!! 頼もしいヤツだ。
「仕事の話も山ほどあるが、とりあえず月の件が最優先だ。陛下がお待ちだ」
「りょうかい」
ボクは旅人の服から王子らしい服へと着替えて父・ルザール王陛下の元へとむかう。
「何か見つかったか?」
「予言については何も」
「そうか」
父から落胆のため息がでる。国が滅びるかどうかがかかっているのだから当たり前か……。王座に深く腰かけ頬杖をつきながらこちらをじっと見て言った。
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#聖女
桜井正宗@オートスキル1巻発売
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「異世界から呼ぶしかないか」
「陛下! それは」
「仕方あるまい。この国を守るためだ」
「しかし……」
異世界から召喚する。それには大きな代償が必要だ。それに、
「異世界の住人が、この国のために聖女になるとお思いですか?」
「お前は甘い。この国を守るためなら、犠牲は厭わぬ。たとえ、聖女だとて……」
強い口調できっぱりといい放つ。
「聖女の件はカトルに任せる」
「陛下!?」
兄には婚約者がすでにいるのに、彼女すら踏みつけるつもりなのだろうか。
「もうよい、下がれ」
静かに、しかしはっきりと拒絶の言葉をかけられ、ボクはペコリと一回お辞儀をし部屋を出た。
「駄目だったか」
「うん」
たぶん、あの調子ならすぐに召喚の儀に取りかかってしまうだろう。ボクには止める術なんかない。
この国の人達のためと言われてしまえば……。
ーーー
大きな魔法陣の上に女の子が落ちてきた。
黒い髪、黒い瞳の人の少女だ。
ボクは少し離れた場所からその様子を伺う。
「ここは、どこ……?」
戸惑っている。それはそうだろう。いきなり、知らない世界に連れてこられたんだから、驚くのは当たり前だ。
兄上が、彼女に名前を聞いている。
「カナです」
彼女の名前はカナというらしい。
しばらくすると急に兄上がカナを抱えあげ、外へと連れて行った。まるでボクから遠ざけるように。
ボクは自室へと戻り、堅苦しい王子の服から普段着へと着替えた。
「あの子、聖女になってくれるのかな……」
その日、ライトコールは聖女の契約によって国の全てが結界に包まれた。
ーーー
あれから一週間。
ボクは、異変が起きていないか確かめるために、夜毎国中を見て回った。
昼間はソーイに捕まっているからね。
「よし、異常無し!」
結界の端から端まで調べる。かなりの大仕事だ。
城へと風の魔法で翔んで戻る途中、違和感を覚えた。
あの塔は使われていないはずなのに明かりがついている。それに、なんだろう。今までかいだことがないとてもいい匂いがする。
ボクは気になって、塔へと近づくと窓辺に女の子がいた。
むこうもこちらに気がついたのか、窓を開けてくれたので中へと飛び込んだ。
カナと同じ黒い髪と黒い瞳の女の子がとても、驚いた顔をしてボクをながめている。
匂いのもとは……、
「ここからかな?」
こちらをじっと見て、何者か探っているようだったのでボクは名前を名乗る。
「ボクはアリス。君はー?」
驚きながらも彼女は答えてくれた。
「あ、りさです」
「アッリサちゃん?」
「りさです!」
「リサちゃん?」
コクコクと頷く彼女を、ボクは上から下まで見た。
カナに似た服。容貌。もしかして、彼女も?
そう考えていると、彼女は仕返しといわんばかりにボクのことを上から下まで観察していた。
「アリスちゃんでいいんでしょうか?」
突然、懐かしい呼ばれ方をしたから、少し驚いたけどボクは表情に出さないように笑いながら言った。
「いいよー」
きっと、彼女はボクのことを女の子だと思ったんだろう。
ボクは男の子なんだけどね。
けれど、その呼び方が懐かしくてボクは彼女にそう呼ぶことを止めるようには言わなかった……。
「アリスちゃん」
コメント
1件
とても可愛らしい番外編ですね!猫耳王子アリストの視点で、本来のシリアスな物語とは違う空気感が新鮮でした。塔で出会ったリサちゃんに「アリスちゃん」と呼ばれて、その呼び方を訂正せずに受け入れるアリストの優しさにほっこり。月の色が変わった異変や、父王の聖女召喚の決断など本編に繋がる重い要素もちゃんとあって、これからどうなるのか気になります。リサちゃんはカナさんと同じ世界から来た子なのかな…続きが楽しみです🌷